相棒3 第14話「薔薇と口紅」感想
最も印象的に残ってる伊丹による亀山呼称。
でもこの話だったという事は完全に忘却の彼方だった…。
風呂場で大立ち回りをしたり、S21「逃亡者 亀山薫」でもあった犯人の顔を水につけるのは、殺陣師である二家本さんの考案か同じ橋本監督だからか分からないが亀山薫が18年経ってもブレてないのが分かって良き良きの良き。
また今回は岩下さんの『相棒』初脚本。
現在も『相棒』を描き続けている数少ない方で情緒的で優しくも厳しい世界感を描くのを得意とされているイメージがある。
まぁ正直微妙ではあったんだけどね。
【あらすじ】
ファンデーションと口紅を顔につけた男の溺死体が発見された。
右京は遺体発見現場が河口にもかかわらず被害者の肺から海水が検出されないのが気になる。
また、遺体の上着には、お嬢様学校で知られる聖ジュリア女学院の生徒手帳の紙片があり、そこには「口紅三本、ファンデーション四箱」との文字が。
亀山と女学院を訪れた右京は演劇部の使う舞台メーク用の化粧品が被害者の使った化粧品と同じ物だと知る。さらに、手帳を破られたのが演劇部部長の久美子だと判明する。
脚本:岩下悠子
監督:橋本一
【ゲスト】
今回の犯人①
家族が残した学園や薔薇園を守ろうと必死な校長先生。
涼風さんといえば『るろうに剣心』の旧アニメでも剣心の声優をされていたのが印象的。
今回の犯人②
JK薬物売人というとんでもない役柄。
水谷さんは2014年以降は芸能活動をしていないっぽいので残念。
【感想】
《正義と慈愛》
聖ジュリア女学院の校訓が泣いてる。
生徒である久美子は学費を稼ぐ為に学校内で薬物の売人になるし、龍ヶ崎校長は売人の件で脅してくる半グレ(?)を殺してしまうし正義も慈愛もあったもんじゃない。
ただ久美子は学校に通い続ける為に、売人として薬物を同級生に売り捌く悪人だった。
辞めようとしていたが、理由は良心の呵責ではなくお金が貯まったからという救いようの無いもの。
またイジメを受けてる事を考えるとそもそも学校に拘る理由が見えない。
おまけにストレスでタバコもやり始めるしでマジでやりたい放題過ぎる。
強いて擁護できるとしたら責められたら反論したくなる勝ち気な性格というのは特命係の騙し討ちで判明しているので、本当は素直になれない良い子という可能性も拭いきれない所。
売人に嫌気がさしていたり、演劇部が好きで学校を辞められなかったり、龍ヶ崎にお金の事を相談できなかったりと思春期らしさで乗り切れる点も一部はある。
いや、部員に覚醒剤を騙して買わせてるんだしやっぱ擁護できんな。
とりあえず親は何やってるんだ。
問題は龍ヶ崎校長。
私見としては、龍ヶ崎が愛していたのは生徒でも学園でもなく、一族が守ってきた学校を守っている自分自身という印象が強い。
殺人は薔薇を傷付けられ咄嗟に殺してしまった形ではあるが、そもそも警察に相談せずに江川と会ったのは生徒である久美子を守ろうとしたのではなく学園の評判を落とさない為に解決を図るのが理由だった。
自分の手を離れるなら薔薇を殺してしまおうとした事も考えると、本当に救いようが無い。
久美子の件も龍ヶ崎のお気に入り生徒みたいだし、彼女としっかり向き合えていたら彼女の異変を察知して直接的で無くとも大人として彼女が支援する事もできた。
教育者としても人間としても落第としか言えない。
ただJK薬物売人というシナリオは意外性があってかなり好き。
小学生殺人犯が過去にあったが、JK殺人犯の記憶は無かったので久美子が犯人だと自供した時は驚いたしハラハラした。
また化粧をした死体というのもふざけているようで薬物の隠語を隠す為という理由もあり納得感が強い。
そして特命係に追及される久美子の逃げ方と、協力のフリをしながら核心的な部分は誤魔化す龍ヶ崎の立ち回りも面白い。
おまけにサブタイトルの「薔薇と口紅」も実は「学校と薬物」と言い換える事も出来る救いようの無さも評価できる。
しかし学内での薬物売買をやるなら売る側である久美子だけで無く、買った側の生徒もメインにすべきだったと思う。
龍ヶ崎の自己愛に近い学園愛を押し付けられるよりも、表向きは名門学園として名が通っている学校で生徒は何に苦しみ何がキッカケで薬物に走ってしまったのかを描いて欲しかった。
そこに売人側の久美子の苦悩ものっかり、生徒達の為に殺人に手を染めた龍ヶ崎がいたら物語として更に面白くなっていた可能性が高い。
作中だと騙して買わせてたっぽいので、他の生徒が悪人でなさそうなのが強いて言えば救いになるのかね…。
あとは全体的に雑で描写不足感が強い。
久美子の本心もだが、何で死体遺棄現場に久美子は居合わせてるんだよ!!
