相棒3 第12話「予告殺人」感想
浅倉禄郎、小暮ひとみ、北一幸、ぷぴゃお、南井十、遠峰小夜子…
『相棒』には様々なサイコパスがいる。
今回のキングチャイルドは彼等の陰に隠れがちだが、彼等とタメを張れるくらいヤバい。
どれくらいヤバいかというと右京さんが死刑判決を出すレベル。
【あらすじ】
予告殺人事件が続発。
犯人からの3度目の連絡で何故か美和子が交渉人に指名される。
犯人は「次は”サイトウアイ”を殺害する」と予告するが実際には女子大生の佐藤愛が襲われる。
亀山は一命をとりとめた愛を訪問。
愛は過去に姉がストーカー事件の犠牲者となったときに真剣に捜査してくれなかった事で、警察に不信感を抱いていた。
脚本:砂本量
監督:和泉聖治
【ゲスト】
今回の犯人
奥さんと離婚した事で狂ってしまったタクシー運転手。
2名を殺し警察を挑発し続ける狡猾な犯人。
演者の榊さんは以降も2度『相棒』に別役再出演したり映画やドラマの監督までやっていた。
しかし出演の見返りと女性演者に性的関係を強要していた事が発覚し逮捕され、現在収監中。
作品や演技は良いだけに残念。
今回の被害者
警察に相手にされなかった結果、ストーカー殺人で姉を失い自身も今回標的にされてしまう悲惨な人。
一戸さんは現在芸名を一戸奈美としており、多分2019年を最後にドラマ出演はされていない。
不確定だけどネイリストやってるっぽい。
【感想】
《子供の王様》
今回はヒリつくようなサスペンスと、犯罪被害者の救済という『相棒』らしいテーマが見事にかち合った名作となっている。
まずサスペンスの場面が超面白い。
イトウヨウコとヤマモトヒロミの2名を予告した上で殺害。
そこで警察から交渉相手を美和子に切り替え、サイトウアイを殺すと予告。
しかし実際に被害に遭ったのはノーマークの佐藤愛。
名前を聞き間違えたと美和子の名誉を傷付け、腹が立った相手を殺して、警察まで侮辱して…まさにやりたい放題。
警察も被害者候補を守る為に神経を注いでいるので、裏をかかれっぱなしなのも緊張感や攻防戦感があって好き。
身元が割れそうなのを察知すると無線とGPSを切り車を乗り捨て、別のタクシーで客を装い検問を突破する知能も良い。
また事前に佐藤愛の病院を調べて警官の制服まで用意する周到さ。
ぶっちゃけ浅倉よりも頭が良さそう。
そんな秋山が狂ったのは奥さんと別れたからというしょうもない理由。
どうせ奥さんに暴力を振るい逃げられたとかそんな気もしている。
秋山に関しての説明はそれだけで、実は可哀想みたいな話もない。
内容的に後述する犯罪被害者の悲しみと再起を描く為にも、秋山の掘り下げはノイズになるので仕方ない。
まぁ現実の連続殺人犯も深い悲しみから犯行をするのではなく、元からヤベー奴が何かのキッカケで犯行を開始するので、そういう意味ではリアリティがある。
社会なり家族なり職場友人でもなんでも、自分に対して嫌な事をされたから殺すって偉ぶった子供のような犯罪者が本当に増えてきている。
キングチャイルドとはよく言ったもんだよ。
強いて言うなら秋山を見逃した警察官が無能。
寝ていたとしても何時から仮眠をしてるかの確認や、何か聞いたりしてる可能性もあるから身元くらいは確認すべきよ。
ただ擁護すると、連続殺人犯が近くで逃げてる中で平常心で仕事なんて出来ないし、まさか現場近くで寝たフリしてるなんて想像しないので秋山の作戦勝ちでもあるかもしれない。
《勇気》
