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詐欺の帝王たち:孫正義と歴代ペテン師列伝(創刊号)

『ペテン師列伝』のエピローグでは、孫正義を取り上げる予定です。しかし、彼と同等、あるいはそれ以上に悪質な『詐欺的ビジネスマン』は、歴史上何度も登場してきました。そこで、世界的に有名な詐欺商法の事例を以下のようにまとめ、『ペテン師列伝』を創刊することにしました。

 高度な情報社会になった現代でも、詐欺を仕掛ける側と被害に遭う側には、意外なほど共通点があります。本書を通じて詐欺の本質を捉え、詐欺師たちに騙されないための基礎知識を身につけていただければと思います。

第1章:紙幣経済の幻想家

ジョン・ロー(John Law, 1671~1729)
ミシシッピ会社バブル:『紙幣経済の幻想を煽り、バブルを生み出す』

 ジョン・ローは18世紀のフランスで『ミシシッピ会社』を設立し、株式バブルを引き起こした経済学者兼投機家です。大量の紙幣を発行してバブルを膨らませましたが、最終的にはフランス経済を崩壊へと導いてしまいました。

第2章:幻の王国を売った男

グレゴール・マクレガー(Gregor MacGregor, 1786~1845)
ピオヤ王国詐欺:『存在しない理想郷を売りつける』

 グレゴール・マクレガーは、中南米に実在しない『ピオヤ王国』の国王を名乗り、ヨーロッパの投資家たちに土地や特権を販売しました。多くの人々がその幻想を信じて移住を試みましたが、王国自体が存在しないことが露見し、詐欺が発覚。大きな騒動となりました。

第3章:エンタメ詐欺の先駆者

P.T. バーナム(Phineas Taylor Barnum, 1810~1891)
見世物興行・サーカス:『大衆の好奇心を利用した大げさな宣伝』
P.T. バーナムは、『どんな宣伝も良い宣伝』という信条のもと、偽の奇人や妖怪を見世物として大衆に披露し、大成功を収めた人物です。その手腕により娯楽産業はさらなる発展を遂げ、現在のエンターテインメントビジネスの礎が築かれました。

第4章:インチキ薬とビジネス帝国

ウィリアム・ロックフェラー(William Avery Rockefeller, 1810~1906)
偽医者・インチキ薬:『がんを治す偽薬を販売』
 ウィリアム・ロックフェラーは、偽名を使って『がんに効く』と称する偽薬を売り歩いていた詐欺師です。石油王ジョン・D・ロックフェラーの父であり、息子は彼からビジネス手法を学んだとされています。

第5章:シリアル戦争の舞台裏

C.W. ポスト(C.W. Post, 1854~1914)
シリアル食品(ポスト社):『健康効果を誇張し、ケロッグと対決』
C.W. ポストは、ジョン・ハーヴェイ・ケロッグが開発したシリアルを参考に(あるいは模倣して)『グレープナッツ』を開発しました。『病気が治る』と思わせるような誇大広告を打ち出し、大きな売上を記録しました。

ケロッグ兄弟(John & Will Kellogg, 1860年代)
シリアル食品(ケロッグ社):『健康ブームを利用して食品業界を独占』
ケロッグ兄弟は、『性欲を抑える食品』としてコーンフレークを発明し、当時の健康ブームを背景に大成功を収めました。兄のジョンは発明に注力し、弟のウィルがそれを商業化してケロッグ社を世界的企業に成長させます。しかし、兄は宗教的に厳格な健康志向が強く、経営方針をめぐって弟と対立したといわれています。

第6章:金融王の崩壊

イヴァール・クルーガー(Ivar Kreuger, 1880~1932)
マッチ王国詐欺:『世界のマッチ産業を独占し、金融市場を欺く』
 イヴァール・クルーガーはスウェーデンの実業家で、マッチ産業を独占していたことで知られます。巨額の債券を発行し、実態のない資産をもとに金融市場を操作していたとされますが、経営が行き詰まり、自ら命を絶ったと伝えられています。

第7章:ねずみ講の元祖

チャールズ・ポンジ(Charles Ponzi, 1882~1949)
投資詐欺(ポンジ・スキーム):『後から投資した人の資金で、先に投資した人に利益を支払う』
 チャールズ・ポンジは、いわゆる『ポンジ・スキーム』の元祖とされる人物です。『国際郵便返信券の価格差で儲ける』と称して投資家から資金を集める一方、新たな出資者からの資金を流用して既存投資家に配当を支払っていました。最終的には多くの被害者を出し、大きな社会問題となりました。

