相棒2 第21話「私刑」感想
Season2最終回!!
振り返りはまた総括記事を作るけど、全体を通してめっちゃ面白かった!!
最終回は"浅倉禄郎 最終章"
表向きは敏腕検事で亀山薫の親友、裏では稀代の殺人鬼として娼婦を殺しまわっていた。
特命係に逮捕されて死刑判決を受けるも、脱獄し海へ身投げした。
しかしそんな浅倉が記憶喪失とはいえ生きていた。
このスタートだけでもメチャクチャワクワクする。
浅倉は何を語るのか、亀山は何を思うのか、メンツを潰された組織はどう動くのか…
面白い要素しかない!
【あらすじ】
脱獄中の死刑囚・浅倉が捕まった。
面会に訪れた亀山は、法務省の刑事課長・永井から浅倉が記憶をなくしていると聞き愕然。
精神科医の治療も効果はなく、右京の案で催眠療法が施されることに。
そんな矢先、永井から浅倉が拘置所で自殺したと連絡が入る。
大学時代の友人でもある浅倉の死に亀山が同情する一方、右京は死因に疑いを。
すると、葬儀の際、捜査一課の伊丹が、浅倉の死になんらかの隠ぺい工作の疑いがあると助言。
思い起こした亀山は、拘置所で起きた出来事に探りを入れる。
脚本:輿水泰弘
監督:和泉聖治
【ゲスト】
今回の被害者
生きて登場するのはこれで最後。
最後まで記憶喪失だったのは残念。
今回の犯人こと検察庁の妖怪
最高検察庁次長検事
まさに怪演…津川さんとの妖怪同士の戦いを彷彿とさせる舌戦は見応えしかない。
2006年に亡くなり本作は2004年の作品なので晩年の成熟した演技は凄過ぎる。
法務大臣ことクソ坊主
今後の『相棒』シリーズにおいての重要人物。
津川さんは説明不要の大俳優で『独眼竜政宗』の徳川家康をやっていたのも印象深い。
2018年鬼籍に入られたのが残念過ぎる…。
法務省刑事局刑事課長
個人的に再登場して欲しい登場人物上位。
皆川に野心を語る部分の色気が凄まじい。
S1「特命係最後の事件」以来の再登場
元々はS1「虚飾の城」で警視庁にダイナマイトを持って籠城し逮捕された結構ヤバい人。
これが最後の登場だけど今は何してるんだろなぁ。
【感想】
《友達》
亀山薫、良い男だよアンタ…
いつも亀山君はカッコいいが、今回は特にカッコいい。
生存を知れば急ぎ駆け付け、浅倉の記憶を取り戻す為に奔走し、自殺したと知れば憤り、悲しむ美和子の手を握り、遺体を引き取り火葬までし、殺人の真相を探り、犯人に激昂し、手向の酒を贈る。
徹頭徹尾浅倉禄郎の親友として動き続けた。
印象的なのは、自分との楽しかった記憶だけは取り戻して欲しいと語る場面。
美和子と3人で楽しかった事だけでも思い出してくれれば、亀山は救われていた。
たとえ状況は何も変わらなかったとしても…。
また最後に手向けの酒を贈る時もしっかり花を添え、でも天国とは決して言わない潔さ。
罪を憎んで人を憎まずというが、それでも地獄に堕ちるとは思ってるし、でも親友なのは変わらないのが良い。
まぁ弔いにきた伊丹をいきなりブン殴るのは流石にどうかと思う。
因みに当時は伊丹の無神経さに腹が立ったが、今は弔いに現れる心構えに好感が持てるようになり、『相棒』の見方が変わったと実感した。
また美和子も浅倉の為に涙を流し、でも友達として記者としてやるべき事を見付けているのがカッコいい。
悲しいのは記憶を取り戻した浅倉が生きて刑の執行を待とうと思わなかった事。
それより前に殺されたんだろという意見も出ると思うが、浅倉なら中津に殺されかけた時に返り討ちに出来たはず。
じゃあ何故大人しく殺されたかと言えば、"人間の心を取り戻してしまったから"と考える。
•殺人鬼の浅倉禄郎
•記憶を失い人間の心を取り戻した浅倉禄郎
この2つが合体して人間の心を取り戻した殺人鬼の浅倉禄郎が爆誕した。
だからこそ自身がした事を悔いて大人しく殺される道を選んだ。
残念なのは浅倉を殺した中津も自殺し、彼の最期が不透明になってしまった事。
特命係の追求&皆川に梯子を外されたのが原因とは言え、逮捕され死刑を恐れてた人間が自殺するってのが分からない。
というか中津も看守達に浅倉を殺されそうになってたのを止めたりと意味不明なムーブをかましている。
あのまま看守達に殺させた方が斉藤殺しを完全に隠蔽できた。
自分が主任の時に責任問題になるのが嫌なのかもしれないが、殺人がバレる方が絶対にリスクが高い。
《母親》
死刑囚の浅倉が渋谷で記憶喪失として発見される。
皆川次長検事は愛弟子だった浅倉を憐れみ、早く刑を執行させてあげようと瀬戸内法務大臣へ直訴。
しかし瀬戸内は許可を出さない。
そこで皆川は斉藤刑務官殺しをネタに中津主任を脅し、浅倉を殺害させた。
S7「ノアの方舟」の姉川や若い頃の冠城も奔走してそう。
この話で面白いのは"政府側が特定の死刑囚に対して執行を早めようとするのは殺意"という解釈だ。
死刑という刑罰に私情が入ると殺人になってしまう法と人間だからこそ起こるドラマとして濃密。
