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そして誰もティッシュが使えなくなった

 名探偵の白痴小五郎は、謎めいた『 #ティッシュを否定する 』のハッシュタグを受け取っていた。タグの作成者は匿名だったが、タグをクリックすると『ティッシュをティッシュの使い方とせず、否定してみせよ』という挑発的な内容と、集合場所として東京の高級ホテルの一室が指定されていた。

 白痴小五郎が指定された部屋に到着すると、そこには既に8人のゲストが集まっていた。彼らも同様に不可解なタグを受け取っていた。その中には環境アクティビストの高田、児童労働撲滅に尽力する人権派弁護士の藤田、製紙会社の代表の佐藤、真実を追求するジャーナリストの田中、警察官の山口、ベストセラー作家の木村、有名俳優の中村、そして謎めいた女性の鈴木がいた。

 突如、部屋のテレビが点灯し、『ティッシュ否定ゲーム事務局ディーラーの本田すのうです。皆さんをここに集めたのは、ティッシュの謎を解くためです』と不気味な声が響き渡った。本田すのうは『ティッシュペーパーの乱用は、地球温暖化を加速させる一大事で、世界中の多くの人々が影響を受けています。地球温暖化の犯人はこの中にいます。誰が犯人か推理して見つけてください』とティッシュ否定ゲームのルールを説明した。

 白痴小五郎は冷静に状況を分析し、各人の背景に着目した。高田はティッシュの原料であるバージンパルプ製造が熱帯雨林消失の元凶だと考えている。藤田は製紙会社が所有する熱帯雨林のパルプ原料木材林業での児童の強制労働を深刻な人権問題として危惧している。田中はティッシュ否定ゲームの裏側を知っている可能性や、このゲームの取材に潜入している可能性がある。

 しかし、その夜、予期せぬ方向へと事態は進展した。部屋に仕掛けられたドラッグのオーバードーズにより、中村が命を落とした。彼のポケットからは、呪縛銀行のポケットティッシュが発見された。

 白痴小五郎は『この死は偶然ではない。この集まりは単なるオフ会ではなく、犯人を暴くための罠だ』とドヤ顔で結論付け、『残されたゲストの中に地球温暖化の犯人がいる』と断言した。しかし、他の6人は同時に『いや、だから、さっき本田すのうが、そう言っていたのを聞いてなかったんかい!』とツッコんだ。

 緊迫する中、次々と不審な出来事が発生した。藤田が忽然と姿を消し、鈴木が怪我をした。しかし、白痴小五郎の推理は止まらない。彼は緻密な観察と論理で、真実に迫っていった。

 最終的に白痴小五郎は事件の真相を明らかにし、犯人が木村であると断言した。実は木村の正体は本田すのうであり、このゲームを企画したのだった。そして、集まった他の人々は、彼女の計画を知る可能性がある人物たちであった。

 犯人の木村は逮捕され、事件は一見解決したかのように見えた。白痴小五郎は『真実は常に一つ。だが、その道は多くの謎に満ちている』と満足げに呟いた。

 ところが、白痴小五郎の推理はいつもの如く間違っており、木村は不起訴処分になった。しかし、この事件を契機として、ティッシュは #森林破壊 #地球温暖化 の元凶だという理由で、ティッシュ禁止運動が世界中で展開された。欧州議会がティッシュ禁止法を採択すると、米国はティッシュ規制法を採択し、中国も同様にティッシュの製造並び使用を禁止する法律を制定した。

 日本国内の製紙会社を保護するために大量の補助金や助成金を使っていた日本政府も、国際世論には逆らえなかった。そこで、既に国連加盟国の九割が何らかのティッシュ規制法を制定しているにもかかわらず、先進諸国のティッシュ規制法に準拠する形で検討を開始した。その半年後にCOPで、『日本主導で国際的なティッシュ規制を実現する』と意味不明な宣言をし、世界中の笑いものになりながらも、国際ティッシュ禁止条約に署名することになった。

 そして誰もティッシュが使えなくなった。

-完-

【自己解説】
 この作品では『ティッシュをティッシュの使い方とせず、否定してみせよ』という条件が満たせていないと考える読者は、まだ武智ワールドを理解できていません。この作品では完全にこの条件が満たされています。

 このことを理解するためには、まず本来のティッシュの使い方を厳密に定義する必要があります。ティッシュの使い方は人それぞれですが、鼻をかむ、化粧を直す、汚れを拭く、傷の応急処置、一時的な詰め物、鼻血の処置、香り付けなどがあります。さらに、以下のようなプロセスを用いることで、ティッシュペーパーからSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)を作ることも可能です。

ティッシュからSAFを作る方法

1.原料の収集と前処理
 ティッシュペーパーを収集し、異物や不純物を取り除きます。ティッシュペーパーは細かく裁断され、前処理されます。この前処理には、セルロース繊維をより効率的に分解するための化学的、物理的、または生物学的な手法が使用されます。

2.加水分解
 セルロースを糖に分解する加水分解プロセスを行います。これは酸または酵素を使用して行われ、セルロースがグルコースなどの単糖に分解されます。

3.発酵
 得られた糖を酵母や細菌などの微生物を使用して発酵させ、エタノールなどのアルコール類を生成します。このプロセスでは、適切な発酵条件を維持し、効率的なアルコール生成を行います。

4.精製
 発酵により生成されたアルコールを蒸留や精製して、純度の高いエタノールを得ます。このエタノールはSAFの前駆物質として使用されます。

5.水素化
 エタノールを水素化して炭化水素に変換します。このプロセスは、触媒と高圧下で行われ、エタノールから炭化水素への転換を行います。炭化水素はジェット燃料の成分となります。

6.精製と混合
 生成された炭化水素をさらに精製し、航空燃料の規格に合致するように調整します。最終的には、既存のジェット燃料と混合して、SAFとして使用できます。

その他のアプローチ
 ティッシュペーパーからSAFを作るためには、さまざまなアプローチがあります。以下にFT合成(フィッシャー・トロプシュ合成)や水蒸気改質など、その他のアプローチについて説明します。

FT合成(フィッシャー・トロプシュ合成)

1.ガス化
 ティッシュペーパーを高温でガス化し、合成ガス(主に一酸化炭素と水素)を生成します。

2.触媒反応
 合成ガスを触媒(例えば、鉄またはコバルト触媒)を用いて反応させ、炭化水素を生成します。

3.生成物の精製
 生成された炭化水素を精製し、SAFとして使用できるように調整します。

水蒸気改質

1.ガス化
 ティッシュペーパーを水蒸気と共に高温でガス化し、水素と一酸化炭素を含む合成ガスを生成します。

2.水蒸気改質反応
 合成ガスをさらに水蒸気と反応させて水素を増加させます(ウォーターガスシフト反応)。

3.水素化処理
 生成された水素を利用して、バイオオイルなどの前駆物質を水素化し、炭化水素を生成します。

4.精製
 生成された炭化水素を精製し、SAFとして使用できるように調整します。

 ティッシュはSAFにする以外にも、ヤギや羊、ラクダなどの餌として使うことも可能です。つまり、ティッシュの使い方を物理的に否定することは非常に困難です。しかし、本作品ではティッシュの物理的な使い方には一切言及せず、論理的または概念としてのティッシュを否定することで、命題を成立させているのです。

つづく…

武智倫太郎

#自文紹介 #自己紹介 #再生可能エネルギー #SDGs

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