「知る」から始まる障害理解


引っかかりを感じていることがある。
私は2016年に脳出血を発症し、現在は歩行の補助に装具を使っているが、その装具のメンテナンスのために先日、川崎市にあるリハビリ施設に出向いたところ、1枚のポスターが貼られていた。
「病気や事故のあとこのような症状でお困りではないですか?」から始まり「疲れやすい」「怒りやすくなる」「集中力が切れやすい」「作業中に忘れやすくなる」など高次脳機能障害者の特徴が挙げられているものだった。
 高次脳機能障害がある当事者は、自身が高次脳機能障害者だと気づきにくいため、このようなものが貼られているのだと思うが、このポスターを見た私は「あなたは高次脳機能障害者なのだから自覚しなさい」と言われているようで、突き放されたような気持ちになった。
このポスターに書かれてある全ての項目に当てはまる。私は高次脳機能障害者の当事者グループに所属しているが、グループに入って最も驚いたのは、高次脳機能障害者の精神福祉手帳の取得率がとても高いことであった。職場や家族の無理解から精神疾患を患う例が多いとのことで、大変悲しいことだと感じる。
そのようなことから、高次脳機能障害者に関するポスターは症状を列挙するのではなく、当事者が「私は高次脳機能障害者としてこのように乗り越えて生活しています」というアピールをする方向での啓発ポスターを作成してはどうかと思う。高次脳機能障害は薬で治るわけではなく、症状を受け入れ、工夫をして生きていかなければならないのだから。
さらに、当事者の営みの紹介と同時に「当事者と共に活動しよう」というような広報活動も一般の人達の認知の後押しになるのではないだろうか。
 また、このような広報活動は障害者の家族に向けてだけではなく、駅の改札や区役所などの健常者の目に入りやすい場所で展開することができれば、見た目からは分かりづらい高次脳機能障害者が、実は見えないところで苦しさを抱えていることへの理解につながると思う。
当事者の知人はこの意見に賛同してくれたが、一方で「健常者は高次脳機能障害に対して興味を示さない」といった諦めの意見も聞こえた。確かに私もこの病気を発症する前、高次脳機能障害については特に意識をしていなかった。しかしまずは知る事が肝要だと思う。これまで障害者の社会進出を進めてきたのは、多くが当事者や当事者団体だ。諦めず声を挙げ続ければ、変革が起きると私は信じる。

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