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相棒3 第8話「誘拐協奏曲」感想

『相棒』でも屈指のネタ回

高校時代に初めてこの回を見た時はつまらない駄作だと思っていたが、今回改めて見ると記憶よりは全然悪くなかった。

全員奇行に走った終盤が印象に残りすぎたんだと思う…。

S2「同時多発誘拐」から田嶋栄一郎まさかの再登場…!!

【あらすじ】

右京亀山は著作権法違反の捜査のため、通信販売会社「ネクスト」を訪れていた。
そんな中、7年前に失踪した前田元社長を誘拐したと何者かが会社に電話してくる。
犯人は身代金として5億円を要求。
現社長の今井は単なるいたずらと言い張るが、前田の妻・房江は、夫の命を第一に考えてほしいと訴える。
亀山らが金を用意する中、犯人は、その金を海に捨てろと指示。
そんな不審な言動に右京は、犯人の狙いは営利目的ではなく会社をつぶすことだと推察する。

脚本:櫻井武晴
監督:猪崎宣昭

【ゲスト】

今井進一(演:尾藤イサオさん)

今回の犯人①
過失致死で前社長を死なせてしまい、その後自分が社長となった男。
演者の尾藤さんは40代後半かと思ったら当時60歳前後。
めっちゃ若く見える。

前田房江(演:深浦加奈子さん)

今回の犯人②
旦那が失踪し、作り上げた会社を部下達に奪われて全部チャラにしようとした人。
かなりヒステリックだがホームレスへのボランティアなど根は善人だとは思う。
演者の深浦さんは2008年に癌で早逝させているとの事。
合掌。

本間実男(演:河西健司さん)

裏切り専務
前社長のスキャンダルを告発して自ら社長になろうとした腹黒。
演者の河西さんは以降『相棒』に別役で2度再出演している。

井勢谷隆(演:浅野和之さん)

パニック症候群常務
常務ってプレッシャーかかる機会も多そうだし仕事が回るか心配になる。
というか『鎌倉殿の13人』で伊藤裕親役やってたって嘘やろ!?

野呂啓介(演:徳井優さん)

ある意味今回の被害者
前職でリストラされて拾ってもらった恩義を返そうと一生懸命働いた結果、内側のゴタゴタで会社はボロボロになり同情を禁じ得ない。
演者の徳井さんは以降『相棒』に別役で2度再出演している。

【感想】

《コントかな》

房江は7年前に前社長かつ夫である勇一郎の失踪により、部下達に会社を乗っ取られる。
彼女は会社を潰そうと、夫に声が似ているホームレスを使い狂言誘拐を仕組む。
社長の今井は勇一郎を殺害していたので、生存に恐怖して自ら遺体を掘り起こし、特命係に逮捕される。

演出がずっと演劇チックで、終盤はコントという異色作。
今回監督である猪崎さんは、この1作しか『相棒』では担当していない。
そんな猪崎さんの演出はかなり特異で特に下記2点の
•特命係とゲスト併せて7名以上が基本的に同じ画面に映る
•場面転換も1回しか行われず、その大半を社長室で物語が展開する

これが凄すぎる。
もっと言えば脚本の関係もあると思うが、同じ場面での会話劇が30分以上という見栄えさせるのが難しい中でワンカット長回しによる緊張感や役者の演技で魅せているのに感嘆。
しかしデカ過ぎる勇一郎の肖像画や広過ぎる社長室によって若干のコント感が出てしまうのに笑ってしまっう。

『相棒』史上1位の珍シーン

•穴底で争い始める社員トリオ
•勇一郎の肖像画を持ってくる亀山
•勇一郎の頭蓋骨を投げ捨てる本間
•勇一郎の肖像画に泥を投げつけるゲスト達
•紅茶を持ってくる野呂
•紅茶飲んで発作が起きる井瀬谷
•勇一郎の頭蓋骨に紅茶をかける右京

