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日産に学ぶ病理学:日産経営危機から得られる教訓(9):ライカの弱者戦略のコメント欄

 私のnoteの特徴の一つとして、記事の本文よりもコメント欄での説明が長くなることがよくあります。しかし、ほとんどの方はコメント欄をご覧にならないのではないかと思います。そこで今回は、実際にコメント欄でどのような返事をしているのかを、記事としてまとめてみました。

『ライカ』、パソコンで言うとApple的な存在と私の中では認識しています。『ライカ』は沼が深すぎる…。

K.さん

回答:ライカは、まさにカメラ界のApple的な商品と言えます。一方で、iPhone(iOS)は世界シェアの約3割を占めていた時期があり、特に日本市場では約6割という圧倒的なシェアを誇ります。Androidベースのスマートフォンメーカーが多数存在する中で、単独OSとして3割のシェアを維持していたiOSの存在感は驚異的でした。しかし、この30%という世界シェアはすでに過去の話で、2024年末には17%にまで低下しています。

 一方、第三勢力として注目されるHuaweiのHarmonyOSのシェアは現在4%程度に留まっていますが、これはHuawei一社のみで世界シェアの4%を獲得していることを意味します。2024年10月にリリースされたLinuxベースのHarmonyOS Nextは、車載OSや家電製品との連動(TRON的な概念)を前提に設計されており、今後、中国EV市場の拡大とともに急速に成長し、iOSを追い越す可能性も指摘されています。

◎ TRONプロジェクトは、坂村健が1984年に提唱し、日本の研究機関や企業が参加するオープンアーキテクチャ型のOSプロジェクトです。

 30年前のAppleは、デザイナーなど特定のニッチなユーザー層をターゲットにしており、『弱者戦略』を採用することで独自の地位を築くことができました。しかし、現在のAppleは、すでに市場での圧倒的なブランド力を持つ『強者』となっており、かつてのような弱者戦略はもはや通用しません。この状況では、今後HarmonyOSやAndroid、さらにはTeslaOSなどの競合プラットフォームにシェアを奪われる可能性が高まっています。10年後には、AppleがかつてのBlackBerryのような立場に追い込まれているとしても、不思議ではありません。

 これがライカであれば、レンズの価値が時間とともに上昇することもあり、資産としての側面を持つ可能性もあります。しかし、PCやスマホは数年で時代遅れとなり、最終的には電子廃棄物(E-Waste)となってしまいます。

 Appleの場合、一定のユーザー基盤が存在するため、仮に他のOSを搭載した端末の台数が増え、相対的にiOSの市場シェアが下がったとしても、Apple Music、iCloud、App Storeといったサービス収益には直ちに大きな影響はありません。しかし、iOSユーザーが他のOSに乗り換え、ユーザー数そのものが減少すれば、Appleは一気に坂を転げ落ちるように崩壊していくリスクを抱えています。

 Appleは長年ユーザーであったカンナ隊長にも、ついに見放されてしまったのです。

 Appleが今後取るべき戦略として考えられるのは、国際事業展開を縮小し、圧倒的な市場シェアを持つ日本市場に限定することです。この場合、日本独自の『ガラパゴス・スマホ』としての地位を確立する可能性があります。20年後、日本でしか手に入らないiPhoneを海外に持ち出すと、『えっ、なに、そのガラスマは!』と注目を浴びる、そんな未来も考えられるでしょう。

ペンタックス、今どきフィルム、しかもハーフサイズを出すとは…現像は暗室でやるしか無さそうですね。とはいえ最近のカメラは動画&スチル用途が主になっていますので、完全に趣味に振ったのは正しい判断に思いますね。

葛西さん

回答:以下のPENTAX・RICOHのカメラ(WG-1000)は、まさにカメラ界のG-SHOCKと言える印象で、思わず手に取りたくなる魅力を感じました。

 一方で、G-SHOCKを製造しているCASIOが展開する『画質を無視したカメラ(690万画素)』というコンセプトも非常に斬新です。これはWG-1000の1635万画素より約1000万画素少ない仕様ですが、画質以外の価値に重きを置いている点が興味深いです。写真に新しい価値を提案していることが際立っています。

 これは意外な盲点ですが、チェキやプリクラのように『デコって貼る楽しみ』といった付加価値が重要であり、必ずしも高画質な写真が求められるわけではありません。このようなカメラは、ユーザーが楽しみ方を工夫する余地を提供しており、カメラの新たな可能性を示していると言えます。

