ディープシークショック:中華AIの技術の高さに全米が震えた!(2)
本当は『ツンデレ童話』の続編を書きたかったのですが、DeepSeekショックで議論が盛り上がっているので、三日連続でDeepSeekの解説をすることにしました。
DeepSeekでは、以下のような話題に関する質問には回答できません。
天安門事件、六四天安門、文化大革命、大躍進政策、包子帝(習近平の蔑称)、法輪功、西蔵独立(チベット独立)、達賴喇嘛(ダライ・ラマ)、新疆ウイグル自治区、台湾独立、香港民主化、天網(Skynet:中国の監視システム)、中国経済崩壊、外資撤退、失業率上昇、外貨規制、金融危機、武漢研究所など
日本の報道の自由度ランキングはG7最下位の70位ですが、中国は179位とさらに低く、日本が中国に勝っている数少ないランキングの一つが『報道の自由』です。そのため、上記の単語が検閲されるのは当然なのです。寧ろ、回答すべきでない質問に対して黙秘権を行使するのは、優秀なAIの証拠とも考えられます。
これにより、これまで手作業で削除されていた中国のインターネット検閲システム『グレート・ファイアウォール(GFW:防火長城)』の業務を、人手ではなくDeepSeekに任せることが可能になりました。その結果、検閲担当者の失業率が増加するという画期的なAIシステムとも言えるでしょう。
コメントをいただいた記事の続編を上にリンクしました。ぜひ併せてご覧ください。この記事をお読みいただくと、金融や証券分野のAI専門家が述べている内容がいかに的外れであるかが分かるはずです。OpenAIやMicrosoftのコメントを引用するだけで『DeepSeekは脅威ではない』と主張するアナリストは、リーマンショック前に『サブプライムローンはAAA(最高格付け)だ』と主張していた人々と大差ありません。
彼らは、現実を正しく認識していないか、AI技術の本質を理解していないか、あるいはAI関連株の上昇に賭けているため、AIバブルの崩壊を認めたくないだけです。
アメリカのビッグテックの主張が互いに矛盾していることは日常茶飯事なので、彼らの発言を基に判断するのは金融・証券アナリストとして軽率過ぎます。
仮にOpenAIやMicrosoftがDeepSeekによる『蒸留』を証明できたとしても、アメリカが中国に対して取れる措置は関税の引き上げ程度に限られます。その他にも、DeepSeekやAlibabaなどに対してサイバー攻撃を仕掛けることは理論上可能ですが、中国は同様に強力なサイバー報復能力を持っており、単純な攻撃が有効であるとは限りません。
また、もしDeepSeekが米国市場に上場している企業であれば、それなりの経済制裁を科すことも可能ですが、非上場企業であるため、アメリカ側が制裁を加える手段は限られています。現実的には、アメリカ国内での使用禁止程度の措置しか取れないのが現実です。
一方、OpenAIとMicrosoft自身が著作権侵害やプライバシー侵害に関する訴訟をアメリカ国内で受けているため、DeepSeekを攻撃することで、かつての蓮舫議員のように、『ブーメラン現象』を引き起こす可能性があります。
2025年1月にマイクロソフト傘下のLinkedInが、ユーザーの同意を得ずにAIモデルのトレーニングのために個人データを共有したとして、集団訴訟を提起されています。
もっとも、アメリカは過去に、大量破壊兵器が存在しないと分かっていながら武力行使に踏み切った例もあります。しかし、もし中国に対して同様の攻撃を仕掛けた場合、軍事的に勝利を収めることができるかは不透明です。
アメリカは圧倒的な軍事力を持つ国であるという印象がありますが、近年の戦争では明確な勝利を収めることができておらず、寧ろ、戦争をするたびに経済的負担が増大し、国内の財政状況が悪化しています。そのため、トランプ前大統領は戦争回避を重視する外交政策を採用しています。これはNHKの報道なので間違いありません。(๑‾᷆д‾᷇๑)キリッ✧
例えば、朝鮮戦争は現在も停戦状態であり、北朝鮮が存続する限りアメリカの『戦勝』とは言えません。また、ベトナム戦争では、1975年のサイゴン陥落によってアメリカ軍が撤退を余儀なくされ、実質的に敗北しました。
イラク戦争では、大量破壊兵器の存在が確認されなかったにもかかわらず、アメリカはサダム・フセインを『1982年のドゥジャイル村住民虐殺事件』を理由に裁判にかけ死刑としました。しかし、この戦争を『戦勝』と言えるかどうかは疑問です。むしろ、フセイン政権崩壊後の混乱がイラクの安定を損ない、現在に至るまでその影響が続いています。
さらに、ソマリア内戦やアフガニスタン戦争においてもアメリカは明確な勝利を収めることができず、ウクライナ戦争のような代理戦争においても、最終的に勝利を確保できるかどうかは不透明な状況です。
このような状況下で、アメリカが中国と正面戦争をして勝利できるかどうかは極めて疑わしいと言えます。
蒸留について
このNoteの基本用語のコーナーで『蒸留』と『抽出』の違いについて説明していると思いますが、これらは似た概念でありながら、目的や用途が大きく異なります。そのため、詳細については別の記事で技術解説を行います。
武智倫太郎