マーケティングの差別化戦略とは?4業界の成功事例集【4社の差別化ポイントを分析】
こんにちは!
アイドマ・ホールディングスです。
現代のマーケットは成熟して、多くの商品やサービスがあふれかえっています。そのため企業が商材を競合他社以上に販売することは、差別化なくして不可能な時代です。
企業のマーケティングにおいて「差別化戦略」の重要度は極めて高いといえるでしょう。しかし、差別化戦略とひと言でいっても、それが難しくて皆が苦労しています。
差別化とは何をどうすることか、明快に説明できる人はなかなかいませんよね。
この記事では差別化戦略の基本についてわかりやすく解説し、その上でイメージしやすいように4つの業界での差別化成功事例を紹介します。
自社商材の差別化に取り組んでいるみなさんは、ぜひ参考にしてくださいね!
そもそも差別化戦略とは?
アメリカの経済学者マイケル・ポーターは、著作『競争優位の戦略』において3つの基本戦略を提唱しました。差別化戦略はその中のひとつとして、ビジネスの世界に浸透しています。
差別化戦略を理解するため、「競争優位の戦略」についてのアウトラインを紹介しましょう。
マイケル・ポーターの「競争優位の戦略」
彼が自著の中で提唱した競争優位の戦略とは、以下の3つです。
●コストリーダーシップ戦略
●差別化戦略
●集中戦略
それぞれについて、簡単に触れておきます。
【コストリーダーシップ戦略】
低価格品を幅広い購買層に大量に販売し、ひとつひとつの利益は少なくとも数を販売することで収益を上げる戦略です。
【差別化戦略】
この記事で取り上げる差別化戦略は、競合他社の商材が備えていない魅力を自社商材に持たせることで差をつけ、マーケット内での存在価値を高める戦略です。
同じ価格帯でも付加価値を添えることによって、選んでもらいやすくする戦略といえるでしょう。
また、高額であっても他所では手に入らないので欲しくなってしまうような、魅力ある商品を展開する「ブランド戦略」もそのひとつです。
コストリーダーシップ戦略も「低価格で差別化する戦略」ともいえます。しかし、競合同士が傷つけ合うレッドオーシャンになりがちで、資本力の戦いになるのですす。
そのため、低価格での差別化は中小企業向けの戦略とはいえません。
【集中戦略】
これは特定のユーザーや地域性などを絞り込んで、そこに集中してリソースを投下する戦略です。幅広い購買層は獲得できませんが、特定の分野や地域で大きいシェアを獲得できます。
中小企業がマーケットの中で生き残るためには、競合が真似できない卓越した独自性を強みとして収益を上げる、価格ではなく「魅力」にフォーカスした差別化戦略が有効です。
そしてその差別化戦略をより効果的に展開するために、集中戦略を併用するのが有効なアプローチと考えられます。
差別化戦略のメリットとデメリット
前項で触れたように、差別化を目指すのであれば価格以外で違いを出すことが企業の成長のために必要です。
その差別化戦略の実行には、メリットもあればデメリットもあります。主なメリットとデメリットを表にまとめておきますので、自社が差別化戦略を導入すべきかどうかの判断の参考にしてください。
差別化に欠かせない「USP」
自社商材の差別化を測る戦略を実行するためには、押さえておくべき3つの項目「USP」があります。
●U/Unique:独自性
●S/Selling:提供するもの
●P/Proposition:提案
USPとはユーザーに対して自社だけが提供できる価値を意味します。1960年代にアメリカのコピーライターであるロッサー・リーブルが提唱し、半世紀以上経過した今でも用いられている概念です。
ユーザーからしてもマーケットに氾濫している膨大な商材のなかからひとつを選ばなければならない場合に、USPが自分に適していれば迷う必要がなくなります。
社会や経済の情報化が進むにつれて商品やサービスの平均化が進む中で、USPを確立し維持することは大きな優位性です。
代表的な3つの差別化アプローチ
差別化戦略の基本的なアプローチとして、以下の3つの方法があります。
●商材そのもので差別化
●購入しやすさで差別化
●顧客対応で差別化
それぞれについて見ていきましょう。
【商材そのもので差別化】
商材そのもので差別化するのが、もっともストレートな方法です。
例えば以下のような典型的な差別化パターンがあります。
