山ヒルには参った
※ヒルの苦手な方はご注意ください!!
鈴鹿の山の雪が溶け山に生気が戻ってくると、待ちかねたように山ヒルも活発に動く。
私の体験では4月下旬から11月上旬まで、気温25度以上で湿度60パーセント以上、風のない蒸し暑い日は、確実に私たち獲物を待っていた。私が若いころは霊仙、御池、藤原岳や入道ケ岳、雲母峰など、石灰岩など古成層の地質に限られた。それも稜線の向こう近江側だけだった。
釈迦ケ岳や御在所岳、鎌ケ岳などの花崗岩の山では安心して歩けた。
ところがだんだんと領域を広げ、昨今はどこもかしこも山ヒルだらけになった。先日も久しぶりに朝明渓谷の伊勢谷小屋に寄ってみると、オーナーの美人奥様がこぼした。
「今年の夏にそこの水際で孫を遊ばせていたら、山ヒルに吸いつかれました。小屋を開いて50年以上ですが、こんなことは初めてですよ」
そう言われると思いあたる。風越峠への東海自然歩道沿いにある井戸谷、この谷には途中に数本の美しい滝があり、エスケープルートも歩道がある。沢登り入門コースとして人気が高い。
ある日岳友と谷の遡行を終え、谷の入口にある温泉に入ったところ、
「キャアーッ!」
ほかの浴客のパニック声、原因は私たちだった。白い下着に真っ赤な血がべっとり、そしてまだ数匹が喰いついているではないか…。それをプチュと潰すとまた大量な血だ。浴客はそれをみてまた大声で騒ぐ。もう温泉どころではなく早々に引き上げた。
井戸谷は花崗岩なのでヒルは全く想定外だった。いつの間にヒルの山になったのか。何が原因だろうか。専門に研究している学者を知らないので、はっきりしたことは不明だが、地元の人たちは
「シカが増えたのが原因だ。彼らが身体にくっつけて連れてきた」
納得できる話だ。するとシカの増えた原因が本当の原因なのか…。シカは本来は標高の低い里山に住んでいたはず。それが森の開発で餌や住居を奪われ、だんだんと高い山に移る。本来食べなかったササなども片っ端から口にする。彼らは家族単位で行動し、カモシカなどを追い出して猛烈に繁殖する。秋に生まれた子供も寒い冬が越せずに死ぬ数も多かった。だから自然淘汰されて一定の数しか生息できなかった。それが地球温暖化で冬も暖冬の連続、山にも雪が積もらないし餌は冬でもある。シカが増えるのは当然である。それじゃ山ヒルに吸われるのも人間の仕業だったのか…。実にウンザリしてしまう。
山ヒル予防に何がいいのか。昔、時山で出会った行商人は、素足にワラゾウリを履いただけだった。彼は
「ヒルが吸いついたとき引きちぎるだけだ」
こともなげに言ったが私は出来そうもない。また林野庁の人は「細長い袋に塩を入れ、ズボンの裾まわりにぶら下げる」
「タオルを縦半分に裂き、それに塩分の濃い水を染み込ませ、足首に巻く」
詳しく聞くうちに、どうも絶対的な効果はないらしいと判った。
登山者も困った問題なので、あれこれ対策されているが、京都の岳人は
「女性のパンテイストッキングを一番下に着ている」
目が細かいから奴らは通過できず有効だろう。だがあの蒸し暑い鈴鹿の夏、これをつけて山を歩くことは、熱中病であの世行き直行ものだ。
あとはクスリしかない。市販では登山用具店でA社、B社の製品があるが、普通の殺虫剤スプレーでも忌避効果はある。だが沢登りや雨の日はほとんど効果がない。こんな日に役たたずでは困る。
思い悩んでいたところ、TVで耳よりな情報を流していた。四日市のメーカーが万能ともいうべき山ヒル忌避薬を発売したとのこと。実際に山で出会った人も抜群の効果だと、ひと吹きシュと吹いてくれた。たしかに効果はあったと思うが、私はまだ購入してないので推奨できないけど、関心ある方は
「ヒル下がりのジョニー」で調べてみてください。