冒頭のシーンで久美子が走ってるけど、殺人現場を見たならバレないようにゆっくり追うはず。
また江川が急に薔薇を荒らし出すのもバックボーンが無いので意味が分からない。
作劇的に殺す為に殺される行動をしたようにしか考えられない。
また随所に"リチャード3世"や"テンペスト"のセリフが出てくるが、引用するならどんな物語なのかだけでも解説してほしい。
《今回のMVP》
右京に推理のヒントを与えた功績もあるが、練習熱心な演劇部員が間違いなくMVP
実は私も高校大学の7年間は演劇部に所属しており演者兼演出としても活動していたので、思い入れも強い。
そんな私から言わせてもらうと
2ヶ月間練習してたのに急遽作品を変更すな!
2ヶ月あれば台本の流れを覚え台詞や動きもある程度は形になってくる。
それを校長のエゴで変えるってヤバい。
しかも部長の久美子は薬物売人をやるわ殺人死体遺棄を目撃して精神的に追い詰められてるって中で一般部員達は良くやったと思う…。
更に集会所(?)を使えず、秋の決して温かいとは言えない夕方に外で練習してる涙ぐましさ…。
こっから顧問と部長が逮捕されて公演中止になる事を考えると涙が出てくる。
最後に部長に騙されて覚醒剤を買わされるっていうおまけ付き。
演劇部員よ、強く生きて…
【小ネタ&雑感】
•滑りやすい浴室内で戦うな
•水に犯人の顔をつけたりするのはS21「逃亡者亀山薫」でもあったね
•米沢さんに"落語名人集"を貸す右京さん
•「巌流島」って落語があるのか
•米沢「男の"くせに"化粧してるんですよ」(20年前だなぁ
•その道の人=ヒロコママ
•後に創設者の本を読んでたからとは分かるが、聖ジュリア女学院の校章を一目で分かる右京さんはちょっとキモい
•イギリスにいた頃に薔薇の魅力に取り憑かれた(嘘っぽい
•急に学生に警察手帳見せるの怖過ぎるぞ亀山君
•タバコを回収しろ亀山君
•嗅覚も後に覚醒する亀山君としては花の匂いがしんどかったのかもしれない
•漢方薬風呂で課長の肌がテカってる
•創立記念日の劇が最大行事って何か嫌だ
•リチャード3ではなくリチャード3世
•女子校のイジメは陰湿なイメージがある(男子のイジメもクソだけど
•またウザ美和子に戻っちまった…
•聖ジュリアに憧れてたって言うたまきさんは学生時代に後輩達から憧れられてた
•バリブル(バリバリにブルーな気分)の死語感凄いけど、カイト君ならスグに分かりそう
•特命係と久美子の長回しカットええね
•江川の演者が近藤公園さんと知って驚く
【次回】
相棒season3 第15話「殺しのピアノ」
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