見出し画像

中居正広とフジテレビ問題から考察する芸能人やスポーツ選手を使った情報操作の実態

 みなさんは、O・J・シンプソンをご存じでしょうか。私は時々アニメ『ザ・シンプソンズ』の話をするので、『シンプソンといえばホーマー・シンプソンのことですか?』と思われるかも知れませんが、今回取り上げるのは彼ではありません。

O・J・シンプソンとは

 O・J・シンプソン(Orenthal James Simpson:1947年生まれ)は、元アメリカンフットボール選手であり、俳優としても活躍していました。しかし、彼の名前が広く知られるようになったのは、1994年に起こった『O・J・シンプソン事件』がきっかけです。

 1994年6月16日は、私がアメリカで初めてテレビという文明の利器を手に入れた記念日でした。当時、Windows95とともにインターネットが一般家庭にも普及し始めたのは1995年以降ですので、多くの人々にとっては1995年がインターネット元年と言えるか知れません。

 私はそれ以前からNifty ServeやAOL(America Online)などを利用していましたので、インターネットの有無は個人的にはそれほど重要ではありませんでした。しかし、1995年以前の一般社会では、ラジオ・テレビ・新聞以外に情報を得る手段がほとんどない『情報暗黒時代』だったとも言えます。

O・J・シンプソン事件とメディアの影響

 1994年にテレビを購入して最初に驚いたのは、アメリカの民放全局が一日中、O・J・シンプソンのカーチェイスをリアルタイムで放送していたことでした。番組のスポンサーは石鹸会社ばかりで、『アメリカ人は石鹸とO・J以外に興味がないのだろうか?』と疑問に思ったほどです。

 当時のアメリカの昼間の放送は、石鹸のコマーシャルばかりで、陳腐なメロドラマを延々と流していました。『ソープ・オペラ(Soap Opera)』という言葉は、昼間の民放ドラマのスポンサーに石鹸会社が多かったことに由来しています。視聴者の多くが家でテレビを見ている主婦層であることを前提に編成されていたのです。

 近年は多様性が重視されるようになり、このような性別役割の固定観念は問題視されることが増えました。しかし、かつては『男は外で働き、女は家で家事をする』という価値観が一般的でした。

トランプ大統領の政策と性別の多様性

 2025年1月20日に78歳で再任されたドナルド・トランプ大統領は『米政府の公式方針として、今日から性別は男女の二つのみとする』と述べ『生物学的な男女』のみを性別として認める大統領令に署名しました。

 つまり、現在のアメリカ政府はトランスジェンダーやノンバイナリーの性の多様性を公式には認めない方針であり、トランプ大統領が掲げてきた『Make America Great Again(アメリカを再び偉大に)』のスローガンの一環として、『古き良きアメリカ』への復古を目指しているのです。

 O・J・シンプソン事件は、シンプソンの元妻であるニコール・ブラウン・シンプソンと彼女の友人ロナルド・ゴールドマンが、ロサンゼルスの自宅付近で惨殺されたことに端を発します。シンプソンは容疑者として逮捕される直前、白いフォード・ブロンコで逃走を図り、そのカーチェイスが全米のテレビで生中継されました。その結果、『世紀の裁判(Trial of the Century)』とも呼ばれる長期にわたる裁判が始まったのです。

裁判の行方と社会的影響

 1995年、O・J・シンプソンは刑事裁判で『無罪』の評決を受けました。これは、検察側の証拠不備や警察の捜査ミス、人種問題の影響などが絡み合った結果でした。しかし、1997年の民事裁判では逆に有罪とされ、被害者遺族に賠償金3,300万ドルの支払いが命じられました。

 この事件は、アメリカ社会における『人種間の対立』『司法制度の信頼性』『メディアの影響力』など、多岐にわたる議論を巻き起こしました。特に裁判の過程でメディアがこの事件をセンセーショナルに報道したので、本来注目すべき政治的・社会的に重要な問題が隠れてしまったとも言われています。

O・J・シンプソン事件の影に隠れた問題

 O・J・シンプソンの事件がメディアを席巻していた1994~1995年の間、以下のような出来事が影に隠れたと指摘されています。

ルワンダ大虐殺(1994年)
 80万人以上のツチ族が虐殺されたこの事件では、アメリカ政府の対応が遅れた問題がありましたが、シンプソン裁判の報道に押し流されました。

クリントン政権のスキャンダル(ホワイトウォーター疑惑、ポーラ・ジョーンズ訴訟)
 ビル・クリントン大統領の不動産疑惑やセクシュアルハラスメント訴訟が進行していましたが、シンプソン事件の影に隠れました。

 このように、メディアが有名人のスキャンダルを大々的に報じることで、より重要な社会問題から国民の関心が逸れるという現象は、過去にも繰り返し起こっています。O・J・シンプソン事件は、その代表的な例の一つと言えるでしょう。