今回のテーマは"被害者の再起"
愛さんは姉をストーカーに殺され塞ぎ込んでしまった。
追い討ちをかけるように自身も秋山に殺されかけてしまう。
そんな彼女は"みんな自分と同じ様に怖がれば良い"と歪み人を信じる心を失った。
実際に愛さんと姉は犯罪被害で怖い以上の思いをし、更に警察も役に立たなかった恨みもある。
でも彼女を苦しめていた本質は、警察や世間への恨みではなく、姉を救えなかった自責の念であった。
そんな愛さんが亀山君のお陰で警察を信じられる様になり、また人を助ける勇気を出した事で、過去を乗り越えたのは熱い。
最後のスピーチでは亀山への感謝と自分の考えの変化などを短くも胸打つ内容でまとめており、また伊丹と芹沢も参加して警察全体も被害者の為に前向きに変わってる感も素晴らしい。
しかし腹が立つのは犯罪被害者相談員の堀の存在。
愛さんにPDSDを起こさせそうなレベルで過去の事件の話をし、亀山君にも怒りをぶつける最悪なスタート。(遅刻した亀山君も悪いが…
それ以降も愛さんは何も言ってないのに警察への協力を勝手に拒否するし、怒鳴ったり叫んだりと非常に鬱陶しい。
愛さんに寄り添うのは良いんだが、連続殺人を止めようとしてるのに協力しないって、コイツ本当は相談者を増やす為に捜査妨害をしてるんじゃ無いかと邪推までしてしまう。
しかも愛さんが事件に巻き込まれたのも、コイツが無理に外に連れ出そうとしたからなので少しは責任を感じるべき。
ミスリード要員なのは分かるが流石に悪辣が過ぎる。
《今回のMVP》
愛さんの心を開かせた亀山君がMVP。
彼女に協力させた事で、犯人の身体的特徴と白い手袋という情報を引っ張り、そこから右京が推理きて見事に秋山に辿り着いた。
またそこに至るまでに被害者の会に自発的に足を運び、愛さんが事件に巻き込まれたと知れば花を送って足繁く通い、警察署へ連れて行き恐怖に怯える人達を見せて彼女を動かした。
この一生懸命で真っ直ぐに熱いのが亀山君の良さだと強く思う。
また美和子に優しいのも良い。
個人的にはあんな女に優しくする必要はないと思うが、手痛く裏切り振った元カノでもまだ愛が残ってしまう人間臭さ。
特に今回美和子は連続殺人犯から電話担当に指名され、心身共に疲弊していたのでジャケットをかけてあげたり睡眠を推奨してあげたりと優しい。
寧ろこんなに美和子が追い詰められてるのに現れない鹿手袋の株が落ちまくる。
次点は田中姉妹
こちらをMVPにしようかギリギリまで悩んだ。
妹を必死で守ろうとする姉という構図は美しいし、素直にビジュが良い。
この2人が最後に愛さんに踏み出す勇気を与えてくれた功績は大きい。
でも流石に亀山君には勝てないので次点止まり。
【小ネタ&雑感】
•果たして美和子は優秀なのか
•美和子が大型事件に巻き込まれるのは初かも
•課長まで応援で呼ばれたのか
•「誘拐協奏曲」ぶりに田嶋さんおるやん!
•伊丹「特亀!」
•芹沢「いい加減にしんさいや!」←島根弁が光ってる!
・伊丹「亀らしく手足を引っ込めてろ!」
•胸をぶつけ合うな亀山&伊丹笑笑
•今後もたまに出てくる王子キャブ
•そういえば三浦さんいないな
•田中さんもドアチェーンくらいかけろ
•亀山くんは割と弱い
相談員、秋山にこそキレるべきだろ
•些細な事を逆恨みして罪の無い人を殺す人が増えている(本当にそれ
•ちゃんと参加する伊丹と芹沢良き
•この頃は近藤さんは助監督なのか
【次回】
相棒season3 第13話「警官殺し」感想