
日産に学ぶ病理学:日産経営危機から得られる教訓(12):コメント欄の続編
回答:日本国内では、iPhoneとAndroid端末の比率は70:30でiPhoneが優勢ですが、グローバル市場ではこの比率が30:70と逆転しています。この状況は、直近数年間にわたり広く知られています。一方、米国に限定すると、以前はiPhoneとAndroid端末の比率が50:50で拮抗していましたが、2024年頃からAndroid端末が減少し、iPhoneが増加する傾向が見られます。
この増加傾向の理由は、iPhoneが高級なイメージや優れたサービスを提供しているからではありません。寧ろ、Android端末の価格が高騰し、価格帯の選択肢が限られる中で、比較的安価な旧型iPhoneに乗り換えるユーザーが増えていることが背景にあります。
国際的なOSシェアに関する誤解
OSシェアに関する報道には、多くの誤解があります。仮にスマートフォンのOSがiOSとAndroidの二種類だけだとすれば、上記の説明は間違いではないかも知れません。しかし、世界全体で利用されているスマートフォンの総数と比較すると、公表されているiPhoneのシェアは実際よりも大きく見えることがあります。
さらに、アクティブユーザー数と新規顧客獲得数が混同されることもあります。たとえば、iPhoneのシェアが強調される際には、新規ユーザー数やAndroidからの乗り換え者数が引用されることが多いです。この情報がマスメディアやSNSを通じて繰り返し拡散されると、iPhoneのシェアがアメリカで50%以上あるように見える誤解を生むことがあります。
スマートフォンOSの多様性
実際には、GoogleのAndroidやAppleのiOSのような主要なOS以外にも多くのスマートフォンOSが存在します。BEV(バッテリー式電気自動車)の新規販売台数の増加が見込まれている国々では、iOSはメインストリームではありません。
たとえば、アメリカが経済制裁を行ったHuaweiが開発したHarmonyOSは、中国国内を中心に急速に普及しています。2024年10月にリリースされたHarmonyOS NEXTの詳細は別の記事で取り上げますが、今回は日本ではあまり知られていないスマートフォンOSについて簡単に説明します。
日本ではあまり知られていないスマホOS
KaiOS:KaiOSはスマートフォンと機能電話(フィーチャーフォン)のハイブリッド端末向けの軽量OSです。WhatsAppやFacebookなどの人気アプリに対応しており、インドやアフリカを中心とした新興国市場で高い人気を誇ります。
中国、インド、アフリカは、今後急速に普及が進むと予測されるSDV(ソフトウェア定義車両)型のBEVにおいて、極めて重要な市場です。
特にインドのバンガロールやハイデラバードは、世界最大級のソフトウェア開発拠点の一つであり、コンピュータが主役となる次世代自動車開発の中核的な役割を担う可能性を秘めています。
Sailfish OS:フィンランドのJolla社が開発したSailfish OSは、Androidアプリとの互換性を持ち、プライバシー保護を重視しています。フィンランドはかつてNOKIAの本社がある国で、Sailfish OSはNOKIAの技術を引き継いで開発されています。ヨーロッパやロシアなどのニッチな市場をターゲットにしています。
PostmarketOS:PostmarketOSはLinuxベースのオープンソースOSで、古いスマートフォンに新たな命を吹き込むために開発されました。完全にオープンソースで、カスタマイズ性が高く、主に技術者や開発者向けです。
Ubuntu Touch:Ubuntuのモバイル版であるUbuntu Touchは、デスクトップとスマートフォンの統合を目指しています。ウェブベースのアプリが利用可能ですが、使用者は主にLinux愛好家や開発者です。
Tizen:Samsungが開発したTizenは、スマートフォンだけでなく、スマートテレビやウェアラブルデバイスにも搭載されています。特にサムスンの低価格モデルのスマートフォンで採用されており、現在はスマートデバイス市場に焦点を当てています。
GrapheneOS:GrapheneOSは、Google Play Servicesを必要としないAndroidベースのプライバシー重視のOSです。セキュリティとプライバシーを最優先に設計されており、セキュリティ意識の高いユーザーに利用されています。
/e/(/e/OS):/e/OSはプライバシーを重視したAndroidフォークで、Googleのトラッキング機能を排除しています。プライバシー保護のアプリがデフォルトで搭載されており、プライバシーを気にするユーザーやヨーロッパ市場で使用されています。
LineageOS:LineageOSはAndroidのカスタムROMで、古いスマートフォンを再活用するための選択肢として注目されています。不要なアプリがプリインストールされていないため、シンプルでセキュアな通信環境を構築するのに適しています。また、Raspberry Pi(ラズパイ)でも使用可能ですが、ラズパイ向けのLineageOSは公式ではなく、非公式のコミュニティビルドを利用する形になります。
回答:半導体露光装置の3大巨頭は、オランダのASML、日本のCanonとNikonです。ASMLは、EUV(極端紫外線)露光技術において圧倒的な技術力を持ち、世界シェアの大半を占めるリーダー企業です。
日本勢のCanonは、主にi線(365nm)やKrF(248nm)の露光装置でシェアを確保しており、液晶パネルや中小型用途に強みがあります。一方、NikonはArF(193nm)やKrFなどの半導体用露光装置で知られ、特に高解像度製品において技術力を発揮しています。
一方、中国ではアメリカの半導体制裁により、オランダのASML社などから先端露光装置の輸入が制限される中、自国製の露光装置の開発が急速に進展しています。2024年9月、中国工業情報省は、レーザー技術を基盤とした新型の液浸露光装置が65ナノメートル以下の露光を可能にしたと発表しました。これは、従来の90ナノメートルから大幅な進歩を示すものであり、中国が短期間で技術的な飛躍を遂げたことを裏付けています。
つまり、中国が経済制裁を受けてから、CanonやNikonを追い越すのに要した時間はわずか1年程度です。さらに、中国の独自技術は、オランダや日本でも実現されていなかった画期的な方式であり、今後の動向に注目が集まっています。
このような背景から、2025年は半導体業界、ビッグテック業界、そして自動車業界にとって非常に重要な年となります。一年間の経営判断の遅れが、企業や国家にとって死活問題に直結する期間といえます。ホンダの経営陣は、この貴重な一年間を日産の経営問題によって影響を受ける可能性があるため、日産の問題が日本経済全体に及ぼす影響の大きさを再認識する必要があるでしょう。
武智倫太郎