『ハミングバード』から『Hummingbird』へ
海外の文芸事情にはあまり詳しくないのですが、英語圏では紙の文芸誌よりオンラインのほうが圧倒的に勢いがあるそうです。アメリカやカナダは国土が広いし、他にも英語を母語とする国はたくさんあるので、刷って、配送して、というのは確かに非効率なのかもしれません。さまざまな文学賞も、オンライン文芸誌掲載作品から選ばれることが多いとのこと。
ちなみに、日本でも、私が住む福岡では、雑誌の入荷が東京より2~3日遅れます。子どもの頃、「週刊少年ジャンプ」が火曜日にしか手に入らなくて悔しかった思い出があります。現代なら、電子書籍で購入すれば、東京と格差なく読めますからね。
さて、今回、ヒューゴー賞やネビュラ賞候補作品を輩出してきたオンライン文芸誌「Strange Horizons」の別冊「samovar」に、拙作『ハミングバード(英題:Hummingbird)』が掲載されることとなりました。英訳は、これまでも私の作品を多く訳してくださっているToshiya Kameiさんです。
プロ・アマ問わず世界各国からものすごい数の投稿が行われ、そこから数作しか採用されない狭き門に『ハミングバード』が掲載されたことが嬉しくてなりません。自分が書いたものが英語になり、外国の方々に読まれるというのは、今でもとても不思議な感じです。
日本の文芸誌に作品が掲載されたら、芥川賞にノミネートされる可能性があるのと同様、『ハミングバード』がヒューゴー賞の候補になる可能性だってゼロではありません(希望的観測)。しばらくワクワクして過ごせるのはとても幸福だし、創作を続けていく励みにもなります。
『ハミングバード』は、惑星と口笛ブックスの「シングルカットシリーズ」として2019年に電子書籍で刊行された短編です。同レーベルは英訳や朗読など、作品を比較的自由に扱わせていただけるので、「書くこと」以外のチャレンジもできて、小説家としてとてもありがたい存在です。今回の件で、少しは恩返しできたかな、なんて思っています。
現時点で、同レーベルからは作品集『ハイキング』と、アンソロジー『ヒドゥン・オーサーズ』に寄稿した「引力」を発表していて、このうち何作かは英訳され、遠からず発表される予定です。また、日本未発表作も今後英訳されていくかもしれません。
これらの作品は、まだ紙媒体で刊行されてはいないので、今回、海外で話題になったことを受け、日本に逆輸入という形で本になったりしないかな、などと日々妄想しています(希望的観測)。
著者の手を離れ、大きく飛び立った『Hummingbird』をどうぞよろしくお願いします。
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