藤井風「Close To You」から。 朝の風景
朝、並んで歯を磨く。
鏡に写った寝ぼけた顔のキミ、寝癖すごいよ。
呟いたら「そうかぁ?」とか言いながら、モシャモシャの髪を一生懸命なで付けてる。
大丈夫だよ、あとできちんとやってあげる。
背の高いキミとの身長差は21センチ、だったかな。
そう言うと「ようもようも。22センチじゃろ」
相変わらずよく開いてない目で、私を見るよね。
また身長伸びたの?
キミの眠たそうな目が、ほんとは綺麗な平行二重だってこと、知ってるよ。
ただ、視力は0.08だってこともね。
眼鏡かけてないときは、私の顔もぼ~っとしか見えてないんだよね。
だから、気まぐれでコンタクト入れたキミが、何か言いたそうに私の顔をまっすぐ見てくると、どぎまぎするよ。
きっと、誰かが鏡の中のこんな二人を見たら、キミの頭の上半分は切れてて、私はおデコから上しか映ってないよね。
こんな小さな鏡に無理して二人で並ぶことないんじゃない?って言ったら、「えー」って子供みたいに膨れっ面するから、かわいくて何度も言っちゃう。
あ、お湯が沸いたね。
キミの分のお白湯、冷ましておくね。
びっくりするくらい物持ちが良いキミが、小さい頃から大事にしてるスヌーピーのマグカップ。
好きなものは、ずっと変わらないんだね。
キミはそのカップを両方の手のひらで優しく包むようにして、お白湯をゆっくりゆっくり飲む。
いつも、綺麗な長い指に見とれてしまう。
その指は、鍵盤の上では別の生き物のように動き回るのも知ってるよ。
カップを大事そうに持った伏し目がちなキミの横顔、なんだかとても美しくて大切なものを見ている気がして、毎朝、言葉を失う。
いつもそばにいてくれて、ありがとう。
Fin
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