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GPU依存型AI開発の限界と次世代アプローチ

 私のnoteに点在している孫正義やソフトバンクによる『日本経済滅亡計画』の全容を、オリガさんが一つの記事としてまとめてくださいました。

 この記事を読んでから本記事をお読みいただくと、孫正義がいかに日本経済を食い物にしているかが、より明確になるでしょう。さらには、彼が日本のセキュリティや安全保障を弱体化させている『敵性人物』であることも、よりはっきりと見えてくるはずです。

1.ソフトバンクのスーパーコンピュータ計画と消費電力の推定

 ソフトバンクは現在、GPUベースで25.7エクサフロップスの計算能力を持つAI計算基盤(生成AI用のスーパーコンピュータ)を構築中です。

 通常、これほどの規模を持つスーパーコンピュータでは消費電力が公表されるのが一般的ですが、私が調べた範囲では、どこにも具体的な消費電力の予測値が記載されていませんでした。

このデータセンターは、データの処理と電力の消費を全国に分散する、ソフトバンクの次世代社会インフラ構想の要となる『Core Brain(コアブレイン)』として構築し、将来的に敷地面積が国内最大規模の70万平方メートルで、受電容量が300メガワット超まで拡大する見込みです。

ソフトバンクの子会社の株式会社IDCフロンティア

 一方、ソフトバンクのホームページの記述からは、300MW程度を予定していると推測できます。これは、現在運用中の『富岳』の約30MWの10倍にあたる消費電力です。300MWは、中型の石炭火力発電所や小型の原子力発電所の出力に匹敵する規模といえます。

2.GPUベーススパコンの参考事例と計算

 GPUベースのスパコン消費電力の目安として、米国のスーパーコンピュータ『Frontier』の例を挙げます。『Frontier』は約1.1エクサフロップスの性能を持ち、消費電力は約21メガワットとされています。これを基にすると、1エクサフロップスあたり約19.1メガワットとなります。

 同様に計画中の『El Capitan』は約2エクサフロップスの性能で、消費電力は約40メガワットと見積もられています。これは1エクサフロップスあたり約20メガワットの消費電力に相当します。

 これらのデータから総合的に見ると、1エクサフロップスあたりの消費電力は概ね19〜20メガワット程度と推定できます。したがって、25.7エクサフロップスの計算能力を持つシステムの総消費電力は、約488メガワットから514メガワットになると推測されます。

 つまり、ソフトバンクが掲げる300MWという見込みは、NVIDIA製GPUの性能向上や消費電力削減にのみ期待した数字に留まっていると言わざるを得ません。

3.GPUを大量につなぐだけのアプローチへの疑問

 このように、既存のGPUを単純につなぎ合わせて性能を伸ばそうとするアプローチは、スーパーコンピュータをよく知る専門家から見れば、あたかも小学生がラズベリーパイで電子工作をしているかのように稚拙に映るでしょう。

4.孫正義やOpenAIのGPU依存型生成AIはすでに失敗

 私の見解では、孫正義やOpenAIによるGPU依存型生成AIの開発は、すでに失敗しています。その証拠として、2025年1月に登場した中国発のオープンソースAI『ディープシーク』によるNVIDIA株の大暴落が挙げられます。多くの人が『中国共産党の代弁者』かどうかという側面に注目していますが、ディープシークの本質的な脅威はそこではありません。

 ディープシークが画期的なのは、最新のGPUを用いず、限られた計算資源でChatGPTのようなGPU依存型の生成AIと同等以上の処理を実現している点にあります。つまり、大量の電力を消費して無駄な計算を行う従来型AIとは一線を画しているのです。

5.中国・インドにおけるソフトウェア開発力の背景

 中国のソフトウェア開発技術は分野によっては30年以上前から米国を凌駕している部分もあり、インドのソフトウェア開発能力も極めて高いことが知られています。バンガロールやハイデラバードなどのICT企業が欧米主要ICT企業の中核技術を長年にわたって開発してきた結果、アメリカのビッグテック企業のCEOや取締役の多くはインド人やインド系アメリカ人で占められています。

