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【創作大賞感想】櫟茉莉花さん『リモンチェッロと魔法使い』を応援します!!
櫟茉莉花さんの『リモンチェッロと魔法使い』は創作大賞2024のエッセイ部門にエントリーしている作品です。
令和の現代ではさんざん使い古された言い回しですが、
「真実」なんてものはどこにもない。
あるのは「事実」だけだ。
こんな言葉がありますよね。
端的に言えば「真実」と「事実」の違いは、そこに主観が入るかどうか。
つまり、誰かにとっての真実と、別の人にとっての真実は違う。
「ということは、エッセイもまったくのノンフィクションとは言えないかもしれませんね!」
かつてのわたしの投げかけに、先生は少し驚いたように目を丸くして、それから優しく微笑んで下さいました。
「文章に色気を出すには、ほんのちょっとの嘘を混ぜること」
恩師からそのような教えを受けた時の一場面です。
その時はまだ平成でしたね。恩師はご存命で、わたしはうら若き門下生のひとりでした(笑)。
前置きが長くなりましたが、茉莉花さんの『リモンチェッロと魔法使い』は、エッセイというよりもまるでひとつの物語のようです。
舞台はイタリア。茉莉花さんは調律師としてナポリに滞在していました。
そんな彼女はある日依頼を受けて、船でカプリ島に渡り、そこにある超高級ホテルのピアノを調律することになります。
イタリアのカプリ島にある超高級ホテルでピアノの調律をする。
これだけで、夢の世界のできごとのようです(ため息)。
日本で一体どれくらいの人が経験できるのでしょう。
「経験」なんて言っちゃうと、「バンジージャンプ」くらいの軽さに聞こえますが、これがお仕事だから余計にすごいのです。
調律師ってカッコいいですよね。茉莉花さん、自らは多く語られませんが、重要な調律をお任せされるわけですから、かなりの腕前であることが想像できます。
もちろん、本人はご謙遜なさるでしょうけれどね。
改めてそのような素晴らしい人とこうしてnoteで親しくさせていただけるなんて、縁とは不思議なものです。
さて、カプリ島のホテルでピアノの調律をすることになった茉莉花さん。一台目を終え、次のピアノへ取りかかる前に、イケメン男性から食事に誘われます。
男性はこのホテルで働く従業員。
しかし我らが茉莉花さん、ナンパのあしらいなど慣れておりますよ。
ハハン(=゚ω゚)ノ
なにせイタリア人といえば女好き。うんざりするほど声をかけられます。いちいち相手にしていたら大変。
スマートに切り抜けるなんてお手のもの・・・。
『「ねぇ、仕事の前に食事しようよ!」と彼に誘われ、 ~中略~
一緒に食事をすることにした(本文より)』
ん? あれっ?Σ(゚Д゚)
そういうわけで、シニョリーナ茉莉花さんはジャンレノ似のイケメンとお食事をすることに。
まるで映画のようですよね。
イタリアのカプリ島、超高級ホテル、若き女性調律師、イケメンの従業員……。
う~ん。絵になる(*´ω`)
輝く青い海、白い建物、風の香り、照りつける太陽、黄金色のリモンチェッロ。
行ったことのないイタリアの光景が浮かびます。
しかしそこで話は終わりません。イケメン従業員の悪戯により、ちょっとしたトラブルが起こります。
詳しくは本文を読んでいただいた方が早いでしょう。
やがて読んでいるうちに、このエッセイに出てくるひたむきな若き調律師は、茉莉花さんではなくなっていくかもしれません。
読み手はきっと、彼女を一人の主人公としてイメージを作っていきます。
その姿は、どこかの女優さんに変わっているかもしれませんし、どこにも現存しない夢の人物かもしれません。
そしてこの、日本からやってきた魅力的な若き調律師は、今でもイタリアで研鑽を重ねながら、夢を追いかけている。
そんな妄想さえ抱いてしまうのです。
この調律師の物語をもっと読みたい・・・!
そうなると、この作品は単なる(失礼)エッセイの枠にはとどまりません。
すぐれた作品に、ジャンル分けというものはナンセンスなのかもしれませんね。
櫟茉莉花さんの『リモンチェッロと魔法使い』が少しでも多くの人の目に留まり、読まれますように。
このままではもったいない、なんらかの形になって欲しい。そんな風に思わせてくれる作品に出会えたのは幸運なことです(*^-^*)