バブルはどこへ消えた?
まえがき
『チーズはどこへ消えた?』は、変化に対する対応の重要性を教える寓話として広く知られていますが『バターはどこへ溶けた?』は、それを皮肉った内容になっています。このパロディでは、変化に対する過剰な適応や、表面的な成功にばかり目を向けてしまうことの危険性を描いています。物語では、変化に直面するキャラクターたちが、ただ適応するだけではなく、根本的な問題を見過ごしてしまい、最終的には困難な状況に陥る姿を描いています。タイトルの『バターが溶ける』という比喩は、変化に追従することの無意味さや、表面的な対応の儚さを象徴しています。
この発想をさらに展開させて、『バブルはどこへ消えた?』という新たなパロディを書いてみました。バブル経済の過去の教訓を題材に、特に現在の生成AIブームに対する警鐘を込めています。
バブルはどこへ消えた?(本文)
バブル経済とは、資産や株価が過度に膨れ上がり、その後一気に崩壊する現象です。物語の中では、かつて『豊かな土地』として知られた国々が登場します。これらの国々は、黄金のように価値のある不動産や、新たなデジタルフロンティアであるIT企業によって栄えていました。しかし、ある日突然、彼らが頼りにしていた『黄金』は急速に価値を失い、多くの人々が手にしていた富がまるで『溶けたバター』のように消えてしまいました。
チューリップの国
まずは、17世紀オランダに存在した『チューリップの国』。ここでは、チューリップの球根が異常な高値で取引され、一部の球根は家一軒分に相当する価値にまで膨れ上がりました。しかし、価格が持続できないことが明らかになると、バブルは一気に崩壊し、多くの投資家が破産しました。この国では、価値が急落した結果、資産が消失したかのように見えましたが、実際には取引価値が元に戻っただけでした。
南海の国
次に登場するのは、18世紀イギリスに存在した『南海の国』。ここでは、南海会社という貿易会社への投機によって繁栄がもたらされました。南海会社の株価は急騰し、多くの人々が投資に殺到しました。ところが、会社の収益性が実際には伴わなかったため、バブルが崩壊しました。この国では、株価が急落し、多くの投資家が財産を失いました。この事件は、政府の腐敗や経済政策の失敗も影響し、広範な経済危機を引き起こしました。
ウォール街の国
次に訪れるのは、20世紀のアメリカに存在した『ウォール街の国』。1920年代、この国の株式市場は好況を極め、多くの投資家が借金をしてまで株を購入しました。しかし、1929年の『ブラック・サーズデー』を皮切りに株価が急落し、大恐慌が始まりました。株式市場が崩壊すると、多くの銀行や企業が倒産し、世界経済に深刻な影響を与えました。この国の投資家たちは多額の資産を失い、経済的苦境が長引く結果となりました。
不動産の国
次に登場するのは『不動産の国』。ここでは、土地と建物が限りない価値を持つという不動産神話が信じられていました。人々はどんどん高値で土地を買い、建物を建てました。しかし、突然の冷たい風が吹き込み、土地の価値は一気にしぼんでしまいました。この国では、人々が『どこへ行ってしまったんだ?』と問いましたが、答えはただ一つ、『その価値は初めから幻想だった』のです。
エネルギーの国
次に訪れるのは、『エネルギーの国』。この国には光り輝く巨人、エンロンがいました。この巨人は、エネルギーを操り、未来を約束していました。しかし、実はその巨人の内部は空洞で、虚偽の光で人々を欺いていたのです。やがてその欺瞞が露見すると、巨人は崩れ落ち、この国の人々は彼が持っていたはずの富が溶けてなくなるのを見ていました。
ITの国
次に登場するのは『ITの国』。ここでは、インターネットという新たな『デジタルゴールド』が発見され、誰もがそれを手に入れようと狂奔しました。しかし、掘り出されたゴールドはすぐに価値を失い、この国でも再び人々の手の中から『溶けたバター』のように消えてしまいました。
金融の国
そして最後に訪れるのは、『金融の国』。この国では、リーマンという名前の巨大な城がそびえ立っていました。城の中には複雑な財宝が隠されており、この国の人々はそれに夢中になっていました。しかし、城は突然の嵐に見舞われ、その土台が崩れ、城と共に財宝も溶け去ってしまったのです。
AIの国
こうした過去の物語が語り継がれている中、現代では新たな国が現れています。それは『AIの国』です。この国では、生成AIという新たな希望が目に見える形で輝いています。しかし、この輝きは過去の教訓を忘れた人々によって過大に評価されているのです。『AIの国』でも、『バブル』という名の危険な泡が再び膨れ上がっています。この国の人々はその泡の中に入りたがり、その中には無限の富があると信じていますが、果たしてそれは本物なのでしょうか?