 他にも、有名人のスキャンダルが大々的に報道されることで、社会的に重要な事件が影に隠れたと指摘されるケースがあります。

1.マイケル・ジャクソン裁判(2003~2005)

 影に隠れたとされる出来事:イラク戦争(2003~2011)の誤報
2003年、アメリカは大量破壊兵器の存在を口実にイラク侵攻を開始しましたが、その後、証拠が虚偽だったことが判明しました。しかし、マイケル・ジャクソンの児童虐待疑惑裁判がメディアの関心を集め、多くの人々の注目が戦争問題から逸れたと指摘されています。

パトリオット・アクト(愛国者法)の拡張
 2001年9月11日の同時多発テロ後、米政府は愛国者法を制定し、市民の監視強化を正当化しました。2003年以降、この法律が拡大される動きがありましたが、マイケル・ジャクソン裁判によって十分な議論がなされなかったとの見方があります。

CIAの拷問問題(アブグレイブ刑務所)
 2004年、アメリカ軍によるイラクのアブグレイブ刑務所での囚人虐待事件が報じられました。しかし、マイケル・ジャクソンの裁判がメディアの注目を集めたことで、拷問問題への世論の関心が薄れたとも考えられています。

政府や企業などが関与して情報を歪曲した報道

 タッカー・カールソンのように、政府や企業の意向を受けて情報を歪曲または操作したとされる事例としては、以下のようなものがあります。

タッカー・カールソン(Fox News)

2020年米大統領選の不正選挙説
 2020年の米大統領選挙後、カールソンを含むFox Newsのキャスターたちは、ドミニオン社の投票機が票を改ざんしたとする根拠のない主張を展開しました。その後、Fox Newsはドミニオン社と7.87億ドルの和解を行い、虚偽報道だったことを事実上認めました。

1月6日の米連邦議会襲撃事件(2021)
 カールソンは、2021年1月6日の議会襲撃事件について『平和的な抗議者だった』とする主張を展開し、事件の深刻性を軽視する報道を行いました。しかし、Fox Newsが内部メッセージを公開した際、カールソン自身がトランプの主張を疑問視していたことが明らかになっています。

イラク戦争の開戦理由(2003)

 アメリカ政府と一部メディア(Fox News、CNNなど)は『イラクには大量破壊兵器(WMD)がある』とする誤った情報を拡散し、戦争開戦を正当化しました。その後、WMDは存在しないことが判明し、メディアの責任が問われました。

フェイスブックとケンブリッジ・アナリティカ事件(2018)

 フェイスブックは、英国のデータ会社ケンブリッジ・アナリティカが8,700万人のユーザー情報を不正に取得し、2016年の米大統領選に影響を与えたことを隠蔽しようとしました。メディアも当初この問題を小さく報じましたが、のちに大規模なスキャンダルとして扱われるようになりました。

エクソン・モービルによる気候変動否定(1970年代以降)

 エクソン・モービルは、1970年代から自社の研究で気候変動の危険性を把握していたにもかかわらず、政府と連携して『気候変動は不確実』というキャンペーンを展開し、温暖化対策を遅らせました。この情報は2015年になってようやく暴露されています。

2019年の香港民主化デモと中国政府の情報操作

 中国政府は、香港の民主化デモに関する情報を歪曲し、国際メディアにも影響を与えました。特に中国国営メディアは、デモ参加者を『暴徒』として描写し、アメリカの陰謀であるとするプロパガンダを展開しました。

 このように、有名人のスキャンダルによる目くらましや、政府・企業による情報操作は歴史的に数多く存在しており、意図的に世論を誘導するケースが多々見られます。

現在、中居正広とフジテレビ問題にかき消されている最重要問題

 現在、日本国内では中居正広とフジテレビの問題が大きく報じられていますが、その陰に隠れてしまっている本当に重要な問題は以下の三点です。

一、医療制度の崩壊

二、日産の経営破綻

三、デジタル赤字の拡大と日本経済の終焉

政商・孫正義氏が石破茂首相をAI問題で担ぎ上げた意味

 さらに見逃せないのは、破産寸前の孫正義氏が、日本政府や政府系金融機関、独立行政法人に債務保証をさせることで、数十兆円規模の日本政府の簿外債務を生み出そうとしている点です。

 これは、スターゲート計画の損失を全額日本政府が負担する形に持ち込まれる可能性を意味し、その結果、国家財政に深刻な影響を与えることは避けられません。

アメリカのAIインフラ投融資がもたらす日本の危機

 日本政府がアメリカのAIインフラに投融資するということは、今後長年にわたり年間十兆円単位のデジタル赤字を垂れ流すことが確定することを意味します。この流れを止めなければ、日本経済が完全に破綻する可能性があるでしょう。

 しかし現在の報道では、この問題が中居正広やフジテレビの話題に埋もれてしまっています。本来、国民が真剣に議論すべき重大なテーマであることは間違いありません。

武智倫太郎


いいなと思ったら応援しよう!