D2Cお菓子・スイーツブランドにおけるリピーター獲得術
近年、消費者の嗜好の多様化やEC市場の拡大を背景に、D2C (Direct to Consumer) ブランドが注目を集めています。特に、お菓子・スイーツ業界では、こだわりの素材や製法、ユニークなブランドストーリーを持つD2Cブランドが数多く登場し、競争が激化しています。
こうした中、D2Cお菓子・スイーツブランドにとって、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客のリピート率を高めることが、持続的な成長を遂げるための重要な課題となっています。本稿では、D2Cお菓子・スイーツブランドに特化したリピーター獲得術について、以下の項目を分析することで明らかにします。
味・品質以外の差別化（パッケージデザイン、SNS映えなど）
定期購入、限定フレーバーなどのリピート促進施策
バレンタインやクリスマスなど季節イベントとの連動
顧客コミュニティの育成と口コミ拡散
主要ブランドの売上推移と成功ポイント
味・品質以外の差別化
D2Cお菓子・スイーツブランドは、味や品質の良さだけでなく、他のブランドとの差別化を図ることで、顧客の心を掴む必要があります。近年では、パッケージデザインやSNS映えなど、視覚的な要素も重要な差別化ポイントとなっています。
パッケージデザイン
パッケージデザインは、商品の第一印象を左右する重要な要素です。消費者の購買意欲を高めるだけでなく、ブランドの世界観を伝える役割も担います。
高級感のあるデザイン: 高級感のある素材やデザインを採用することで、特別感や高品質感を演出できます。 例えば、和菓子のパッケージに和紙や空押しなどの伝統的な技法を用いることで、高級感を演出できます。
ターゲットに合わせたデザイン: ターゲット層の好みに合わせたデザインを採用することで、共感を生み出し、購買意欲を高めることができます。 例えば、大人向けのカスタードケーキには、シックな色合いで落ち着いたデザインを採用する、といった事例があります。
機能性: 持ち運びやすさや開封のしやすさなど、機能性を考慮したデザインも重要です。 スナック菓子のパッケージを、持ち運びやすい箱型から、すぐに食べられるカップ型に変更した事例などがあります。
話題性: 従来のイメージを一新するような、斬新なパッケージデザインは、話題性を生み出し、消費者の注目を集めることができます。 例えば、湖池屋は「KOIKEYA PRIDE POTATO」で、白地にポテトチップスの写真とロゴマーク、商品名だけというシンプルなデザインを採用し、話題となりました。
ブランドストーリー: パッケージデザインを通して、ブランドのストーリーやこだわりを伝えることができます。 例えば、ARTIDA OUDは、ブランドオリジナルの香水をパッケージに吹きかけることで、ブランドイメージを顧客に体感させています。
情報伝達: QRコードをパッケージに印刷することで、顧客に商品情報やプロモーション、インタラクティブな体験を提供することができます。
SNS映え
SNSでの拡散は、D2Cブランドの認知度向上に大きく貢献します。写真や動画で魅力的に見える商品、いわゆる「SNS映え」する商品は、口コミで拡散されやすく、新規顧客獲得やリピート促進につながります。
ユニークな形状: 他にはないユニークな形状は、消費者の目を引きます。 正方形のチョコレート「BRANCHÉ CHOCOLAT」は、その特徴的な形状と美しい色合いで、InstagramなどのSNSで話題となりました。
美しい断面: ケーキやチョコレートなど、断面が美しい商品は、写真映えしやすく、SNSでの拡散に効果的です。
カラフルな色合い: 鮮やかな色使いは、視覚的なインパクトを与え、消費者の購買意欲を高めます。 さらに、高画質の写真や動画、ライフスタイルを取り入れた写真、動画を投稿することで、より魅力的に商品を伝えることができます。
差別化による効果
上記のような差別化により、D2Cお菓子・スイーツブランドは以下のような効果を得られます。
ブランド認知度の向上: 印象的なパッケージやSNS映えする商品は、口コミで広がりやすく、ブランドの認知度向上に繋がります。特に、視覚的な魅力は、最初のブランド認知や記憶に重要な役割を果たします。