カメラ業界の生き残り戦略から学ぶ日産再生のヒント

 日産再生のヒントは、こうしたニッチな方向性にあるのではないでしょうか。すべての潜在顧客が加速感や性能、かっこいいデザインを求めているわけではありません。寧ろ、これからの高齢化社会を見据えた場合には、制限速度を絶対に超えない『遅くて安全な車』や『高齢者が一人でも安心して乗れる車』といった、新しい価値観に基づく開発が求められます。

 たとえば、以下のような機能やコンセプトが考えられます。

1.老人見守り自動車
・高齢者が道に迷った場合でも、自動で自宅の駐車場に戻れる機能。
・家を忘れてしまった場合も、安全に送り届けることが可能。
・『ルンバ』のようなシンプルで直感的な操作を目指し、家族にも安心感を提供。

2.見守りナビゲーション機能
・家族がスマホやタブレットを通じて、リアルタイムで高齢者の運転状況を確認。
・高齢者が迷っている場合、家族が遠隔で目的地を設定し、車の自動運転を誘導可能。
・緊急時には車が安全な場所に停車し、家族や救急車などに通知を送信する機能(この機能は2006年に開始されたレクサスのG-Linkサービスに搭載されていました。)

1.バーチャル同乗者機能
・高齢者が孤独を感じず、安心して運転できるよう、会話を楽しめるAI同乗者を搭載。
・『運転中に水分補給を忘れていませんか?』といった健康管理のアドバイスを提供。
・ホログラムや、ペッパーくんの上半身のような人型ロボット運転手で親しみやすさを演出。映画『Total Recall』のJohny Cabのドライバーでもよい。

 このような明確なコンセプトは、高齢者やその家族に安心感を与えるだけでなく、社会全体のニーズに応える新しい製品の開発に繋がります。さらに、日産がこれらの機能を実現することで、競合他社との差別化を図るとともに、これまで手薄だった市場を開拓する鍵となるでしょう。

高齢化社会対応が日産再生の重要な使命

 これからの自動車市場では、高齢者やその家族が安心して使える車が、ますます求められるようになるでしょう。安全性や使い易さを重視した『シンプルで安心感のある車づくり』は、日産にとって新たなブランド価値の確立と、社会的使命の両立を果たす道筋となるはずです。

ライカがついてる!でファーウェイのMateを買ったことがあり、懐かしくなりました。ライカの方向転換のお話も興味深いです。
日産との比較では、A(まだ戦える)かB(戦略行き詰まり)のどちらに該当するかで解釈が変わりますよね。
ライカ最盛期(1920~1950年代)

A: 日本メーカー台頭(1950~1970年代)

B: 暗黒時代(1970~1980年代)

独自路線で復活(1990年代以降)
メディアや日産再生を信じる人はA(まだいける)と考え、武智さんはB(出口が閉ざされている)と解釈しているように見えます。そのため前提条件の違いから話が噛み合わないのでしょうね。
ライカは独自路線で成功しましたが、BlackBerryのように独自性が致命的な足枷となった破滅エンドの事例もあります。
独自路線は、茨の道(適切なリサーチが重要、ハイリスク)ですよね。そのため、とりあえず既に一度は経験したスケールメリット路線で勝負したくなる現状維持バイアスもあるんでしょうね☺️
BlackBerryみたいな独自路線はハイブリッドカーが該当するのかもしれませんが。笑

どしたネコックスさん

回答:私もライカに釣られて、Huawei Mate 10 Pro(2017年発売:世界初のAIチップ搭載機の一つ)と20 Xを購入しました。20 Xは日本では販売されていないと思いますが、Mate 10 Proよりも二回り大きく、スマホと小型タブレットの中間くらいの大きさです。どちらのモデルも、一度の充電でバッテリーが24時間以上持ちますが、20 Xに至っては一度の充電で約48時間使用できます。

 最近購入したSONYのXperiaのフラッグシップモデルは、残念ながらバッテリーが24時間持たないこともあります。以前、FujitsuのArrowsなど日本産のスマホも使ったことがありますが、日本産スマホは、欧米や中国、ASEAN諸国では問題なく使用できるものの、インドやアフリカなどでは対応バンドの違いから使用できないことが多いです。その点、Huaweiのスマホが使えなかった国は今まで一つもありませんでした。

