八月蝉くない夏
夏って、こんなに静かだったっけ。オリンピックは盛り上がっていたけれど、そういうことじゃなくて。何かが足りない。足りなくていい何かが。
物足りない夏。少し静かな夏。八月蝉くない夏。「八月蝉」って何だ。「8月の蝉」といったら、「うるさい」か。いや、それは「五月蠅い」だ。
答えから言ってしまうと、「八月蝉い」と書いて、「けたたましい」と読むそうだ。たしかに、夏の蝉は、うるさいよりもうるさい。こちらのほうが適切かもしれない。けたたましい。
「そういえば、今年はあまりセミの鳴き声を聞いていない気がするなぁ」と思ったのは、ぼくだけではないはずだ。「言われてみれば」と思った人もいるかもしれない。
セミの声を聞いてないのは、ぼく自身が暑すぎて外に出てないからか。セミも暑いから疲れてるのか。それにしても、毎年この時期になると、それこそ、セミの「けたたましい鳴き声」を聞いて、うんざりしていたような気がする。
とある小学6年生に教えてもらった。「セミは気温35℃以上になると鳴かなくなるんですよ。」
これが真実かどうかは、微妙なところで、種類によっては当てはまるそうだ。特に日本のセミは、暑すぎると鳴かないらしい。
セミって何のために鳴いているんだっけ。オスしか鳴かないと聞いたことがある。求愛行動なのだとか。となると、このまま温暖化とやらが進むとどうなるか、安易に想像できる。
「温暖化が進むと求愛行動ができなくなって、絶滅してしまうかもしれないんですよ。」とは、先の小学6年生の推察だ。
どうやら、気温の変化によって羽化の時期も変わってしまうようで、絶滅しないまでも、今後は「6月のセミ」もしくは「9月や10月のセミ」となるかもしれない。
地震や台風、気候変動、温暖化、どこまでが人為的な要因なのかは分からない。少なくとも、ぼくが子どもの頃に当たり前だったことがそうではなくなってきている。
昔、庭の木にぶらさがっていたミノムシを見ることはなくなったし、小さな蟻を見つけては蟻地獄の巣に投入するといった経験を現代の子はあまりしていないだろう。
ボール遊び禁止と書かれた公園で一体何をすればいいんだ。空き地で遊べば不法侵入などと言われる時代でもある。
けたたましく鳴いていた蝉の声にうんざりすることもなくなってくるのだろう。空にしか自然がなくなっていく日も近いかもしれない。来年以降、さらに「八月蝉くない夏」になっていきそうだ。
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