アジャイル開発の観点からのPMBOK第6版と第7版の違い
黒夢(クロム)@俳号さんのPMBOKの調達マネジメントと執筆・創作に関する分業の発想が興味深かったため、今回はPMBOKの一部について解説します。
PMBOKは第6版から第7版にかけて大幅に変更されており、プロジェクトを管理する側も管理される側も、多くの人が戸惑いを感じていることでしょう。特に日本では、アジャイル開発の概念と相容れない製造業中心の企業文化が根強く、第7版の導入により混乱している人も少なくないはずです。
このテーマを理解するためには、まずアジャイルの概念を知ることが重要です。そこで、アジャイルとは何かについて説明します。
アジャイルとは?
アジャイルとは、プロジェクトを細かく分け、柔軟に変更に対応しつつ進行する手法です。大きな目標を一度に達成しようとするのではなく、段階的に改善を加えながら進めるスタイルです。この手法により、必要に応じて方向を調整しやすくなり、最終的により良い成果を得ることができます。
アジャイル視点からのPMBOK第6版と第7版の違い
第6版では、計画を重視したアプローチが多く、ウォーター・フォール型の手法が適用され易い場面がありました。ウォーター・フォール型の手法では、事前に計画を立て、それに従って段階的に進行します。この方法は、大規模な設備投資が伴う鉄鋼業や造船業、旧来型の製造業のように、変化が少ないプロジェクトに適しています。しかし、急な変更や改善が求められる場合には対応が難しくなることがあります。
半導体産業では、大規模な設備投資と長期的な経営戦略が不可欠です。しかし、近年では、特にチップや回路の設計プロセスや、これに関連するソフトウェア開発の分野でアジャイルな取り組みが重視されています。製品の開発において、ハードウェア設計とソフトウェア開発が密接に連携するケースが増えており、両者が協調して柔軟な開発を進める必要があります。この変化に対応するための柔軟性が、日本の半導体産業にとって重要な課題となっています。
第7版では、プロジェクトの進め方がより柔軟になり、途中での変更や改善が前提とされています。これはアジャイルの考え方に近く、プロジェクトの進行中に状況に応じて計画を適応させ、最終的により高い価値を生み出すことを目指しています。第7版は特定の手法に依存せず、プロジェクトの特性に応じて最適なアプローチを選択できるフレームワークとして構築されています。
執筆活動の分業において第7版に準拠したPMが効果的な理由
第7版のアプローチを採用することで、作品のコンセプトやタイトルを決める編集者、クリエイティブディレクター、クライアントと、製作者や作家との間で、よりスムーズなコミュニケーションが可能となり、以下の効果が期待できます。
また、プロジェクトの規模や内容に応じて、プロデューサーやアートディレクター、プロジェクトマネージャーといった関係者が関わることもあります。これらの関係者を適切に調整し、チーム全体が円滑に進行するような管理が重要です。
途中での変更が容易になる
第7版では、アジャイル的なアプローチに基づき、プロジェクトの途中でも柔軟に変更が可能です。たとえば、作品のコンセプトやタイトルに変更があった場合でも、製作者はその都度対応し、より良い方向に軌道修正できます。これにより、クライアントの要望に沿った最適な進行が実現します。
フィードバックのサイクルが早い
アジャイルなアプローチでは、進捗を小刻みに確認し、頻繁にフィードバックを行います。これにより、クライアントやコンセプト決定者が成果を定期的に確認し、細かい調整を重ねながらプロジェクトを進行させることができます。これは、クライアントの期待に合った結果を迅速に生み出すための最短ルートとなります。
コラボレーションの向上
第7版では、製作者とクライアントが一体となってプロジェクトを進めることが重視されています。たとえば、作品のタイトルを決定する際、製作者からのクリエイティブな提案をクライアントが評価し、さらに改善していくことで、双方が納得する結果に至りやすくなります。
品質の向上
アジャイル的なアプローチを採用すると、作品の品質を段階的に高めることができます。クライアントのフィードバックを反映しつつ、製作者は細部を修正・改善し、最終的により高品質な成果物を提供できます。プロジェクト全体を通じて、常にクライアントの期待を上回る成果を目指すことが可能です。
生産性の向上
第7版に基づくアプローチでは、製作者が無駄な作業を減らし、効率的に作業を進めることができます。プロジェクトを小さなタスクに分割し、それぞれにフィードバックを受けながら進行するため、後から大幅な修正が必要になるリスクを軽減できます。これにより、生産性を維持しつつ、高いクオリティの成果物が期待できます。
このようにPMBOKガイド第7版のアジャイル的なアプローチを採用することで、クライアントと製作者の間で効果的な協力が促進され、プロジェクト全体を柔軟に管理できます。これにより、プロジェクトの途中でも変更や改善がしやすくなり、最終的に高い品質と効率的な作業が両立する結果が得られます。
テーマの解釈と創作のアプローチ
PMBOK第7版の調達マネジメントの観点から、以下の三つのテーマについてライティング業務を外部に発注する際のメリットについて解説します。
『ヒトがいなくて怖いとヒトがいて恐い』
このテーマは、心理的かつ二面性を持つ恐怖を探求するため、ホラーやスリラー、哲学的な物語を得意とする外部ライターに依頼するのが適しています。外部発注のメリットとして、以下の点が挙げられます。
専門知識の活用
人間の心理や恐怖のダイナミクスに精通したライターが、複雑で深い感情を引き出し、より一層恐怖感を高める物語を提供できます。
多様な視点