●同様の他社商材より利便性が高い
●同様の他社商材より汎用性が高い
●同様の他社商材より高品質である
●他社商材ではできないことができる
【購入しやすさで差別化】
同じような商品を購入するのなら、より簡単に手に入れやすい方がよいでしょう。近いショップの方がよいし、近くのショップよりはネットで買って自宅に届く方がさらによいはずです。
また、同じような料理を食べに行くなら、注文してから早く出てくる店の方が優位性はあります。注文して30分待たされる店よりも、10分以内に出される店の方がよいのです。
【顧客対応で差別化】
同じような商材を買うなら安心できるところの方がよく、返品できたり使い方の相談に乗ってもらえたりできるところで買う方がよいでしょう。
まったく同じものを同じ価格で買うなら、感じの良い店員から買う方がよいし、ヘアカットが同じ料金なら自分の好みを知ってくれている馴染みの店の方が好まれます。
高額の買い物ならリスクが大きいので、少々価格が高くても信頼できるところに任せたいものです。
洋服を買うなら、色合わせや着こなし、コーディネートの仕方、ファッションのトレンド知識などの有益な情報を提供してくれるところで買いたいでしょう。
PCを買うなら機種ごとの性能の違いが、実際に使う際にどう影響するのかを教えてくれるスタッフがいるところで買いたいですよね。
このように「商材そのもの」「購入しやすさ」「顧客対応」などから、自社商材の差別化が図れます。
マーケティングの差別化戦略成功事例
「ネット通販」「ITメーカー」「運輸」「外食」の4つの業界での差別化戦略の成功事例を挙げ、差別化ポイントを分析して紹介します。
ZOZOTOWN
ZOZOTOWN(ゾゾタウン)は大手のネットモールが躍進する中で、ファッションに特化したモールを展開するという差別化集中戦略で成功した企業です。
また、大手モールではできていなかった受託販売を組み込んだスキームを確立し、高い収益率を実現しています。
【ファッションに特化して棲み分け】
ZOZOTOWNは、既存のネットモールとの市場棲み分けを図りました。
Amazonや楽天市場、ヤフーショッピングが多種多様な商品を扱う総合ECモールであることに比べ、あくまでもファッションに特化し差別化しています。
【徹底的なユーザービリティの追及】
ZOZOTOWNのサイト自体は、ユーザーがより使いやすくなるようチューニングが日々繰り返されています。
ZOZOSUITSで全身のデータがわかることで、ネット通販の究極の課題である体型に合うかどうかわからない問題を解決できたのです。
同様にZOZOMATを使うことで、足の形に合う靴を見つけることができるようになりました。
【自社アプリを集客に活用】
ZOZOTOWNの自社アプリによる、見込み客の獲得ができています。「WEAR」は月間で1,000万人以上が利用するアプリです。
5億PVを稼ぎ1ユーザー当たり50ページを見ているほど、ファッション好きのユーザーから重宝されています。
Apple
アップルが世界的企業になれたのは、スティーブ・ジョブズが差別化戦略を徹底追及したからこそです。揺るぎないブランド力と唯一無二の存在感には、目を見張るものがあります。
【独自性の確立】
Apple製品といえばリンゴのマークが背面にあしらわれてボタンが少ない、もしくはボタンがないデザインなどのイメージを確立しています。
それらの商品をCEO自身がスマートなプレゼンで紹介するという、今でこそ多くの企業が真似るやり方はとても独自性が高いアプローチでした。
【ユニークなデザイン性】
デザインを見るだけでApple製品と認知できるデザイン性で差別化しました。Apple製品のデザインは、登場した当初は斬新さがもてはやされたものです。
シンプルかつスタイリッシュで、他にはないデザインとして多くのコアなファンを生みました。
【操作性の追及】
iPhoneは過去のモデルはボタンが1つで現行モデルはボタンがありませんが、これはデザインの問題だけではなく、それ以上に配慮されているのが操作性です。
シンプルな設計で感覚的に操作ができ、必要以上に迷わなくてよいところが魅力といえるでしょう。
ヤマト運輸
サービスを利益よりも優先して市場のニーズに懸命に応えてきたヤマト運輸は、宅配を手配すれば翌日には届くというスタンダードを確立しました。
