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コバルトの季節の中で|すなわち年末調整(2024)

ようのび太!おれだよ!年末調整の書類はもう手元に届いたか?こういうのはなるべく早いうちに提出したほうが心象がいいから、優先度高めで対応しような!

しごできジャイアンの感じで申し上げてみましたけれども。

我々サラリーマンは毎年この時期になると、総務のお姉さんから難しそうな文言や数字が並んだ書類を、「必要事項を記入していついつまでに提出してくださいね」と手渡されるのです。これを提出すると、年末にいくばくかのお金が入ってきたり、あるいは徴収されたりする場合もあるということで、年末年始の入り用が増える時節、笑って年を越せるかどうかがこれによってある程度左右されるという非常に大切な書類です。

この手の総務関連書類の提出をおれは先延ばす癖があって、昨年は期限ギリギリに提出したうえに不備が後から見つかり、日ごろ総務のお姉さんを困らせてばかり(おもに勤怠管理システムや経費精算の不備など)のおれの本領を遺憾なく発揮したということです。

毎年やっていることなのにこの書類、いまいちどのように書けばいいのか正解がよく分かっておらず、毎年こうではないか?と手探りで書いて提出し、その後差し戻しなどもないのでまあなんとかなっているんだろうな、という具合です。

記入例の見本なんかも同時に手渡されるのですが、恐らくお役所の偉い人が作ったおダサな資料なものですから、目がチカチカする色合いで、謎にグラデーションがかかったオブジェクトで「ここにこのように書く」などの指示がなされているのでもう読む気がしないわけです。

また、この書類には配偶者の有無について明らかにしなくてはいけない欄がありますよね。毎年「無」にマルをつけることによって、「お前はまた今年も独身のまま一年を終えるのかよ」と言われているような気持ちになります。このあたりが、おれが年末調整書類の対応を先延ばしにする原因となっています。


今年は例年とは少し調子が異なっておりまして、今年から弊社の総務が担当替えになり、新しい人がこの書類を手にデスクにやってきたのです。今までの担当者にはおれのまずい部分がバレておりますが、当然、新任の方なのでその辺はまだうまいこと隠せているのです。今年こそは新しい自分、ブランニューさんしをお目にかけようぞと心に誓い、手元にやってきたその日に対応することにしたのです。総務のお姉さんにちょっといいところを見せたいという気持ちもないではない。

やるなら徹底的にやるでおなじみのおれ、毎年ロクに読みもしない記入例を熟読をし、完璧に項目を埋める挑戦をしました。

目がチカチカして読む気がしないオブジェクトにも、よく目を凝らすとたいへん重要なことが書いてある!どこに何を記入すればよいのかが理解できる!お役人さんが原色のオブジェクトで、グラデーションまでかけておれに伝えようとしていたことが体ではなく心で理解できる!めちゃくちゃ大事、そりゃバチバチのオブジェクトで伝えたくもなるよな、と共感をおぼえながら対応をします。今年一番年末調整書類の記入例を熟読したのはこのおれだという自負すらあります。

毎年配偶者の有無にマルをつけて保険関連の書類を挟み込んで提出していただけのおれでしたが、「収入」と「所得」の違いを理解して、それぞれの欄に数字を記入し、どのくらい控除がされるのかを把握している!!これはたいへんな成長であります。まー僕は年間で100兆円の収入がありますから?控除も誤差範囲なわけですが?国家予算じゃねえかよ。さっきまで笑って年を越せるかどうかがこれによって左右されると言っていたくせに。

その日の午前中のうちに作業を終え、総務のお姉さんに提出をしました。素晴らしい。総務にやさしいサラリーマンの鑑であります。当然、昨年記入漏れのあった配偶者の欄にきちんと記入がなされているかのダブルチェックもしております。完璧。ご査収くださいませ!!


午前中いっぱいを使って必要以上に記入例を熟読して対応したのですが、本業はサラリーマン。当然、その日済ませなくてはいけない仕事を置いて取り組んだので、少し残業をしてしまいました。

その日の夜、残っていると社内が少し騒がしい。他の社員がいまごろ年末調整書類に取り組んでいる様子です。書き方が分からない!と後輩社員が先輩たちに助けを求めています。先輩の彼らもよく理解していないのか、要領を得ない回答をしています。なんなら一緒になってこう書けばいいのかなあ?と、ワイワイ楽しそうにしています。

そんなやりとりに聴き耳を立てながら仕事をしておりましたら、後輩の一人が「これはもう総務のお姉さんに聞きながら書いた方が早い」と、ひとり総務部に向かっていきました。

しばらくのち、後輩が戻ってきて仕入れた情報をみんなに共有します。すべてを理解しましたとか言ってる。

「僕らが書かなくてはいけない箇所はほとんどなくてですね。なんなら記入例に細かく書いてある収入と所得の欄とかも、当社は賞与とか未確定事項が多いので最終的に社労士さんに書いてもらうから、一旦空欄でいいらしいです!」


なんということでしょう。記入例には収入と所得の違いとか、目安の計算の仕方とかめちゃくちゃ細かく書いてあったじゃねえかよ。完璧に書いて出したと思っていたのに、ちょっと話が変わってきます。未確定事項があるということは、場合によっちゃ数字が変わってくるということですよね。その場合書類不備としてまた突き返される可能性があるということですよね。

これはいかんと思い、総務部に駆け込みます。午前中に提出した書類ですが、と戸を叩いたところ返答がない!どうやら後輩の記入レクチャーを行ってすぐに退勤したようすです。一瞬、目の前が真っ暗になりました。

すべての項目にしっかりと数字を記入して提出したから、総務のお姉さんは不備なしと思って社労士さんに提出するだろ。それからしばらく精査したのち、よくよく見たらさんしさんのこの数字、ちょっとおかしいんですよねって話になるだろ。そしたらおれのこと、「よく分かっていないくせに適当な数字を記入する奴」だと認識をするわけですよね。


当然、他にも不備がないか総務のお姉さんがじっくりとチェックするだろ。その際、配偶者の「無」にマルがついているのを見て「だからいつまで経っても独身なんだよお前みたいなモンは」って思うじゃないですか。どこまでもふざけた書類だよな!そんな感じです。

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さんし
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