ディープシークショック:中華AIの技術の高さに全米が震えた!(3)
OpenAIのChatGPTは、生成AI分野で広く知られていますが、米国内外には同等またはそれ以上の高度なAIモデルが多数存在し、競争が激化しています。以下に、ChatGPTの主な競合となる最新の生成AIモデルを紹介します。
主要な競合AIモデル
Google Gemini
概要:Googleが開発したAIチャットボットで、画像認識や自然言語処理に優れています。
Anthropic Claude
概要:Anthropicが開発したAIモデルで、安全性を重視した設計が特徴です。
Meta AI
概要:Meta(旧Facebook)が開発したAIアシスタントで、オープンソースの大規模言語モデル(LLM)『Llama』を基盤としています。
Microsoft MAI-1
概要:Microsoftが開発中のAIモデルで、OpenAIとの提携を継続しつつ、独自のAI開発も進めています。
Amazon Olympus
概要:Amazonが開発中の大規模言語モデルで、AIインフラストラクチャへの投資を強化しています。
OpenAIが競争に勝てる保証がない理由
OpenAIは、これらの競合モデルの台頭により、AI市場で優位性を維持できるとは限りません。さらに、OpenAIの競争相手は米国内だけでなく、中国にも少なくとも8社以上の強力なライバルが存在しています。
OpenAIの競争力が揺らいでいる主な理由は以下のとおりです。
技術革新のスピード
Google、Meta、Microsoftなどの大手企業は、それぞれ独自の技術開発を進めており、OpenAIが常に最先端を維持できるとは限りません。特に、中国のAI企業も急成長しており、競争の激化が予想されます。
市場競争の激化
大手テクノロジー企業が次々と生成AI市場に参入し、多くの企業が自社製品へのAI統合を進めています。その結果、OpenAIの市場シェアが圧迫される可能性があります。
資金調達と収益化の課題
OpenAIは巨額の資金を調達していますが、安定した収益モデルを確立できるかは不透明です。一方、GoogleやAmazonなどの企業は、自社のクラウドサービスを活用することでAIビジネスの収益化を進めています。
オープンソースの台頭
Metaの『Llama』などのオープンソースAIモデルが普及し、開発者や企業が自由に利用できる選択肢が増えています。これにより、クローズドなChatGPTの競争力が相対的に低下する可能性があります。
地政学的要因と規制
OpenAIは米国政府の規制や政策の影響を強く受けます。一方で、中国のAI企業は政府の支援を受けながら急速に発展しており、国際市場での競争がさらに激しくなると考えられます。
つまり、OpenAIが競合に勝てる保証はなく、むしろ激化するAI競争の中で優位性を維持すること自体が大きな課題となっています。
アメリカの技術力を凌駕する可能性が高まる中国のAI最前線
中国には大規模言語モデル(LLM)だけでなく、画像処理や創薬に特化したAIなど、世界最先端のAI技術が数多く存在します。多くの人がDeepSeekを十分に理解していない中で、中国にはDeepSeekを上回るLLMが多数あることを知っていただくため、本稿では、中国で完全に独自のLLMを開発しているDeepSeek、Alibaba、Baidu、Tencent、ByteDance、Moonshot AI、MiniMax、Zhipu AIの8社の概要を紹介します。
DeepSeek-V3の公開レポートには、エヌビディアだけでなくArmにも影響を与えうる内容が含まれており、その詳細については別の記事で詳しく解説する予定です。
本記事で特に強調したいのは、SBGとOpenAIの合弁事業には慎重な検討が必要であり、日本の公的資金の投入や、信用保証は大きなリスクを伴う可能性があるという点です。早急にこのリスクを認識し、適切な判断が求められます。
孫正義とSBGによる対米インフラ投資に関連する日本政府の信用保証の可能性
孫正義やSBG(ソフトバンクグループ)がアメリカのインフラ投資を行う際、日本の独立行政法人や政府系金融機関の信用保証を活用する可能性のあるオプションとして、以下のものが考えられます。
1.日本政策投資銀行(DBJ)の『特定投資業務』
DBJは企業の成長戦略や海外展開を支援するため、『特定投資業務』を通じて資金提供を行っています。例えば、2016年にソフトバンクグループが英国のARM社を買収する際、DBJは劣後債の取得を通じて支援を行いました。
2.国際協力銀行(JBIC)の海外投資信用制度
JBICは日本企業の海外投資やインフラ事業を支援するため、融資や保証を提供しています。アメリカでのインフラ投資においても、JBICの海外投資信用制度を活用することで、資金調達の円滑化やリスクヘッジが可能となります。
3.日本貿易保険(NEXI)の投資保険
NEXIは海外投資に伴う政治リスクや信用リスクをカバーする投資保険を提供しています。アメリカでのインフラ投資において、予期せぬリスクに備えるため、NEXIの投資保険を活用することが考えられます。
4.日本政策金融公庫(JFC)の海外展開支援