業界課題である再配達の低減や、受け取り手段の多様化による顧客満足度も追求しています。
【小口配達の標準化を実現】
小口宅配は絶対赤字になると、企画段階では社内でも反対を受けていたビジネスモデルでした。
例えばB to Bであればメーカーから卸売業者や小売業者などのように、特定の発送元から特定の発送先に数をまとめて届けるため、収益率が確保できます。
一方、小口配達は異なるばらばらの発送元からそれぞれまたバラバラの発送先に宅配をするため、収益性が高いとはいえません。
しかし、サービスを優先して利益は後からであるという理念のもと、赤字先行でユーザーのニーズに向き合いそれを標準化して差別化を実現しました。
【クロネコメンバーズで利便性の向上】
再配達はドライバーに負担を掛けすぎるので、以前から問題となっていました。
現在はクロネコメンバーズを利用することで配達の予告通知が届き、配達の時間帯を受取人の都合に合わせた変更ができるようになっています。
発送先が受け取れば発送者に通知が来るなど、届かなかい場合の不安を払拭するサービスも好評です。
LINEとの連携で、クロネコメンバーズを利用していない層にも使える配慮がされています。
【クール宅急便で鮮度を維持】
冷蔵・冷凍商品の鮮度維持を目的とした配送方法がクール宅急便で、今や多くのユーザーに重宝されています。
冷凍商品を運ぶ際に発泡スチロールに入れて配送したところ腐っていたというクレームが、サービス開発のきっかけです。
この仕組みを作るために、冷蔵設備をはじめ巨額の投資が必要だったのですが、ここでもサービスを優先して取り組みを開始し、定着するに至りました。
【駅の宅配ロッカーやコンビニの活用】
自宅では受け取れないユーザーに対して、コンビニでの受取りや駅に設置した宅配便専用のロッカーを活用するサービスです。
ユーザーの利便性の向上とともに、再配達を減らす取り組みとしても機能しています。
同業他社にも宅配便専用ロッカーを提供できるように合併事業も手掛け、宅配業界全体で再配達の低減とユーザーの利便性を追及しています。
【翌日配達の推進】
従来の郵便小包では、5日間ほど掛けて荷物が届くのが普通でした。市場からの強いニーズである早く届くことを強みにしようと、全国に集配ネットワークを張り巡らせて実現したのです。
この差別化で郵便小包の遅さに不満を持つユーザーの満足を獲得し、運輸業界に宅急便事業を成長させる道を開きました。
モスバーガー
ハンバーガーチェーンといえば、多くの人がマクドナルドを思い浮かべるでしょう。そして2番目にモスバーガーの名前を挙げる人も多いのではないでしょうか?
モスバーガーはマクドナルドに対して、さまざまな面で「逆張り」を徹底する差別化戦略に成功し、その位置を築いたのです。
【あえて高価格路線で価格競争から脱出】
マクドナルドでは提供メニューの数が絞られているので、オペレーションコストが抑えられます。
また食材も同じものを大量に仕入れてコストを下げることが可能で、それを販売価格にも反映させているのです。
一方、高価格路線をとったモスバーガーはハンバーガー業界の価格競争に巻き込まれずに、独自路線を確立しました。
【多彩なメニューでニーズの多様化に対応】
モスバーガーはメニューが豊富なのでユーザーの多様な好みに応えられる強みを持っています。その分販売価格は高くなりますが、味へのこだわりも実現してファンを獲得しています。
【居心地よく長時間滞在できる店内】
マクドナルドは駅前や繁華街に立地しているので、高い回転率を想定した店舗デザインや店内レイアウトになっています。
モスバーガーはその真逆で、居心地のよい店づくりを心がけました。落ち着けるレイアウトや観葉植物で長居できる雰囲気を醸し出し、リピーターを生んだのです。
まとめ
差別化戦略の基本についてわかりやすく解説し、イメージしやすいように4つの業界でのマーケティングで差別化戦略に成功した事例を紹介しました。
「コストリーダーシップ戦略」「差別化戦略」「集中戦略」という3つの「競争優位の戦略」を理解し、自社にとっての差別化戦略のメリットとデメリットをよく検討しましょう。
その上で、USPや基本的な3つの差別化アプローチを基軸として、あなたの企業にふさわしい自社商材の差別化戦略に取り組んでくださいね。