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釣り場であった怖いかもしれないハナシ


ポケベルからの呼び出し


オレがまだ20代の頃、ムッとする湿気と暑さに耐えきれず、友人2名と近くのダムに夜釣りに。

ひとりはいわゆる「みえるひと」で、目的地のダムでも橋の袂に黒髪の女性が必ず立っているという話を聞かせてくれた。
オレはというと、

「ここは気味が悪い」
「なんだか後ろから見られている感じがする」

程度なもんで、見えるとはどんな感じなのか半信半疑ではあったものの、

「あそこに立っている」

と言う事ならば、その場所を凝視してみたい、と思いながら22時過ぎに釣り場に着いた。

釣り場は街中よりは幾分気温は低いもののベタベタと身体にまとわりつく湿気で、月明かりもなく空気が重く感じるこういう日は、決まって魚もロクに釣れず暇を持て余し始める。

「ねぇ、Yさん、この辺見えます?」

「今日は橋の袂にいました?」

「来る途中で見えました?」

なんて質問を矢継ぎ早にしまくって少し時間が経った時に、



「ピー!ピー!ピー!ピー!」



「ビクッ!!」

となるほど、ダムにけたたましく鳴り響いたのは、Yさんのポケベル。

「なんだよ、こんな時間に仕事出なくちゃいけないのかよ…。」

と、ブツブツ不満を言いながら確認するYさん。

少しの間があり、


「えっ……?!マジかよ…。」



「呼び出しなしでポケベルだけ鳴ったよ……。」




オレのウーロン茶

今から20年ほど前のある6月の夜に、友人とふたりで比較的大きめの沼に夜釣りに行った時の事。

月明かりもなく、どんよりとした梅雨の夜を絵に描いたような空模様の現地に着いたのは23時前。

10台以上は停められる駐車場にはうちらの車だけで、早速ステーションワゴンのリアゲートを開けて釣りの準備を開始。
友人は一瞬のうちに準備を終え、最早数秒でルアーを投げられる状態。オレはというと、テキトーに荷物を詰め込んだせいでモタモタとしており、慌て気味に準備を進めていた為か、さっき買ったペットボトルのウーロン茶に肘を当ててしまい、

「ボゴン」

と音をたてて荷室からアスファルトの地面に落としてしまった。

「あー、もう…。慌てるとロクな事起きないや…。」

「まぁ慌てなくていいよ。準備はゆっくりやっていいよ。終わってからゆっくり拾ったらいいよ。」

「申し訳ないッス…。すぐ終わらせますから。」

なんとかかんとか準備を終えて、ウーロン茶を拾おうと、車の下を覗くと…………、




「あれ?ウーロン茶ない…。」




タイヤの影なんかの見えない所にあるのか、と手を伸ばして探ってみたけれどウーロン茶には触れなかった。

「えー…、やっぱりウーロン茶ないよ…。」 

「音はしなかったけど、転がったんじゃないか」

「あー、なんだか時間かけてしまって申し訳ないです…。ごちゃごちゃと探すより車を動かして取ったほうが早そうだから動かしちゃいます…。」

釣り道具を友人に持ってもらい、車に乗り込みギアをバックに。
車1台分ほど後退しライトを点ける。


「えっ?…あれ?…えっ?…」



「ない…」

遠くに転がるほどの傾斜があるわけでもないし、念の為周りを探すけど、ない……。

ふたりで手持ちのライトも取り出して周囲を探すけれど、やはり見つからない。

友人と、

これ以上探さないほうがいいかもな…。

という話でまとまり水辺に向かうけど、とにかく濃い霧のせいか前に踏み出す一歩が重く、あれほど陰鬱で重苦しい空気は経験したことがなかった。

1時間ほど釣りをするが、夜中に人里から少し離れたその沼に他の釣り人なんか来るわけもなく、息が詰まるようなその空気に耐えることが出来ずに納竿。

相変わらずの濃い霧も相まって駐車場に戻る足取りも重く、

ただひたすら、

ウーロン茶が車の周りに置いてありませんように、

鍵の掛かった車の中に置いてありませんように、

と思うだけ…。


と、オチもなくヘタクソな文章に付き合ってくださいましてありがとうございます。
実際体験した事なのでオチや皆さんの希望する結末はなく、
「結局なんなの?」
なんですが、事実なんてそんなもんかもしれません。
他のハナシを思いだしたら、また書くかもです。


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