検察や法務大臣や政府官邸など組織が絡むので複雑な要素が多いが、要は死刑に携わる役人の中に遺族や怨恨者がいたら刑罰じゃないだろって話。
それを踏まえると「私刑」ってサブタイトルが最高過ぎる。
そして「私刑」に走ったのが検察庁No.2である皆川というのが秀逸。
どんな偉く立派な法の番人であっても私情には勝てないという事に堪らなく人間の業を感じてしまう。
まず浅倉は市村麻衣子を除き、売春婦以外は殺していない。
そして市村麻衣子を殺した後は憔悴しきっていた。
きっと最後に漏れた"ありがとう"は娼婦殺しの為なら関係ない人の殺人すら行えるようになった自分を止めてくれた感謝の気持ちもあるのだと思う。
実際市村麻衣子だけじゃなく現場を見られた亀山にも凶器を振りかざしてたからね…。
そして娼婦殺し以外は自身の行動も含めて決して肯定しないであろう彼が、脱獄の為とはいえ娼婦ではない斉藤を殺す訳がない。
だから皆川が違和感を覚え中津まで辿り着いたのも納得感がある。
そして皆川は浅倉を可愛がっていた。
生意気な所も歯向かってくる所も含めて浅倉を育てたいと心底思っていた。
でも蓋を開けたら稀代の連続殺人鬼。
そこで期待を裏切られた怒り、メンツを潰された憎しみ…これらよりも憐憫の情が勝った。
愛弟子と表現はしているが、右京の例え通り皆川は浅倉を息子の様に思っていた様にも感じる。
皆川は生き恥を晒し続ける浅倉を見るのがツラい、浅倉はそもそも自殺をする程に死にたがっていた。
また獄中で浅倉は狂い始めてもいた。
だから皆川は介錯に近い思いを持っていた可能性が高い。
実行犯は中津だが、間違いなく皆川が浅倉を殺した。
今回の物語で"浅倉は母親の為に殺人をしている"と考察が補強された。
浅倉は母親を殺せてしまった罪悪感で
「娼婦の母さんが死んだのだから、母さんと同じ娼婦は全員も死ななきゃいけない」という強迫観念を持ち連続殺人に走ってしまった。
だから浅倉は記憶を失っても最初のトラウマである母殺しの記憶だけは残った。
でも記憶の中には憎悪だけでなく母親への愛情もあった。
だからこそ実感の無い連続殺人ではなく、母親殺しには涙を流せたんだと思う。
きっと記憶を失った状態こそが歪まずに生きられた本当の浅倉禄郎なんだろうな…。
でもそんな浅倉が検事としての母である皆川に殺されるという事に強い因果を感じる。
母殺しで狂った男が母により引導を渡される…。
誰よりも母を憎み、誰よりも母を愛したが故に、理不尽に命を奪ってきた男が理不尽に命を奪われる…。
浅倉禄郎という人間の最期としてこれ以上のものはない。
ただ残念なのは皆川と浅倉が揃うシーンが無かった事。
皆川が浅倉を愛していたという台詞はあるが、浅倉が皆川について言及した場面は無かった。
可能ならS2「特命係復活」で自殺間際に皆川を思い出したり、殺される寸前は記憶が戻っているので最期に皆川の事を考えるでも良かった。
ただ浅倉にとって重要なのは実母であり皆川は母親には成り得ず一方通行の想いだったと解釈すると少し切ない。
《今回のMVP》
苦労人の永井さんがMVP。
処分されないギリギリのラインで特命係に協力しつつ、皆川の要求にも全て応え、最後は出世欲も出す強さという八面六臂の大活躍。
ようやく皆川の弱みを掴んで出世街道に乗ったと思ったら、その所為で皆川は勘違いして特命係に犯行を自白して後ろ盾として機能しなくなるのが虚しい。
どれだけ頑張っても脅迫で出世するのはダメという教訓かもね。
逆に落第点は瀬戸内米蔵。
瀬戸内がつまらない宗派に囚われた結果、皆川は殺人教唆をするハメになって中津は殺人をせざるを得ない状況となった。
命を大事にするのは立派だが、自分の主義主張を曲げなかった結果2人の命が殺人によって失われた。
あまりにも法務大臣に向いてなさすぎる。
官邸に物申す前に仕事をしてくれって話。
そりゃ冠城も苦言を言いたくもなるよな。
【小ネタ&雑感】
•渋谷に浅倉がいたとか怖い
•「白い罠」の工藤刑務官来てくれ!!
斉藤主任を殺した浅倉
•ご機嫌ななめでゴミ箱に当たる亀山君(ちゃんと片付ける
•亀山君の進言を聞いた法務省
•岸田今日子と津川雅彦の芝居が凄い
•何故火葬場にたまきさんいるんだ
•亀山に絶対服従の美和子(右京もビックリ
•上出来を越えて完璧な亀山(右京ベタ褒め
•裁判制度を体験しようとすな田端
•最終回だけど芹沢出ない
•皆川は法務省No.2って触れ込みだけど事務次官とどっちが偉いの?(日下部さんを思い出す
•この頃の官房長官って朱雀だよね!?
•右京「想像逞しい訳ではない」(警視庁の妄想モンスター
•右京さんいつもの騙し討ち
•騙されて白状したし騙して白状させたろ…
•官房長との飯は断るくせに飯行くな笑
【次回】
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