 プログラミングなどの才能は作曲、将棋、数学と同様、生まれ持った適性の影響が大きいとされます。例えば、プログラミング適性150(IQ150相当)の人材が1万人に1人の割合で存在すると仮定した場合、人口1億人の国には1万人の優秀なプログラマー候補がいることになります。一方、中国やインドのように10億人を超える人口を持つ国では、優秀なプログラマー候補が10万人に上る可能性があります。さらに米国は世界各国から人材を集めるため、その規模で5万人程度の適正者を確保できると考えられます。こうした人口比率から見ても、中国は世界最大の優秀なプログラマー人口を擁していると推測できます。

6.Alibaba『Qwen2.5』とソフトバンクの見通し

 ディープシークを超える高性能な生成AIとしては、中国のAlibabaが開発した『Qwen2.5』が挙げられます。性能がDeepSeekを凌駕しているという報道もあり、Alibabaの株価は直近1か月で35%上昇しています。

Alibaba Group Holding Ltd

 かつてAlibabaの筆頭株主だったソフトバンクグループ(SBG)は、資金繰りの悪化に伴い2022年にAlibaba株の大半を売却してしまいました。当時からAlibabaのAI技術の可能性を見抜くことができなかったことが、SBGには生成AI技術力を判断する能力がなかったことの証左と言えます。

7.GPU以外の有望技術とNVIDIA依存のリスク

 生成AIを効率的に処理するにはNVIDIAのGPUしか選択肢がないと誤解している人は少なくありません。しかし実際には、GoogleのTPU(Tensor Processing Unit)や、GroqのLPU(Language Processing Unit)といった有望技術も存在します。さらに、日本や中国の半導体業界も独自アプローチで急速に進化を続けています。これらを総合的に考慮すれば、NVIDIAに依存する経営戦略は大きなリスクを伴うといえます。

8.富岳NEXTが示す革新的指標

 ソフトバンクが300MWで25.7エクサフロップスを目指している一方、日本の『富岳NEXT』の開発目標は、AI実行性能50EFLOPS(SBG計画の約2倍)、ピーク性能1ZFLOPS(ゼタフロップス)を、現行『富岳』と同等の30~40MWで達成しようとしています。

 つまり、長年の実績を持つ富岳の開発チームは、ソフトバンクの想定よりも消費電力当たり40倍以上の高効率で、かつ低消費電力のスーパーコンピュータを、SBGの予算1500億円以下で実現可能と見込まれています。

 もし日本政府が、SBGの1500億円の『ポンコツAIコンピュータ』に助成金を投入するのではなく、その1/3にあたる500億円を理化学研究所や富士通、日立製作所、NECなどのスーパーコンピュータ開発に投じていたとすれば、日本はより早く世界一のAI大国になっていた可能性が極めて高いのです。

9.AIアルゴリズムの進化とOpenAI×SBGの展望

 生成AIのアルゴリズム自体は、GPUを使わない方向へと進化しつつあります。しかし、OpenAIやSBGは相次ぐ研究者や技術者の離職もあり、実質的に中身が空洞化してしまっている状況です。したがって、すでに古いモデルへ膨大な電力を投入し続けるという旧来のGPU依存技術に固執しており、性能の限界も見えています。そのため、OpenAI×SBGは今後勝負するまでもなく、既に敗北が決まっているのです。

 要するに、OpenAIのChatGPTは『ピコ太郎と同じ』 なのです。PPAPが偶然のヒットでYouTubeで1億回再生されたからといって、ピコ太郎が世界の主流になるわけではないのと同様に、ChatGPTも一時的なブームで終わる可能性が高いのです。

 それにもかかわらず、東京都はいまだにピコ太郎をサステナブル×ハイテクを推進するプロジェクト『SusHi Tech Tokyo』 のPRに起用し、PPAPを活用しています。しかし、OpenAIに社運を賭けるという行為は、『ピコ太郎が世界の主流になる』と本気で期待するのと同じ構図 だと言えるでしょう。

武智倫太郎

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