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日本のデジタル赤字を加速させる政商・孫正義とソフトバンク
スターゲート計画とは
スターゲート計画(Stargate Project)は、OpenAI、ソフトバンクグループ、オラクル、MGXが共同で立ち上げた人工知能(AI)インフラ構築プロジェクトです。今後4年間で総額5,000億ドル(約77兆円)を投資し、米国における新たなAIインフラの構築を目指しています。
この計画の初期出資者には、ソフトバンクグループ、OpenAI、オラクル、MGXが名を連ねています。ソフトバンクグループが財務管理を担当し、OpenAIが運営を担う体制となっており、ソフトバンクグループの孫正義が会長に就任しています。
スターゲート計画の主な目的は、米国のAI分野におけるリーダーシップを確立し、数十万人の雇用を創出するとともに、世界経済に大きな利益をもたらすことです。具体的には、テキサス州を皮切りに全米各地で大規模なデータセンターの建設を進め、AI研究者や企業が自由に利用できる環境を整備することが計画されています。
計画への批判
しかし、この計画に対しては複数の著名な経営者から批判が寄せられています。イーロン・マスクは、スターゲート計画の参加企業が実際には十分な資金を持っていないと指摘し、『実際のところ彼らには資金がない』と述べています。マイクロソフトのサティア・ナデラCEOも、計画の資金調達の不透明さを暗に批判し、『私が知っているのは、私が800億ドルを確保していることだけだ』と述べています。
さらに、AIスタートアップのアンソロピックCEOであるダリオ・アモデイは、スターゲート事業を『カオスな状態だ』と評し、資金調達の不透明さや政府の関与について疑問を呈しています。これらの批判は、スターゲート計画の資金調達の透明性や実現可能性に対する懸念から生じています。
スターゲート計画は、AI技術の発展と経済成長を促進する大規模な取り組みである一方、その資金調達の透明性や実現可能性については、引き続き注視が必要です。
デジタル赤字とは
日本の『デジタル赤字』とは、デジタル関連サービスの貿易収支において支出が収入を上回る状態を指します。具体的には、ソフトウェア、クラウドサービス、著作権使用料、専門・経営コンサルティングサービスなどの分野で、海外企業への支払いが増加していることが主な要因です。
2023年のデジタル貿易収支
2023年の日本のデジタル貿易における受取額は約3.6兆円、支払額は約8.9兆円で、差し引き約5.3兆円の赤字となっています。
赤字拡大の背景
デジタル赤字の拡大には、国内ICT産業の競争力低下が影響しています。特にクラウド市場においては、2011年度には上位5社のうち3社が国内企業でしたが、2020年度には1社に減少し、市場シェアも大きく低下しています。
サービス収支全体への影響
デジタル関連項目の赤字拡大が、サービス収支全体の赤字要因となっています。特に、専門・経営コンサルティングサービス、ウェブサイト広告スペースの売買などの赤字拡大が大きく、著作権等使用料や通信・コンピュータ・情報サービスの赤字も増加傾向にあります。
デジタル赤字の主な内訳
1.コンピュータ・通信・情報サービス
ソフトウェアの委託開発費、クラウドサービスの利用料、ゲームのサブスクリプション、ウェブ会議システムの利用料などにおいて、海外企業への支払いが受取額を上回り、赤字が拡大しています。特に、国内企業のクラウド依存度が高まり、外資系企業への支払いが増加傾向にあります。
2.著作権等使用料
動画や音楽などのコンテンツ配信に関連するライセンス料の支払いにおいて、海外のコンテンツ利用が増加し、支払い額が受取額を大幅に上回ることで赤字が拡大しています。特に、ストリーミングサービスやオンライン学習コンテンツの需要拡大が影響しています。
3.専門・経営コンサルティングサービス
インターネット広告スペースの利用料など、ウェブ広告の利用拡大に伴い、海外企業への支払いが増加し、赤字が拡大しています。国内企業のデジタルマーケティング戦略の多くが海外プラットフォームに依存していることが要因の一つです。
今後の見通しと対策
デジタル赤字の拡大は、国内ICT産業の競争力低下に起因する深刻な課題であり、早急な対策が必要です。具体的には、以下の対策が求められます。
国内ICT産業の競争力強化
・省電力化に資する生成AIの開発
・特定用途向けの小規模基盤モデルの提供
・国内クラウドサービスの強化と技術投資
経済政策の見直し
・円安の進行によるさらなる赤字拡大を防ぐための為替政策の適正化
・デジタルサービスの輸出促進による収益増加策の検討
デジタル赤字は今後も年間1兆円単位で増加し続けると予測されています。さらに、前述のデジタル赤字に加え、AppleのiPhone、iPad、Apple Watch、GoogleのPixelシリーズのスマートフォン、AmazonのFireタブレットシリーズといった完成品に加えて、CPU、GPU、AIチップ、SSD、メモリなどの半導体輸入額を考慮すると、既に年間10兆円規模の赤字が確定的となっています。このままの状況が続けば、日本の経常収支全体に深刻な影響を与えることが懸念されます。そのため、国内ICT産業の再構築とデジタル自立に向けた包括的な戦略が求められています。
