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クワガタムシの「ミキ」と「チー」

6歳の息子から「カブトムシを飼いたい」と言われた。ウチの実家に顔を出した時のことだ。
実家の母親と息子が2人で話した中で、そんな話題になったのだろう。

聞いた時に最初に頭に浮かんだのは、申し訳ないが「めんどくさい」だった。
育てるためのキットを用意しないといけないし、エサもそう。昆虫を育てる環境づくりが最近どんな風になっているのかも知らないから、情報も集めないといけない。だって、ムシとはいえ命だ。雑に扱うわけにもいかない。
そこら辺を考えると、素直に「分かった」とも言えなかった。「えー…」っと、ためらっていると隣で母親が言った。

「アンタも昔、飼ってたじゃない。そういうことに興味を持つ年ごろなのよ」

ふと、小学生の時の思い出が頭をよぎる。
たしかに、カブトムシだのクワガタムシだの追いかけて飼っていた記憶はある。そこに関して両親から反対されたこともなかった。

「毎日、エサをあげるだけよ?」

実際はそんな簡単にいかないだろ、とは思いながらも、息子のキラキラした瞳を無視するわけにもいかない。息子がちゃんと世話をするという条件付きで了承した。

「じゃあ、今から行こう」

…今から?どこへ?

そこから母親と3人で車に乗って行ったのは、ペットショップだった。
ここにカブトムシがいるというのだろうか?
店内を見て回る。

…いた。

たしかにそこにはカブトムシ、クワガタムシのコーナーがあった。成虫はもちろん、幼虫もいる。
残念ながらカブトムシの成虫はいなかったが、クワガタムシはいたため「ノコギリクワガタ」を飼うことにした。昆虫育成キット、毎日あげるエサも揃えた。

「あ、クワガタがひっくり返ってるよ。大丈夫かなぁ」

車の中で、クワガタの入った小さいプラスチックのケースを覗き込みながら嬉しそうな息子。ケースにはオスとメスの2匹が入っている。

「大丈夫だよ。ちなみに名前とか決めたの?」

「うーん、大きいほうが『ミキ』で小さいほうが『チー』かな」

「なんでその名前なの?」

「なんとなくかな。エサあげたら、食べてくれるかなぁ」

名前は適当っぽいが、持ったケースを下から見上げながら息子のウキウキした様子が伝わってくる。

車で家に帰りながら「なんか夏休みって感じだなぁ」と思った土曜日の昼だった。


(note更新237日目)

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