 さらに、HuaweiのMateシリーズはMil-Spec(軍用規格)に準拠しており、非常に耐久性が高いです。ジャングルやサハラ砂漠といった過酷な環境でも、全く問題なく動作しました。

 また、以前はBlackBerryのアラビア語版を使用していたこともあります。BlackBerryは操作性が良く、セキュリティも高かったため、現在市場で見ることができなくなったのは残念です。

◎ オバマが大統領時代に使っていた頃のBlackBerryも、今じゃ時代遅れの代物だ

日本では、ニコンがキャノン、ソニーとの差異化としてライカ的な行き方が適していそうに思いますが、現実には、あのくらいの企業規模になると、難しいのでしょうね。

楠瀬啓介さん

回答:私も日本のカメラメーカーで、最もライカ路線を取り易いのはニコンだと考えています。ニコンは『プロフェッショナルのための信頼性』と『光学技術の頂点』というライカ的要素を備えており、高級カメラ市場への転換が比較的スムーズに進む可能性があります。

 私は、アルジェリアなどの工科大学の教授たちと共著論文を執筆する機会が多く、彼らが来日した際に『どのカメラが良いか』と質問されることがあります。その際、私が勧めるのはCanonやSonyではなくNikonです。Nikonを勧める理由は以下の通りです。

1.光学性能の卓越性
 Nikonは長年にわたり、卓越した光学技術で世界中の研究者やプロフェッショナルに信頼されています。その高性能な『NIKKORレンズ』は、シャープネスやボケ味、美しい色再現で評価が高く、研究用途にも最適です。

2.精密かつ堅牢な設計
 Nikonのカメラは耐久性に優れた設計が施されており、過酷な環境でも安定して動作します。アルジェリアのような多様な気候(砂漠地帯から沿岸部まで)や、工科大学の実験室やフィールドワークでの使用にも十分対応可能です。長期間の使用に耐えるため、研究機関の予算を考慮してもコストパフォーマンスが高い選択と言えます。

3.研究活動での活用
 Nikonはカメラだけでなく、顕微鏡やイメージング装置など、光学機器全般で評価が高い企業です。そのため、研究活動において以下の点で特に魅力的です。
・高解像度でのサンプルや実験装置の記録。
・フィールドワークでの高精度な画像記録。
・顕微鏡写真との連携で詳細な観察記録を可能にするアクセサリー。

4.豊富な選択肢
 Nikonは、初心者向けのエントリーモデルから、プロフェッショナル向けの高性能モデルまで幅広い製品ラインナップを提供しています。

5.アフターサービスと信頼性
 Nikonはグローバルなサポート体制が整っており、アルジェリアでも必要に応じて修理やサポートを受けることが可能です。また、日本で購入した製品についても、他国でのサポートが受けられることが多いため、教授たちにとって安心して選べるブランドです。

 これらの理由から、私はアルジェリアの工科大学の教授たちにNikonのカメラを自信を持ってお勧めしています。Nikonの製品は、研究活動に求められる高い精度、耐久性、柔軟性を兼ね備えており、教授たちが日々の研究や教育活動で活用する上で最適な選択肢です。

 実際、アルジェリアやチュニジアの大学では、私の推奨によりNikonがスタンダードになっています。一方で、個人に対しては予算やニーズに応じて別のカメラを勧める場合もありますが、共同研究者たちは日本の共同研究予算でカメラを購入できるので、Nikonの人気が高い傾向にあります。

 ニコンはカメラや顕微鏡以外にも高度な研究機材を製造しています。特に、半導体やフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造に不可欠な露光装置は、同社の主力製品の一つです。これらの装置は高度な技術と精密さを要し、価格も非常に高額です。

 具体的には、半導体露光装置やFPD露光装置が挙げられます。これらの装置は、半導体チップやディスプレイパネルの製造工程で微細な回路パターンを形成するために使用されます。ニコンの露光装置は、高解像度と高精度を誇り、世界中の半導体メーカーやディスプレイメーカーで採用されています。

 また、ニコンは光学部品や計測・検査装置など、多岐にわたる研究機材を提供しています。これらの製品は、研究開発や製造プロセスの品質管理において重要な役割を果たしています。

武智倫太郎

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