僕らが髪を切る100の理由（Haircut）

先日髪を切ってもらいました。ここ10年ほどずっと、髪をセットする時間が面倒くさいからという理由でおしゃれパーマをあてて暮らしていたんですけれども、そもそも髪がなければセットなんてしなくても良いのではないかと、思い切って丸刈りに近いヘアスタイルにしてみたんですけどこれが大不評で！お客さんから「さんしちゃんがイカツくなっちゃったァ！」と言われたり、「前のふわふわヘアの方がよかったですよ、正直」「中国の富裕層」「駅とかで見かける空中に向かってキレているヤバいおじさん」「競艇場にいそう」「人生の終着駅こと競艇場の隅の喫煙所でブツブツ独り言を言ってそう」「シンプルに年収が低そう」など。おれの髪で最悪の大喜利をするなよ。

加えて、急激に冬めいてきたこの頃、吹き抜ける木枯らしに晒されている状態ですんで普通に風邪をひきました。おれがなにをしたというんだよ。髪を切ったんだよ！

それで、これだけ思い切った髪型にしますと、多くの人から聞かれるのが髪を切った理由です。なんでそんな短くしたの？ってことですよね。別に大きな理由なんてないんですよ。おれは10年以上にわたり、「髪のセットを極力回避できるヘアスタイル」という軸で髪を切ってもらっていましたから、パーマだろうが坊主だろうが、最終的な形は違えど根底にある動機はずっと変わっていないわけです。

ただ、いくら言葉を尽くして説明をしても相手は納得をしません。相手が求めている答えというのが他にあるんです。すなわち、「失恋」とか「反省」みたいなキーワードで括られるエピソードトークです。令和の時代になっても、髪型を変えることとこれらのキーワードを結びつけたい人の多いこと！逆に失恋をきっかけに髪型を変えるほうがダサいからな？

あまりにも執拗に髪を切った理由について聞かれてうんざりしているところなんですが、いっそのこと相手が期待している答えを遥かに上回る、グウの音も出ない回答をしてやりたいなと思うわけです。他人が髪を切る理由なんて、聞く側も流れで聞いてみるもののぶっちゃけ興味ないはずなんですよ。同僚が髪を切った理由と秋田の熊のニュース、どちらが重要かというと絶対に後者です。別にそこに真実なんてなくても良い、期待しているのはその場がワッと湧くような、お風呂でシャンプーしながら思い出して笑えるような、そんな面白エピソードです。あまりのサービス精神の高さから学生時代のあだ名が「サービス」だったおれが、ここはひとつ大いにフロアを沸かせる理由をでっちあげて新鮮なサプライズ＆ジョイをお届けしたいと、そういう風に思うのです！

それで、ここ数日ほど髪を切った理由（大嘘）を真剣に考えているんですけれども、いざ考え始めたらかえって自分からお話ししたくなってきましてね。みなさんにもぜひお裾分けをしたいと思ってこれを書いています。別に聞いてねえからの顔でご笑覧いただけますと幸いです。

・「めざましテレビ」今日のラッキーアイテムが坊主頭だった

・3mmだけ残して斬鉄剣で斬られた

・我が家は代々1/3の確率でハゲる家系（ガチ）であり、ハゲ⇒notハゲ⇒notハゲときている。おれはどちらにも転ぶ可能性があり、ハゲたときの予行演習をしている

・叔母を人質に取られ、叔母の命が惜しければ丸刈りにしろと身代金の代わりに坊主頭を要求された

・脱皮の一種。春になったら立派な蝶々になってあなたの街へ飛んでいくでしょうね

・今から甲子園を目指す。来年のドラフト会議には間に合わせる。

・あの人の顔を思い浮かべながら髪の毛で花占いをやっていた。ようやく今生えてきたところ

・今までの髪は子どもの髪であり、抜けた髪は軒下から屋根に向かって投げた。今生え始めているのはおとなの髪、永久髪。80歳まで20本以上残したい

・死んだお母さんを蘇らせようとして人体錬成の禁忌に手を出したら真理の扉にもっていかれた。3mmだけ残った

・髪以外が伸びて相対的に髪が短くなったように見えるだけ。

これで10個です。こういう感じのことを日夜真剣に考えているんですけれども、「1/3の確率でハゲる家系～」のやつなんか気に入っています。嘘の中に少しだけ本当のことを織り交ぜるというのがリアリティを演出するコツだなんてよく言いますが、段々本当にこれは予行演習なのでは？という気持ちにもなってきます。

それで、それなりに時間をかけて考えを巡らせ、いつでも面白アンサーをお届けする準備は整っていたわけなんですが、髪を切って一か月ほどが経った今、みんなの興味はすっかり秋田のスーパーに立てこもっている熊のニュースに移っているわけです。残ったのは競艇場にいそうな中国の富裕層であるところのおれです。このままだと人生の終着駅こと競艇場の隅の喫煙所で「おれが髪を切った理由」についてブツブツとうわごとを言うおじさんになってしまいます。解せねえ。一旦駅とかで空中に向かってキレておこうかな。そんな感じです。