購買意欲の向上: 視覚的な魅力を高めることで、消費者の購買意欲を高め、売上増加に貢献します。
顧客ロイヤリティの向上: ブランドの世界観に共感した顧客は、リピーターとなり、ブランドロイヤリティが高まります。
リピート促進施策
D2Cお菓子・スイーツブランドは、様々なリピート促進施策を展開することで、顧客の継続的な購入を促しています。ここでは、代表的な施策とその効果について解説します。
定期購入
定期購入は、顧客に一定期間、商品を定期的にお届けするサービスです。顧客にとっては、毎回注文する手間が省ける、買い忘れがないなどのメリットがあり、企業にとっては、安定的な収益が見込めるというメリットがあります。
定期購入
説明: 顧客に一定期間、商品を定期的にお届けするサービス
メリット:
顧客: 購入の手間が省ける、割引価格で購入できる場合もある。
企業: 安定した収益を得ることができ、顧客との長期的な関係構築が可能。
デメリット:
顧客: 商品が余ってしまう、飽きてしまうなどのリスクがある。
企業: 解約率の抑制、顧客のニーズに合わせた商品提供などの課題がある。
例: snaq.me、パンスク
事例:
snaq.me: 顧客の好みに合わせたおやつを定期的に届けるサービス。 snaq.meは、「子どもに安全なおやつをあげたい親」だけでなく、「おやつを楽しみたい」という親自身もターゲットにしています。
パンスク: 全国各地のパン屋のパンを毎月届けるサービス。
定期購入を成功させるポイント: 継続的に利用してもらうためには、顧客に飽きられない工夫が重要です。 配送間隔を調整できるオプションを提供したり、顧客のフィードバックを反映してサービス内容を改善したりするなど、顧客満足度を高めるための取り組みが求められます。
限定フレーバー開発プロセス
限定フレーバーは、期間限定で販売される特別なフレーバーの商品です。顧客に特別感や希少性を提供することで、購買意欲を高める効果があります。
限定フレーバーの開発は、試行錯誤の繰り返しです。 例えば、「クロッカンシュー ザクザク」では、北海道産の牛乳を使用したカスタードクリームをベースに、様々なフレーバーのペーストを混ぜ合わせて試作を繰り返します。シュー生地との相性やクリームの調整など、細部までこだわり、完成度を高めていきます。
フレーバーブランドの特徴リスト
Mr. CHEESECAKE
フレーバー: 季節限定フレーバー
説明: 季節のフルーツなどを使用したフレーバー
メリット: 季節感を味わえる
Minimal -Bean to Bar Chocolate-
フレーバー: 期間限定フレーバー
説明: 期間限定で販売される特別なフレーバー
メリット: 特別感・希少性
リピート促進施策による効果
上記のようなリピート促進施策により、D2Cお菓子・スイーツブランドは以下のような効果を得られます。
リピート率の向上: 定期購入や限定フレーバーは、顧客の継続的な購入を促し、リピート率向上に貢献します。特に、継続的な利用が必要な商品に定期購入モデルは効果的です。
売上増加: リピーターが増えることで、安定的な収益基盤を築き、売上増加に繋がります。
顧客とのエンゲージメント強化: 限定フレーバーやキャンペーンを通じて、顧客とのエンゲージメントを高めることができます。
季節イベントとの連動
季節イベントは、消費者の購買意欲が高まるタイミングであり、D2Cお菓子・スイーツブランドにとって、売上増加のチャンスです。バレンタインデーやクリスマスなどのイベントに合わせて、限定商品を販売したり、キャンペーンを実施したりすることで、顧客の関心を集めることができます。
季節イベント連動の事例
バレンタインデー: Mr. CHEESECAKEは、バレンタイン限定でチョコレートフレーバーのチーズケーキや、チョコレートを販売。
クリスマス: 多くのD2Cお菓子・スイーツブランドが、クリスマス限定のパッケージやフレーバーの商品を販売。
季節イベントに合わせた商品開発
季節イベントに合わせて、特別な商品を開発することは、顧客の購買意欲を高める効果があります。