もし『AIの国』が過去の国々と同じ運命をたどるとすれば、再び『バブル』は弾け、その中にあったはずの富は消えてしまうかも知れません。物語の教訓は、どの時代にも通じるものです。新しい技術に対する過度な期待や、表面的な成功にばかり目を向けてしまうことの危険性を忘れてはならないのです。
『バブルがどこへ消えたのか、そして次はどこへ消えるのか』――それを見極めることができるのは、過去から学び、冷静な目で未来を見つめる者だけです。
武智倫太郎
【自己解説】
リーマンショック(2008年の世界金融危機)により、世界中で数十兆ドル(日本円に換算すると数千兆円)規模の価値が消失したと推定されています。具体的には、以下のような影響がありました。
株式市場の損失:世界中の株式市場で数十兆ドルの資産価値が失われました。例えば、アメリカの株式市場では2008年から2009年の間に約30兆ドルが消失したとされています。
住宅市場の崩壊:アメリカを中心に住宅価格が大幅に下落し、多くの家庭が住宅の価値を失いました。これにより、数兆ドル規模の損失が発生しました。
金融機関の損失:多くの銀行や金融機関が倒産し、または救済措置を受けました。これによっても数兆ドル規模の損失が発生しました。
これらを総計すると、リーマンショックによる直接的および間接的な経済損失は100兆ドル(約10,000兆円)に迫るとも言われています。この数字は様々な要因によって変動する可能性がありますが、いずれにせよ、歴史的に見ても非常に大規模な経済的衝撃であったことは間違いありません。
OpenAIショックの震源地
OpenAIのサム・アルトマンCEOは、人工知能(AI)、特に汎用人工知能(AGI)の急速な進展を支えるために、最大で7兆ドルの資金調達を目指していると報じられています。この巨額の資金は、チップ製造工場やエネルギー源など、世界的な施設ネットワークを構築するために必要です。
この資金調達には、米国政府やアラブ首長国連邦(UAE)などの国際的な投資家を含む、政府や主要な産業関係者とのパートナーシップが含まれる可能性があります。この資金は、AIチップだけでなく、大規模なAIシステムを稼働させるためのエネルギーインフラにも充てられる予定です。さらに、アルトマン氏は、AIがもたらすエネルギー問題への長期的な解決策として、核融合エネルギーを挙げており、この取り組みがいかに未来志向であるかを示しています。
この記事はサム・アルトマンが、AIの発展に必要な巨大なインフラを構築するために、何兆ドルもの資金調達を計画していることを確認した内容を報じています。具体的には、AIチップの製造施設や、それらを支えるエネルギーインフラの整備が計画されています。アルトマン氏は、これらの取り組みを通じて、AI、特に汎用人工知能(AGI)の需要に応えることを目指しており、長期的には核融合エネルギーがその解決策の一つとなる可能性も示唆しています。
さらに、この計画には、米国政府やアラブ首長国連邦などの国際的な投資家や企業との協力が含まれており、これによりAIのためのインフラ整備が世界規模で進められることが期待されています。
OpenAIの7兆ドル資金調達計画と日本のGDPの比較
OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏が提唱している、AIインフラを整備するための7兆ドル(約1000兆円)に上る資金調達計画は、その規模の壮大さで注目を集めています。特に、この額は一国の経済規模と比較することで、その途方もない大きさがより鮮明になります。
日本のGDPとの比較
まず、日本の国内総生産(GDP)を見てみましょう。2023年の日本の名目GDPは約5兆ドル(約700兆円@140円/USD換算)であり、これはドイツに抜かれたとはいえ、世界第4位の経済大国としての地位を示しています。OpenAIが目指している7兆ドルの資金調達額は、この日本の年間GDPを上回るものです。
