いつまでも追いかけていたい
「じゃあ、またね」
軽く唇を重ねてつかんだ手を放す。昨日会ったばかりなのに、まるで片方の自分を置いてきているような感情になる。もう出ないといけないのに離れるのを惜しむように何回もドアの向こう側で触れ合っていた。
まだ恋人とは言えない関係のふたり、お互いを探り合いながらLINEや会話をして深めていった。少しの言葉に落ち込んだり、喜んだりとわたしの心は騒がしくなるばかり。身体でつなぎとめていたものは秒速で心もつかんで離さなくなってしまった。
「別れようと思っている」
自分の気持ちを確認すると同時に恋人に告げていた。突然の別れに電話の向こうの彼は動揺していた。
「好きな人が出来たの」
遠距離ではあったけど、大事にしてもらっていた。落ち着いたら結婚しようとも約束していた。そんな彼をわたしはあっけなく4文字で終わらそうとしている。理性では彼を愛さないといけないのかもしれない。でも気持ちは言うことを聞いてくれない、どんなに罵倒されてもいい・・・違う人を好きになった自分が悪いのだから。
大事にしてくれる、どんなわがままも許してくれる、いつも愛してくれる。
これから先も変わらぬ気持ちで彼は一緒にすごしてくれるだろう。
でも、気づいてしまった
それだけでは幸せになれないのだと。追いかけられるよりも好きな人をどこまでも追いかけていきたい。恋をしているときが自分を好きでいられる瞬間と気づいてしまったのだから。
「付き合いますか」
彼の言葉に涙が止まらなかった。わたしのことを好きになってくれた、ただそれだけのことなのに。両想いになったことなんて一度もなかったから諦めていた。お互いに好きの奇跡がわたしのところにも来てくれるなんて人生で一番幸せな時だったかもしれない。
数年たった今でもわたしはあなたに恋をしている。ふと抱きしめたくなったり、気持ちを伝えたくなる衝動に駆られる。
きっとこれから先も恋をし続けるのだろう。
隣にいるあなたに。