旬の食材: 季節のフルーツや野菜など、旬の食材を使った商品は、季節感を感じることができ、顧客に喜ばれます。
イベント限定のデザイン: イベントをイメージしたパッケージや装飾は、特別感を演出し、購買意欲を高めます。 季節のパッケージは、イベントに関連した感情や連想を呼び起こすための効果的なコミュニケーションツールとなりえます。 例えば、クリスマスの限定パッケージは、喜び、ノスタルジア、お祝いの雰囲気を演出し、顧客とのより強い繋がりを作り、ブランド体験を高めることができます。
ギフト需要: 贈り物として購入されることが多いイベントでは、ギフトセットやラッピングサービスなどを提供することで、売上増加に繋がります。
春夏向け: 春夏には、新学期や新生活、ピクニック、お祭りなどのイベントに合わせた商品が有効です。 例えば、ステーショナリーセット、ピクニックアイテム、光るおもちゃなどが考えられます。
季節イベントに合わせたマーケティング戦略
季節イベントに合わせて、効果的なマーケティング戦略を実施することで、売上増加を図ることができます。
SNSでの情報発信: イベントに合わせた商品やキャンペーン情報をSNSで発信することで、顧客の関心を集めることができます。
広告配信: イベント前にターゲット層に合わせた広告配信を行うことで、新規顧客の獲得に繋がります。
メールマーケティング: 既存顧客にイベント情報をメールで配信することで、リピート購入を促すことができます。
季節キャンペーンの効果測定
季節ごとのキャンペーンの効果を測定することは、今後のマーケティング戦略を改善するために重要です。 売上データやウェブサイトへのアクセス数、SNSのエンゲージメント率などを分析することで、キャンペーンの成果を評価することができます。例えば、バレンタインデーの売上推移を前年と比較することで、キャンペーンの効果を分析することができます。
顧客コミュニティの育成と口コミ拡散
D2Cお菓子・スイーツブランドにとって、顧客コミュニティの育成と口コミ拡散は、リピーター獲得に欠かせない要素です。
顧客コミュニティの育成
顧客コミュニティは、ブランドと顧客、そして顧客同士の繋がりを作り、ブランドロイヤリティを高める場となります。
オンラインコミュニティ: SNSや専用プラットフォームなどを活用することで、顧客同士が交流できる場を提供できます。 専用プラットフォームとしては、commmuneやcoorumなどがあります。これらのプラットフォームは、顧客ポータルサイトをノーコードで構築できるため、専門知識がなくても簡単に導入できます。
オフラインイベント: 試食会やワークショップなど、顧客が直接ブランドと触れ合えるイベントを開催することで、顧客とのエンゲージメントを高めることができます。
事例:
Oisix: ミールキットを購入した顧客にアンケートを配信し、商品開発に活かしています。
homeal: 幼児食の悩みを解決するサービスを提供し、顧客の意見を反映してメニューを改善しています。
FABRIC TOKYO: オーダーメイドスーツブランドで、採寸イベントや交流会を通じて顧客コミュニティを構築しています。
土屋鞄製造所: 革製品ブランドで、工房見学やワークショップなどを開催し、顧客との繋がりを深めています。
BULK HOMME: メンズスキンケアブランドで、会員限定のイベントやキャンペーンを通じて顧客ロイヤリティを高めています。
口コミ拡散
口コミは、消費者の購買行動に大きな影響を与えるため、積極的に口コミを拡散していくことが重要です。
SNSでの拡散: SNSで口コミを共有したり、キャンペーンを実施したりすることで、口コミの拡散を促すことができます。
インフルエンサーマーケティング: インフルエンサーに商品をPRしてもらうことで、口コミの拡散と新規顧客獲得を期待できます。
口コミ投稿キャンペーン: 口コミを投稿した顧客に特典を提供するキャンペーンを実施することで、口コミ投稿を促進できます。
口コミの活用: 集めた口コミは、ウェブサイトやSNSで紹介することで、購買を検討している顧客の参考情報になります。 また、口コミを分析することで、商品やサービスの改善に役立てることができます。
