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タッグチームが生むブランド価値:プロレスに学ぶシナジーとマーケティング戦略(2)

ザ・ノート・ウォリアーズ(The Note Warriors)とは?
 noteの『四角いマット』では、森羅万象をプロレスに例えて解説する『清和の至宝・野呂一郎』と、森羅万象をアニメに例えて解説する『世界を股にかける賢人・武智倫太郎』がタッグを組み、2024年の師走から活動を開始しました。そのタッグチーム名が『ザ・ノート・ウォリアーズ(The Note Warriors)』です。

『The Note Warriors』という名前が覚えにくい場合は、省略して『No Worries:心配ないからね』と呼ぶこともできます。この遊び心ある略称は、チームのユニークな個性を象徴しています。

 ところで、武智倫太郎の記事の読者層には漫画やアニメファンが多く、意外にもプロレスファンが少ない傾向があります。そのため、ここではプロレスの基礎を知らない読者の皆様のため、野呂選手が説明していない『プロレス興行構文』について、行間を埋める形で解説を行います。

プロレスにおける名前の構造
 プロレスのマッチメーキングには、他のスポーツには見られない、以下のような独特の命名規則があります。

リングネーム:野呂一郎、武智倫太郎
キャッチフレーズ:清和の至宝、世界を股にかける賢人
タッグチームネーム:ザ・ノート・ウォリアーズ

 これらの要素は、選手やチームの個性を際立たせ、観客に強く印象づけるうえで重要な役割を果たします。特にタッグチームやタッグネームの概念がいかにプロレスに特有であるかは、以下の点から理解し易いでしょう。

他のスポーツや格闘技との比較
 ボクシング、フェンシング、柔道、剣道、グレーシー柔術などは、近代的な格闘スポーツであり、一対一の形式を基本としています。しかし、これらは実戦(ストリートファイトやリアルファイト)ではあり得ない制約条件を設けて競技化したものです。一方で、中国武術、空手の型、琉球空手や琉球古武術、シラット、剣術などの伝統武術には、複数の相手や武器使用を想定した動きが組み込まれており、近代格闘スポーツとは根本的に性質が異なります。

 それでもなお、『タッグを組む』という概念は、これらの武術や格闘技には見られません。たとえば、嵩山少林寺拳法には、十八羅漢拳のように十八人が連携するコンビネーションプレイがあるものの、そこにはプロレスのような『タッグネーム』という発想は存在しません。

球技との比較:テニスや卓球の場合
 テニスや卓球といった球技には『ダブルス』という概念があり、選手同士がペアを組んで試合に臨みます。これらの競技では『山田/鈴木組』といった表現や『コンビ』という言い方はあるものの、プロレスのようにタッグチームに専用の名前やキャッチフレーズ、リングネームを付ける文化はありません。

 仮にテニスのダブルスで、プロレスのようなタッグ名やキャッチフレーズを付けたらどうでしょうか。たとえば、『芝の閃光・山田太郎』と『赤土の戦士・鈴木二郎』というキャッチフレーズを持つ選手が、『グランドスラム・クラッシャーズ』というタッグ名で呼ばれたら、いかにも奇妙で不自然に感じられるでしょう。

 このように、プロレスは名前やチーム名を用いて物語性や個性を観客に伝えることに長けています。一方、他のスポーツや武術にはタッグネームのような要素が見られないため、タッグ名やキャッチフレーズという概念はプロレスに固有の文化的仕掛けと言えます。プロレス独自の文化は、観客を楽しませるための重要な要素の一つなのです。

覆面レスラーの文化と観客の礼儀

 もし武智倫太郎がマスクとマントを身にまとい覆面レスラーとして登場する場合、観客には『マスクの下の正体に気づかない』という礼儀があります。これがプロレス特有の暗黙のルールであり、覆面レスラーにとってマスクは命そのものです。観客もこのルールを尊重し、以下のような想像力を働かせることが求められます。

『千の文体を操る覆面詩人:ペン・マエストロの正体は一体誰なのか…?』

 このように、観客が覆面レスラーのマスクと、その背後にある物語を楽しむことが、プロレス鑑賞の基礎であり、これを『プロレスのお約束』と呼びます。

シナジー効果とは何か?

 たとえば、売上1兆円・純利益2000億円の企業2社が合併し、売上2兆円・純利益4000億円という数値を達成したとしても、それがシナジー効果によるものかどうかは慎重に判断しなければなりません。単に売上や利益を足し合わせただけの可能性もあり、シナジー効果が生じているとは限らないのです。以下に、シナジー効果の有無を判定するための視点を示します。

シナジー効果がある場合
『シナジー効果』とは、『1+1=3』のように、個々の成果を単純に合算した以上の相乗的な結果を指します。小学校の算数テストで『1+1=3』と書けば誤りとされますが、社会人になってから経営者向けの説明で『1+1=3がシナジー効果です』と言えば、ド文系の経営者などには、納得してもらえるから不思議です。合併によるシナジー効果が存在すると言えるケースには、次のようなものが挙げられます。

コスト削減
 合併によって重複する事業や管理部門を統合し、運営コストを削減することで利益率が向上する場合です。たとえば、本社機能を統合したり、拠点を整理したりしてコスト削減を実現し、合併後の利益率(純利益÷売上)が合併前よりも改善していれば、シナジー効果があると考えられます。