第8章:企業乗っ取りの名人

レイ・クロック(Ray Kroc, 1902~1984)
マクドナルド:『オリジナル創業者を追い出し、企業を乗っ取る』
 レイ・クロックは、もともとマクドナルド兄弟が開発したシステムをフランチャイズ化し、マクドナルドを世界的ファーストフードチェーンへと成長させた人物です。やがて自らを『マクドナルドの創業者』と位置づけるようになり、元の創業者であるマクドナルド兄弟を事実上追い出したともいわれています。

第9章:巨大詐欺の連鎖

バーニー・マドフ(Bernie Madoff, 1938~2021)
巨大投資詐欺:『金融界の信頼を利用したポンジ・スキーム』
 バーニー・マドフはウォール街で高い評価を得た後、史上最大級とされる約6兆円規模のポンジ・スキームを展開しました。金融界での権威を背景に多数の投資家から資金を集めましたが、後にその手口が明るみに出て、大きな社会問題を引き起こしました。

バーニー・エベールズ(Bernie Ebbers, 1941~2020)
ワールドコム会計詐欺:『通信業界を代表する企業を虚偽決算で拡大』
バーニー・エベールズは、通信大手ワールドコムで巨額の不正会計を行い、一時は業界をけん引するほど急成長を遂げました。しかし虚偽決算が発覚すると企業は急速に崩壊し、エベールズ自身も罪に問われました。

第10章:現代のペテン王たち

ビル・ゲイツ(Bill Gates, 1955~)
Microsoft:『OSの騙し買い・独占戦略・訴訟で競争相手を潰す』
ビル・ゲイツは、他社のOSを低価格で買い取りIBMと契約を結ぶことで、結果的にWindowsによる独占的地位を確立したといわれています。また、強力な法務戦略や独占的手法をめぐって批判を浴びる一方、IT業界に大きな変革をもたらした人物でもあります。

アダム・ニューマン(Adam Neumann, 1979~)
WeWork:『シェアオフィスをハイテク企業に見せかけて上場詐欺』
アダム・ニューマンはシェアオフィスビジネスであるWeWorkを、あたかもITスタートアップのように見せかけて巨額の投資を集めました。上場を目指したものの、ビジネスモデルの実態が疑問視され、最終的に計画は失敗に終わりました。

堀江貴文(Takafumi Horie, 1972~)
ライブドア:『メディアと市場を巧みに操作し、急成長を演出』
堀 江貴文は、M&Aを積極的に活用してライブドアを急成長させ、メディアを通じて話題づくりを行い大きな影響力を築きました。しかし、証券取引法違反などの容疑で逮捕され、当時の手法や言動は世間の賛否を呼びました。

孫正義(Masayoshi Son, 1957~)
ソフトバンク:『未来のビジョンを売り込み、実態のない投資バブルを生み出す』
 孫正義は壮大な未来ビジョンを掲げ、国内外の投資を主導してきた実業家です。しかし、実態の乏しい企業への投資も多く、WeWorkやArmなどへの巨額投資はリスクや妥当性が疑問視されています。

サム・バンクマン=フリード(Sam Bankman-Fried, 1992~)
FTX仮想通貨詐欺:『仮想通貨業界の革命児を装い、数十億ドルを消失』
 サム・バンクマン=フリードは、FTX取引所の経営者として一時『仮想通貨業界の革命児』ともてはやされました。しかし経営破綻の過程で巨額の資金を不正流用していた疑いが強まり、大規模な詐欺事件として世界的に注目されています。

 以上は、歴史上から現代に至るまで『詐欺的ビジネス』で世間を騒がせてきた人物たちの列伝です。実際、詐欺罪・粉飾決算・有価証券取引法違反などで逮捕された堀江貴文のような『詐欺的ビジネスマン』は、ペテン師の世界では氷山の一角に過ぎません。これをはるかに上回る数のビジネスマンが逮捕されるか、あるいは投資家から株主代表訴訟を起こされているのが現状です。

 彼らの手口には多くの共通点があり、社会の欲望や期待を巧みに利用していることがうかがえます。一方、そのスケールや舞台は時代によって変化し続けており、今後も同様の事例が現れる可能性は十分にあります。

 しかし、このような詐欺師たちを見抜けないこともまた『投資の自己責任』の一部であると言えます。私がnoteで指摘しているAI詐欺の可能性についても、細心の注意を払う必要があるでしょう。さらに、投資家でなくともAIバブルが崩壊すれば社会全体に多大な損害が及ぶことは確実です。したがって、AI関連事業に直接投資していない人であっても、こうした“ペテン師”には十分な警戒を払う必要があります。

武智倫太郎

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