海外事例: 海外では、ユーザーが商品やサービスを使った感想をSNSに投稿するUGC (User Generated Content) キャンペーンが盛んに行われています。 集めたUGCをウェブサイトに掲載することで、口コミの拡散とブランドへの信頼感向上に繋げています。
主要ブランドの売上推移と成功ポイント
主要ブランドの売上推移
D2Cお菓子・スイーツブランドの売上推移は、ブランドや商品によって異なりますが、近年では、健康志向や個性的な商品を扱うブランドの売上が伸びている傾向があります。
ZENB: 豆100%の主食を販売するZENBは、コロナ禍で売上を大きく伸ばしました。
snaq.me: 自然素材のおやつを定期配送するsnaq.meも、売上を伸ばしているD2Cブランドの一つです。
高島屋: バレンタインデーのEC売上高は前年比10%増、実店舗を含めた全体では同5%増を目標としています。 オンラインストアでは最大約400ブランドを展開し、EC専属バイヤーによるセレクト商品も充実させています。
小田急百貨店: バレンタインデーのECチャネルでは、店頭では取り扱いのないウェブ限定品を含めて約100ブランド、700種類以上の商品を販売しています。
Mr. CHEESECAKE: バレンタインデーには、ブランド初となるチョコレートを発売し、常設店や通販サイトでの販売に加え、全国でポップアップストアを開催しています。
成功ポイント
D2Cお菓子・スイーツブランドの成功には、以下のポイントが挙げられます。
明確なブランドコンセプト: ブランドのストーリーや世界観を明確に打ち出すことで、顧客の共感を獲得し、ファンを増やすことができます。 例えば、BULK HOMMEは、男性のスキンケアに対する意識を変えたいという強い想いを持ち、その想いをウェブサイトや広告、商品パッケージなどで一貫して発信することで、多くの顧客の共感を得ています。
顧客とのエンゲージメント: SNSやコミュニティを通じて、顧客と積極的にコミュニケーションを取り、エンゲージメントを高めることが重要です。 オンラインコミュニティは、顧客サポートコストを削減し、業務効率を向上させる効果もあります。
高品質な商品: 味や品質はもちろん、パッケージデザインやSNS映えなど、細部までこだわった商品を提供することで、顧客満足度を高めることができます。
効果的なマーケティング: ターゲット層に合わせたマーケティング戦略を実施することで、新規顧客の獲得 and リピート促進を図ることができます。
インフルエンサーの活用: インフルエンサーを商品開発に巻き込むことで、商品に対するフィードバックを得たり、発売前の話題性を高めたりすることができます。
リピーター獲得戦略の統合
D2Cお菓子・スイーツブランドがリピーターを獲得するためには、上記の要素を総合的に活用することが重要です。
まず、明確なブランドコンセプトを確立し、顧客に共感してもらえるストーリーを伝える必要があります。その上で、高品質な商品を提供し、顧客満足度を高めることが重要です。
さらに、SNSやオンラインコミュニティを通じて顧客と積極的にコミュニケーションを取り、エンゲージメントを高めることで、ブランドロイヤリティを向上させることができます。
また、定期購入や限定フレーバーなどのリピート促進施策を効果的に活用することで、顧客の継続的な購入を促すことができます。季節イベントとの連動も、売上増加のチャンスとなります。
結論
D2Cお菓子・スイーツブランドは、味や品質だけでなく、パッケージデザイン、SNS映え、顧客体験など、様々な要素で差別化を図り、顧客ロイヤリティを高めることが重要です。
定期購入や限定フレーバーなどのリピート促進施策を効果的に活用することで、顧客の継続的な購入を促すことができます。
季節イベントとの連動は、売上増加の大きなチャンスとなります。イベントに合わせた商品開発やマーケティング戦略を実施することで、顧客の関心を集めることができます。
顧客コミュニティを育成し、口コミを拡散することで、ブランドの認知度向上 and リピーター獲得を促進することができます。
D2Cお菓子・スイーツブランドは、これらの施策を総合的に展開することで、競争の激しい市場においても、持続的な成長を遂げることが可能となるでしょう。