JFCは中小企業を中心に海外展開を支援する融資制度を持っています。SBGの規模からすると、JFCの制度が直接適用される可能性は低いかもしれませんが、関連する中小企業との連携やサプライチェーンの構築において、JFCの支援を活用する余地はあります。
SBGが日本政府の信用保証を活用するリスク
SBGや日産のように、日本の銀行や国際金融機関からの融資を受けるのが困難なリスクの高い企業は、日本政府の信用保証を活用することで資金調達を行っています。
しかし、これが意味するところは『SBGが破綻した場合、その損失は最終的に日本の税金で補填される』ということです。
SBGのアメリカ・インフラ投資計画と日本政府の関与
これらのオプションを組み合わせることで、SBGはアメリカのインフラ投資における資金調達やリスク管理を強化できます。
しかし、問題なのは『ビジョンファンドの失敗により、中東のSWF(政府系ファンド)やその他の投資家が、孫正義やSBGに対して投融資する可能性が極めて低い状況にある』ということです。それにもかかわらず、孫正義は日本政府の保証を活用して資金調達する可能性が高いと考えられます。
つまり、日本政府は結果的に『日本経済を破壊しかねない与信をSBGに提供する』ことにつながるのです。
この仕組みが実行され易い理由は、日本政府によるSBGへの与信提供が『日本の会計上では支出として計上されず、むしろSBGからの与信提供手数料を得ることで一時的に収益を上げたように見える』仕組みになっているためです。
日本政府が最終的にSBGの損失を肩代わりする可能性
しかし、実際にはSBGが数十兆円規模の損失を出した時点で、日本政府が与信提供の責任を負い、SBGの代わりに借金を肩代わりすることになるのです。
そもそも、この事業の最大の問題点は『本当に利益が出る可能性の高い事業であれば、アメリカ政府自身がインフラ投資や債務保証をすべきである』という点です。
アメリカ政府が債務保証をしないということは、それだけ『スターゲート計画』がリスキーであり、保証する価値がないと判断されている証拠なのです。
独自の中国製生成AIを開発している企業
1.DeepSeek:DeepSeek-V3
概要:独自開発の大規模言語モデル(LLM)を提供しており、オープンソース化も進めています。DeepSeek社は2024年12月に、最新の大規模言語モデル『DeepSeek-V3』を発表しました。このモデルは6,710億のパラメータを持ち、Mixture-of-Experts(MoE)アーキテクチャを採用しています。
2.Alibaba:『Qwen2.5Max』
概要:アリババクラウドは、Mixture-of-Experts(MoE)アーキテクチャを採用した最新の人工知能モデル『Qwen2.5-Max』を発表しました。20兆以上のトークンで事前学習されたモデルであり、DeepSeek-V3を超える性能を持つと主張しています。
3.Baidu(百度):『ErnieBot』
概要:Baiduは独自開発の自然言語処理AI『ErnieBot』を展開しています。これは、2019年から開発が進められている大規模言語モデル『ERNIE』を基盤としており、最新バージョン『ERNIE 4.0』は2023年10月17日に発表されました。
4.Tencent:『Hunyuan』
概要:Tencentは独自のAIモデル『Hunyuan(混元)』を開発・展開しており、自然言語処理や画像生成、動画生成、3Dモデル生成など多岐にわたる分野で応用されています。
5.ByteDance:『Doubao』
概要:ByteDanceは独自開発のAIチャットボット『Doubao(豆包)』を展開しており、ChatGPTスタイルの会話型AIとして2024年8月にリリースされました。
6.MoonshotAI:『Kimi』
概要:Moonshot AIは、中国のAIスタートアップ企業で2023年3月に設立されました。会話型AIアシスタント『Kimi』を開発・提供しており、最新バージョン『Kimik 1.5』は2025年1月20日にリリースされています。
7.MiniMax:『Lightning Attention』技術を採用したAIモデル
概要:MiniMax社は最新のAIモデル『MiniMax-01』シリーズを発表し、オープンソースとして公開しました。言語モデル『MiniMax-Text-01』と視覚・言語のマルチモーダルモデル『MiniMax-VL-01』が含まれています。
8.ZhipuAI:『Ying』
概要:Zhipu AI(智谱AI)は2019年に設立された、清華大学の計算機科学系から派生した中国の人工知能企業です。テキストから動画を生成するAIモデル『Ying(清影)』を開発・提供しています。
以上が、独自の大規模言語モデルや生成AIの開発を行う中国企業8社の概要です。これらの動向は、中国が世界のAI市場でリードする可能性を示すと同時に、国際競争がますます激化していることを明確に示唆しています。
また、本文冒頭で述べたように、SBGとOpenAIの合弁事業に日本国の公的資金やSBGへの与信を提供することは大きなリスクを伴う可能性があるため、早急に十分な検討が必要です。
武智倫太郎