スターゲート計画と日本のトリプル赤字のリスク
スターゲート計画による年間20兆円規模の投資が継続された場合、日本の企業や個人による米国のAIサービスへの支払い額が、毎年数兆円単位で膨らみ続け、さらなるデジタル赤字の拡大が予測されます。この状況が続けば、日本が貿易黒字国に戻ることは極めて困難となり、財政赤字と貿易赤字の悪化による経済破綻のリスクが一層高まるでしょう。したがって、ソフトバンクを通じたAIインフラ支援の是非について、国民全体で慎重な議論が必要です。
現在、日本は『財政赤字』と『貿易赤字』を抱えていますが、海外投資などによる所得収支の黒字によって、経常収支全体は黒字を維持しています。しかし、スターゲート計画の影響により、デジタルサービスの輸入増加が加速し、企業収益の海外流出が続くと、経常収支の黒字基盤が崩れ、経常赤字へ転落する可能性があります。
トリプル赤字の致命的な影響
1.通貨安の加速と資本流出
・経常赤字になると、海外からの信頼が低下し、円の価値が急落する可能性があります。これにより、資本の国外流出が進み、国内投資環境が悪化し、金融不安が広がる恐れがあります。
・円安が進行すれば、エネルギーや食料などの輸入コストがさらに増加し、インフレの加速につながります。
2.金利上昇と国債の暴落
・財政赤字が継続し、経常赤字も拡大すれば、日本国債の信頼性が低下し、金利が急騰する恐れがあります。
・金利上昇によって政府の借入コストが増加し、財政支出の大部分が利払いに充てられ、社会保障や公共投資の削減を迫られます。
3.経済成長の停滞と国内産業の衰退
・貿易赤字が拡大し続けることで、日本の国内産業は海外のデジタルサービスに依存し、競争力を失います。
・AIなどの先端技術分野での開発・運用能力を喪失し、国内企業の成長機会が削がれ、GDP成長率の鈍化が深刻化します。
4.政府の政策選択肢の制限
・財政赤字と経常赤字が同時に進行すると、政府の政策対応が困難になり、増税や社会保障費削減といった厳しい措置が避けられなくなります。
・これにより、国内消費が冷え込み、景気悪化の悪循環が発生するリスクがあります。
日本がトリプル赤字に陥る可能性
現在、日本の経常収支は黒字を維持していますが、以下の要因により、今後トリプル赤字に転落する可能性が高まっています。
デジタル依存の加速
・スターゲート計画などの影響で、AIサービスやクラウド利用のための海外支払いが急増し、経常収支の黒字幅が縮小。
エネルギー価格の高騰
・原油や天然ガスの輸入コストが上昇し、貿易赤字がさらに拡大。
国内ICT産業の競争力低下
・国内でのデジタル自立が進まなければ、さらに多くのサービスを海外に依存する事態が進行。
まとめと提言
このままデジタル赤字が拡大し続ければ、近い将来、日本はトリプル赤字の危機に直面する可能性が極めて高くなります。特に、スターゲート計画のような大規模な海外依存のプロジェクトが続けば、日本経済に与える打撃は計り知れません。
したがって、国内ICT産業の競争力を強化し、デジタル自立を促進するための政策を早急に整備することが不可欠です。具体的には、以下の対策が求められます。
国内AI技術の開発強化
・AI分野での独自技術を強化し、海外依存を減少。
省エネ型データセンターの整備
・国内に省エネ型データセンターを設置し、電力効率を向上。
国内企業向けのクラウドサービスの充実
・海外依存を減らし、国内サービスを強化。
デジタル人材の育成と確保
・ICT分野での競争力を高めるための人材確保と育成。
こうした取り組みを推進し、海外依存を減らすことで、日本の財政と経済の安定を維持することが求められます。
私のnoteでは、何度も繰り返し説明していますが、ChatGPTレベルのAIの開発は、それほど困難ではなく、圧倒的に低コストかつ省電力な選択肢が他にも多数存在します。
手頃な費用の推論モデル
トレーニングに要したのが比較的短い19時間だったため、Lambda Cloudの料金設定によると、Sky-T1の開発に要した費用はわずか450ドルだ、と研究チームはブログへの投稿で明らかにしている。「GPT-4」がコンピュートに7800万ドル(約122億円)かかったとされていることを考えると、OpenAIほどの資金がない学術機関やオープンソースグループがまねできる手頃な費用の推論モデルの一例を示したのは、なかなかの成果だ。
DeepSeekのリリースは、オープンソースの推論モデルにおいて有望な傾向を示している。カリフォルニア大学バークリー校の研究者は1月14日、「o1-preview」と同等のオープンソースモデルの開発に成功した。開発には、19時間と約450ドルのコンピューティングコストしかかからなかった。
価格
価格体系の面でも、R1はOpenAIにとって手ごわい競争相手となる。APIアクセスは、100万トークン(約75万語の分析)でわずか0.14ドルから可能であり、OpenAIは同等のレベルで7.50ドルを請求している。OpenAIは現在、「ChatGPT Pro」を通して、年間2400ドルでo1への無制限アクセスを提供している。
ところで、待望のイーロン・マスク vs. マーク・ザッカーバーグのリアルファイトの話はどうなったのでしょうか?
武智倫太郎