外部ライターが持つ異なる文化的背景や経験を反映させることで、テーマが多面的で深みのあるものになります。例えば、『ジョニーは戦場に行った』は、反戦文学としてアメリカだけでなく世界中で強力な影響力を持ち続けており、特にベトナム戦争期の反戦運動を後押ししました。『ヒトがいなくて怖いとヒトがいて恐い』の二面性は、この作品のテーマと関連性があり、興味深い視点を提供しています。
リソースの効率化
創作ディレクションに集中しつつ、細部の執筆作業をプロに任せることで、時間を有効に活用できます。
『博多の居酒屋で三時間飲んだら』
このテーマは、単に『博多の居酒屋で三時間飲んだら、飲み放題なのに一人1980円でお得だった』という話としても成り立ちます。しかし、それだけでは小説としては面白みに欠けます。博多ならではの『もつ鍋』、『水炊き』、『長浜市場直送のゴマサバ』、『博多ひと口餃子』などについて語る必要があります。ところが、これらを全部頼んで『一人1980円飲み放題コース』では、居酒屋の経営が成り立ちません。したがって、何らかの奇想天外な発想やキャラクターの成長、ユーモア、さらには哲学的な探求を織り込まなければ、物語としての魅力を引き出すことはできません。そこで、博多や哲学に詳しい外部ライターに依頼することには大きな利点があります。
文化的な信頼性
博多の地域文化に詳しいライターが、物語にリアルな雰囲気や会話のニュアンスを加え、舞台設定をより際立たせることができます。
『ALWAYS 三丁目の夕日』のようなスライス・オブ・ライフ的な要素や、哲学的なジャンルに精通したライターが、日常的な会話と深い思索をバランスよく描くことで、テーマにふさわしいストーリーを提供できます。しかし、残念ながら私は山崎貴監督の作品は、『STAND BY ME ドラえもん』『寄生獣シリーズ』『ゴジラ-1.0 GODZILLA MINUS ONE』しか観ていないため、私の作品には山崎貴的な要素が入り込む余地がないのです。
スケーラビリティ
この物語がシリーズや大規模なプロジェクトの一部である場合、複数のライティング・プロジェクトを同時に管理し、質を保ちながらアウトプットを増やすことが可能です。
『さいとうゆうき』さんの作品は掌編でありながら、村上春樹の短編作品や、東野圭吾の『秘密』、筒井康隆の『時をかける少女』、カフカの『変身』、映画『マルコヴィッチの穴』のように、日常から一転して非現実的な展開へと移行するプロットを持つ秀作でした。
『湯けむり温泉盗難事件』
『湯けむり』『みちのく』『京都』といえば、サスペンスやミステリーの定番として知られています。近年では、サスペンス・ドラマのタイトルからこの三つの鉄板キーワードが消えつつあること自体が、『消えゆく湯けむり、みちのくに眠る京都の秘密』というサスペンス・ミステリー小説になりそうなほどのインパクトを持っています。特に京都は、ミステリーやサスペンスの舞台として象徴的な存在です。
なぜ『みくまゆたん』が京都に行くことにテンションが上がらないのかは謎ですが、この謎もまたミステリーの一部です。さらに『』が付いている理由も謎とされています。これは、『なぜみくまゆたんさんが』とすべて平仮名で書いてしまうと、どこで区切るべきか分かり難いためです。特に『 #炭酸が好き 』のようなキャンペーン実施中は、『三熊油炭酸??』とイミフになってしまいます。これは、『さいとうゆうき』さんを『』で括るのも同じ理由です。
『湯けむり温泉盗難事件』は、温泉地でのミステリーや犯罪に焦点を当てたテーマです。このようなテーマを、ミステリーやコージー・ミステリー(市原悦子のような警察でも探偵でもない素人が、独自に推理を進める作品や、『京都迷宮案内』『古畑任三郎』『浅見光彦シリーズ』のような、緩やかな推理作品)に精通したライターに依頼することで、以下のメリットが得られます。
ジャンルの専門性
サスペンスやミステリーを得意とするライターは、緊張感を持たせ、手がかりを巧みに配置し、どんでん返しを演出することで、読者を一層引き込む構成を提供できます。
一方で、ボディービルディングも専門性の高いジャンルです。私が書くと、ポージングの話題にとどまらず、バスキュラリティ(血管の浮き具合)、プロテインの摂取法、さらにはアナボリックステロイドにまで話が飛んでしまい、何の話だか分からなくなってしまいます。アメリカでは、ボディービルに関する話題は日常会話の一部ですが、日本では少し筋肉をバルクアップさせただけで『マッチョ・キモイ』と気持ち悪がられてしまうこともあるのです。私が日本人の感覚で最も驚いたのは、草彅剛のような痩せ型が『ゴリラマッチョ』と呼ばれていたことです。
しかし、『蒔倉みのむし』さんは、マッチョの『キモ面白さ』を最大限に引き出し、『HK/変態仮面』に匹敵する笑いを生み出しています。
クリエイティブな柔軟性
外部に依頼することで、物語の大枠や他のプロジェクトとの統合に集中しつつ、ライターに細部の執筆を任せられます。
納期管理
複雑なプロット展開や結末が必要な場合でも、外部に発注することで、スケジュールに合わせた納品が可能です。緊張感やキャラクターの発展を損なわずに、計画通りに進行できます。
結論
いずれのテーマにおいても、外部の才能を活用することで、テーマに合った質の高いライティングを実現できます。また、外部ライターに執筆を任せることで、ディレクションや他の創作活動に集中でき、全体として時間を効率的に使うことが可能です。このようなPMの観点から見ると、下書き再生工場の企画は、デジタル社会で日々膨大なアイデアが生まれるものの、多くが『ボツネタ』として埋もれ、電子データとして無駄にされているという地球規模の知的ロス問題を解決するだけでなく、知的生産性の向上にも寄与できる画期的な取り組みと言えます。
武智倫太郎
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