具体的には、OpenAIが調達しようとしている7兆ドルは、日本のGDPの約1.4倍に相当します。この規模の資金は、一国の経済を丸ごと上回る規模であり、これだけの資金が集まれば、AI技術の発展や関連するインフラの整備に多大な影響を与えることが予想されます。
AIインフラへの影響
OpenAIがこの7兆ドルを実際に調達し、それをAIチップの製造やエネルギーインフラの整備に投入した場合、世界の技術インフラストラクチャーに大きな変革をもたらす可能性があります。しかし、この資金が核融合エネルギーの開発に投入された場合、2050年までに核融合発電が普及する可能性は現実的にはあり得ないため、その前提に立った計画は慎重に検討されるべきです。
結論
OpenAIが目指す7兆ドルの資金調達は、単なる企業活動の枠を超え、世界経済に匹敵する規模のプロジェクトであることがわかります。この規模のプロジェクトが失敗した場合、それがリーマンショック以上の世界経済危機の引き金となる可能性があることを示しています。
リーマン・ブラザーズが2008年に破綻した際、その負債総額は約6130億ドル(約65兆円)とされました。この破綻は、当時の世界金融市場に巨大な衝撃を与え、リーマンショックとして知られる世界的な経済危機を引き起こしました。この負債額は、単一企業としては歴史上最大級の破産の一つとして記録されています。
1兆ドルに満たない規模の破綻が世界経済を震撼させたことを考慮すると、7兆ドル規模(リーマン・ブラザーズの破綻時の負債総額の約10倍以上)の破綻がどれほど大きな影響を与えるかが理解できるでしょう。
リーマンショックにおいては、シンセティックCDOのような複雑な金融スキームが大きな影響を及ぼしました。
OpenAIが提供するエンジンが大手ICT企業に与えるインパクトや、競合他社が連鎖的に倒産する可能性を考慮すると、リーマンショック以上の大恐慌を引き起こす可能性が十分にあります。
さらに、OpenAIが競合他社に勝利する確率も、それほど高くはありません。OpenAIは自然言語処理や生成AI技術において高度な技術を持つ企業として知られていますが、GPTシリーズに使われている技術であるTransformerは、もともとGoogleが2017年に発表した技術です。
Googleは、Transformerに関連してさらに進んだ技術を開発しており、学習に使用できるデータの量もOpenAIをはるかに上回っています。
OpenAIと同等以上のAI技術を持つ企業には、AlphaGoやAlphaFoldで知られるGoogle DeepMind、AIの安全性と倫理的問題に焦点を当てるAnthropic、Meta(旧Facebook)の大規模なオープンソースプロジェクトであるOPTやLLaMAなどがあります。これらの技術は、世界中で各国の言語に対応したAI開発にも利用されています。
オープンソースの分野では、Googleが開発した機械学習ライブラリTensorFlowや、Metaが開発したディープラーニングライブラリPyTorchが特に研究用途で人気があります。これらのライブラリは直感的なインターフェースと柔軟性が特徴で、最先端のAI技術に多く利用されています。
Hugging FaceのTransformersライブラリは、BERTやGPTなどの最先端の言語モデルを簡単に利用できるツールを提供しており、コミュニティによって広く使用されています。また、OpenAIのCLIPやDALL-Eの技術を模倣したオープンソースプロジェクトも存在し、これらも自由に利用可能です。
したがって、OpenAIがAI分野において唯一の勝者となるシナリオは、現実的には考え難いのです。
武智倫太郎
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