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家族 x 認知症のお話

こんにちは。株式会社Aikomiの加藤潤一です。

前回までは、認知症者の方の趣味や生い立ちに関連した写真や動画による、認知症の方への変化について紹介してきました。

ご家族様にインタビューさせていただく際には、アルバムにある写真をお借りすることがあります。
今回はそのような、ご家族の写真の例についてご紹介したいと思います。

インタビューさせて頂いたのは、ある認知症の女性の長女様でした。
その中でいつも通り趣味や生い立ちについてお尋ねしていたのですが、ご家族の話題になった時、このような事をお話しされました。

「うちの母は私の兄、長男が大好きで、昔から私よりも兄のことを大切にしてきていたんです。家族写真を見せるときには兄の写真中心だときっと喜ぶと思います。」

なるほど、その認知症の方の年代であれば長男は家の跡取りという意識も強いため、そういう事もありえます。
写真も比較的たくさん残っていたので、長女様のご提案通り長男様の写真に重心を置いて、ご家族の写真をお見せすることにしました。

しかし実際には予想と異なる反応でした。

その方は記憶も比較的しっかりしていて、確かに長男様の写真をお見せすると色々と語り始めます。
一方で長女様の写真をお見せした時も、長男様の時と同じように長女様との昔の想い出についてお話されました。
私のような第3者からすると記憶や想いには、兄弟間で違いがあるようには見受けられませんし、長男様の写真に特段喜ばれている反応ではありませんでした。

その認知症のお母様からすると、自分の子供たちに対しての語りや思いは、全く平等だったのです。

後日、長女様にそのことをお話すると、とても驚いた様子でした。

実は最初のインタビューの時には長女様はこのようなこともお話されていました。
「昔から兄は大事にされてきたのに、今は遠方にいるため私が殆ど面倒をみている。」

その言葉から察するに、おそらく長女様にとって、お兄様に対して何かしらご不満があったのかもしれません。また、お兄様だけが大事にされてきたという印象をお持ちで、自分は大事にされてこなかったのに、何故今自分だけが、という想いもあったのかもしません。

ここからは私の推測だけですが、お母様にとっては平等に長男様、長女様を大事にされてきたのだと思います。
ただ当時の時代背景や自分の義父母の手前、もしかすると長男様を特に大事にしている姿勢を示さざるを得なかった。だけれども認知症になったことで、その枷のようなものがはずれ、子供を平等に思うお母様の本当の気持ちを現せるようになり、今回写真をお見せすることで、その気持ちをうかがい知ることが出来たのかもしれません。

今回のような結果をご家族と共有することで、認知症の両親に対する考え方やこれまでの自分の人生を見つめなおすきっかけになりそうです。

今回はこの辺りで。また次回。






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