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ツンデレ童話(12):ツンデレ長者
むかしむかし、あるところに、つんけんした態度がすっかり身についてしまった娘がおったそうな。その娘の名は『ツン』といい、誰かに親切にされても『別に嬉しくなんかないんだからね!』と、素直にお礼を言えんかったんじゃ。
ある日のこと、ツンは町で『ツンデレで長者になれる』という不思議な噂を耳にしたんじゃと。
『ふん、どうせくだらない話でしょ』と鼻で笑いつつも、どうにも気になって仕方がない。そこでツンは、『まあ、暇つぶしにでも行ってみるか』と旅に出ることにしたんじゃ。
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旅の途中、道端に謎めいたおばあさんが腰をおろしておったそうな。そのおばあさんはツンを見るなり、『おやおや、お嬢さん。そのツンツンした態度、少しデレを加えてみてはどうかね?』と声をかけてきたんじゃ。
『余計なお世話よ!』とツンは一蹴したんじゃが、おばあさんはニコニコと笑い、『まあまあ、試しにこのデレ飴を舐めてごらん』と一粒のデレ飴を差し出してきたんじゃと。
ツンは半信半疑でデレ飴を口に入れると、不思議なことに心がぽかぽかと温かくなり、通りかかった子犬に思わず『かわいいわね』と微笑みかけてしまったんじゃ。
自分の変化にびっくりするツンじゃったが、その笑顔を見た人々は彼女に次々と親切に接し始めたんじゃ。
メガネ屋の主人は『その笑顔にぴったりのメガネがあるよ』と言って、魔法の萌えメガネを贈ってくれたそうな。
さらに、道に迷っていたメガネ萌えのおじいさんを助けると、『ありがとう、助かったよ』と金貨までくれたんじゃと。
『べ、別に助けたかったわけじゃないんだから!』とツンは照れくさそうに言うたが、次第にデレの力のありがたさを感じるようになったんじゃ。
こうして、人々の好意や物々交換のおかげで、ついには大きな邸宅を手に入れるまでになったんじゃとさ。
ところが、ある夜、豪華な屋敷の中でひとり物思いにふけっておったんじゃ。
『な、何かが足りない気がする……』
確かに富は手に入れたものの、本来の自分を見失っているような気がしてならんかったんじゃ。
そのとき、ツンははたと気づいたんじゃと。
『ツンとデレ、どちらか一方だけではいけないんだ。大切なのは、そのふたつのバランスなんだ』と。
次の日から、ツンは自分らしさを大切にしながらも、素直な気持ちでツンデレするようになったんじゃ。
人々は彼女を『ツンデレ長者』と呼び、その絶妙なやりとりは町中の話題になったんじゃとさ。
ツンの物語は、笑いと教訓をもって語り継がれていくことになったんじゃ。
おしまい。
教訓:自分らしさを大切にしながらも、素直な気持ちを伝えることで、本当の幸せが見つかるかもしれんのじゃ。
この『ツンデレ長者』は、黒夢さんの『シンデレラ vs わらしべ長者 考え方の違い3選』を再読しておったら、ついつい書きたくなってしまったんじゃ。どうしたことか、このツンデレ童話はサブリナというおなごのツボに、すっかりはまってしもうたようでのう。続きも書かんといかんような気がするんじゃ。
しかもな、この昔話はツンが旅に出る前に、こんな未来が待ち受けていると想像できておったのじゃろうか? 実に不思議なことじゃ。この話は、未来が確定しているかどうかという、哲学の話にもつながるんじゃ。
たとえばの『ツンが旅に出たことで、運命の糸が織りなされたのか、それとも最初からその運命が決まっておったのか?』という問いがあるんじゃとさ。そういう話を考え始めると、わしらもつい深みにハマってしまうかもしれんのう。
けれどもな、この物語が教えてくれるのは、たとえ未来が決まっておるかどうかに関わらず、自分の選んだ道が大事じゃということなんじゃ。ツンも、ツンデレ長者として生きることで、本当の幸せを見つけたんじゃとさ。
そして人々は、ツンの物語を語り継ぎながら、自分の中のツンとデレのバランスを思い出して、心にぽかぽかとした温かさを感じることができたんじゃろう。
おしまい。
さらなる教訓:未来はどうなるか分からんものじゃが、今このときをどう生きるかが肝心なんじゃとさ。
武智倫太郎