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カルチャーつまみ食い

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本、映画、ドラマ、漫画、音楽など、つまみ食いしたカルチャーの記録です。
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#小説

渋谷の避暑地「喫茶店トップ」にて

昔、気づいたらドイツで寿司屋をやっていて、さらに気づいたときにはカナリヤ半島で酒を浴びていた人がいた。 (小笠原でガーベラを作ったり、広島で彼女を作ったり、ブログが人気となりファンを訪ねて日本中巡ったりもしてた) ときどき東京に帰ってきては、 「花、メシに行こう」と言って連れて行ってくれた。 経済状況が手に取るように分かるお店のセレクトで、あるときは浅草の大正モダンな鰻屋、あるときは浅草の油まみれだけど地元の人が絶えない鰻屋、あるときは浅草のおじちゃんたちが集う食堂、あると

だと思った。

2010年1月30日の朝。 私たちは新宿ピカデリーにいた。 その日は映画『ゴールデンスランバー』の公開日だった。 その当時の私たちといえば、1月末に学部4年生の卒計提出があり、プレゼンがあり、それが落ち着いた2月から修士の卒論がはじまるのだ。 2010年は私が卒論を書く年だった。 2010年1月30日は、午後から手伝いをしてくれる後輩たちが来て、そこからはスケジュールと思考と“何か見えないもの”に追われる日々がはじまる。 さながら『ゴールデンスランバー』の青柳雅春のように