こんなの小ネタ&雑感でも拾いきれない…
視聴時も
「俺は何を見せられてるんだ…」となった。

笑いは好きだけど、個人的にはここまでシリアスに過度なシュール笑いを連発されるとリアリティが無くなって冷めた目で見てしまう。

それを踏まえると、今回のゲスト達にあまり感情移入ができない要因は"感情移入ができない"事。
房江以外の全員が"言葉とは裏腹にこう思っている"みたいな考察要素が無い。
だから薄っぺらく見えてしまうし、最後の本音をぶちまける泥団子シーンも白けてしまう。

今井なら殺してしまった罪悪感やでも社長になれた喜び。
本間なら社長を裏切った後悔やでも出世したい衝動。
井瀬谷なら今井の秘密を知った恐怖と出世できた感謝。
こんな感じで矛盾する二面性は出せたと思う。
そんな中で房江だけは、愛人を作られた怒りとそれでも勇一郎を諦めきれない乾く寸前の愛情が演技で伝わってきた。

難しい事を言ってるかもしれないが『相棒』が好き故に高いレベルを求めるからこその苦言と思い許して欲しい。(我ながら老害感あるな…

とはいえ、社長室での会話劇はかなり見応えがある。

また事件の真相は結局誰も勇一郎の安否なんて心配してなかったというオチも面白い。
実際に彼が死んだ原因も、愛人の佐々原との関係を本間に告白されそうになり今井がそれを握り潰し勇一郎に愛人関係の解消を迫って断られ、その口論の弾みで死んでしまったという話。
通販会社は女性から嫌われたら死活問題という中で、どんだけ下半身で生きてるねんとは正直言いたくなるし今井にも同情してしまう。
また、今井を"ちゃん"付けで呼んでいたり、剛腕だがフレンドリーな昔ながらの社長なんだろうなって事は想像が付くので悪人では無いのも高評価。
ただ社員の生活を守ろうという意味で勇一郎には社長の自覚が無さ過ぎた

そういった意味では今井は社長としての身辺整理はキッチリやってたし、遺体を埋めた森林開発も随時チェックして自身と会社を守ろうとしてたから意識は高いと思う。
実際会社の業績は上がったみたいだしね。

そんな訳で今井を除いた他の人も、本間は次期社長になれると喜び、井瀬谷は出世しか考えてないし、房江も不倫していた旦那が憎かった。
本気で心配してたのは筆頭株主である佐々原の会社役員くらい(しかも登場はしていない)という悲惨さ。
不倫野郎でも死体を見て誰も悲しんでないのは少々可哀想ではある。

なお、勇一郎を演じた渡辺さんは今回以外でもS2「殺人晩餐会」でも死んで、S15「ラストワーク」でも死んでと計3回死ぬ模様。

《今回のMVP》

ホームレス

彼の声が勇一郎に似てなかったら狂言誘拐も今井による殺人発覚もしてなかった。

でも何故彼が房江に協力したのかは正直謎。
金に目が眩んだとかはありそうだが、それだけでリスクの高い狂言誘拐まで手伝うかね…。
しかも一箇所にずっといて監視し続けるとかリスクしか感じない…。
結局身元も住所も不明なので、房江から金を貰って逃げた可能性が高い。

【小ネタ&雑感】

学生亀山君と正枝さん(亀山母)!?

•著作権違反で何で特命係?
•チャチすぎるマスコットキャラと公式HP
•亀山のクビぐらんぐらんするな
•朝まで待たれるレストラン可哀想
•ネットシステムに5億でボリすぎな気がする
•紅茶のカフェインには疲労回復とリラックス効果(真野脚本家かな?
•今ならzoomだよな
筆頭株主が来る前の画面はサムネ
•2回ビンタされる亀山君
•特殊捜査班いるのに居座るんかい!
•ブルドーザーどうしたんだ
学生の亀山君出てたの!?
•どんな落下の仕方がギャグ漫画

【次回】

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