売上増加の相乗効果
 両社の経営資源を組み合わせることで、単独では獲得できなかった新たな売上を生み出している場合です。たとえば、一方の技術力と他方の販売網を組み合わせて市場シェアを拡大し、合併前の2社の売上合計を上回る売上が生じていれば、シナジー効果が認められます。

市場支配力の向上
 合併により競合他社に対する交渉力が強まり、取引条件が改善されたり、サプライチェーンの統合で原材料コストが削減されたりする場合です。これによる利益増加が確認できれば、市場支配力強化によるシナジー効果があると言えます。

技術やノウハウの統合
 両社の技術やノウハウを統合することで新商品やサービス開発が加速する場合です。たとえば、一方の研究開発力ともう一方のマーケティング力を組み合わせ、画期的な商品を投入できれば、技術統合によるシナジー効果があると判断できます。

シナジー効果がない場合

 合併後に売上が2兆円、純利益が4000億円になっていても、以下の場合はシナジー効果がない、または限定的だと考えられます。

単なる足し算の結果
 合併後の売上や利益が、合併前の2社の単純合算と同じであれば、シナジー効果は生じていません。

合併コストやリスクの増大
 合併に伴うシステム統合、人事調整、ブランド再編などの統合コストが利益を圧迫し、それに見合う収益増がない場合、シナジー効果はありません。また、文化の不一致などで長期的な運営効率が低下する場合も、シナジーは発揮されていないといえます。

利益率の変化がない
 合併前後で利益率が変わらない、あるいは低下している場合、シナジー効果がないと判断されます。

単なる規模の拡大
 合併によって規模は拡大したものの、新たな競争優位性や付加価値が生まれていない場合も、シナジー効果はないと見なせます。たとえば、市場シェアが拡大せず、競合に対する優位性が強化されていなければ、単なる規模拡大に留まります。

合併後にシナジー効果を判断する指標
 以下の指標を確認することで、合併後にシナジー効果があるかどうかを判断できます。

利益率の向上:合併後の利益率が合併前より高いか?
売上の増加ペース:合併前の単純合計を超える売上増があるか?
コスト削減の実現:管理・運営コスト削減によって利益が改善しているか?
新たな価値創造:合併前には困難だった新商品・新サービス・新市場の開拓に成功しているか?

 つまり、売上が2兆円、純利益が4000億円になったとしても、それが単なる足し算の結果に過ぎなければシナジー効果は認められません。真のシナジー効果を判断するには、利益率の向上、売上合計を超えた実績、新たな価値創造やコスト削減の実現が確認できるかどうかを見極める必要があります。これらが満たされていなければ、その合併は単なる規模拡大に留まり、シナジー効果は生み出されていない可能性があります。

タッグチーム結成によるシナジー効果
 プロレスにおけるタッグチーム結成は、単なる選手同士の連携にとどまらず、その個性を最大限に引き出し、新たな価値を創出する優れたマーケティング手法と言えます。この発想をビジネスやクリエイティブ活動に応用することで、コストをかけずに大きな効果を得ることができます。

 たとえば、note上の文筆活動において、各クリエイターが持つ独自の『ハンドルネーム』にキャッチフレーズを付けることで、その個性や強みを鮮明に打ち出せます。『清和の至宝・野呂一郎』『世界を股にかける賢人・武智倫太郎』のようなキャッチフレーズは、それ自体がブランドとして機能し、読者に強い印象を残します。

 こうしたクリエイター同士がタッグを組めば、プロレスのタッグチーム同様、個々の強みが掛け合わさって新たな読者層や市場を開拓できます。『ザ・ノート・ウォリアーズ』というタッグ名を掲げれば、双方の読者は自然と互いのコンテンツに引き寄せられ、シナジー効果が生まれます。しかも、この効果は広告費を一切かけずに実現可能です。

 具体的なシナジー効果としては、以下が挙げられます。

読者層の共有と拡大:各クリエイターの異なる読者層が相互に影響し合い、フォロワー数や閲覧数が増加します。

新たな価値の創出:異なる視点や専門性が組み合わさることで、個人では生み出せなかった新たなコンテンツが生まれます。

ブランド力の強化:タッグ名やキャッチフレーズを活用することで、クリエイター名が強固なブランドとして認識されます。

コラボによるイベントや商品化の可能性:タッグチームとして共同執筆した記事や書籍の発行、イベント開催など、新たな収益源も期待できます。

 たとえば、単独ではアニメやプロレスをテーマに執筆していたクリエイター同士がタッグを組むと、『アニメ的視点でプロレスを語る』『プロレス的視点でアニメを語る』といった新しい切り口で魅力的なコンテンツを発信できます。

 結論として、プロレスのタッグチームに倣い、自分の個性を強調しつつ他者と組むことは、ビジネスやクリエイティブ活動においても効果的な戦略です。特にnoteのようなプラットフォームでは、タッグ結成という簡単な方法だけで、1円も使わずに大きなシナジー効果を得ることができるのです。

つづく…

プロレスにおけるタッグが最高のエンターテインメントである理由

武智倫太郎

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