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#7 驚きの「50℃洗い」調理法

「きみこさん! びっくりよ! 50℃のお湯で洗うのよ。目からウロコよ」

 興奮気味に話す友達の話に興味津々。「残席1」に煽られて予備知識ないまま、飛び込んだ。料理教室だ。
 
 いったい何を洗うのだろう。最初は、ほうれん草だった。まず、ボウルに半分ほどの水を入れ、沸騰した湯を足しながら、温度計で50℃(+-2℃は許容範囲)になったところで準備完了。
 手を入れてみると「アチっ!」その湯で、ほうれん草を洗うのだ。
「こんな熱い湯でほうれん草を洗ったら、しなびちゃうんじゃないかしら」
疑念を抱きながら、ザルにあげたほうれん草を見ていると、あら不思議、みるみる新鮮さを取り戻していくではないか。
 もやしもそう。傷みやすいもやしは、塩素系の減菌剤に浸してから売られているらしく、私はあの臭いがイヤだった。しかし、50℃の湯に投入すると、汚れや薬剤が剥がれ落ち、湯がみるみる茶色く濁っていく。あの独特な臭みも消えている!
 試しに、もやしを1本折ってみたら「シャッキ!!」、音が聞こえたかのようだ。いつもの「ふにゃふにゃ感」は、どこへいった?
 まるで50℃の魔法! 私は思わず、この調理法に前のめりになった。
 
 そもそもなぜ、50℃なのか? 40℃や70℃ではだめなのか? というと、どうやらそこには化学的根拠があるらしく、それを提唱するのが長年、蒸気利用技術法を研究されてきた平山一政氏だ。
 氏によると、これは「ヒートショック効果」によるもので、「時間が経って失われた野菜の水分は「ヒートショック」によって吸収される、その適温が50℃ということで、私たちがお風呂に入る40℃前後のお湯だと、雑菌も心地よいのかしらね? 菌が繁殖しやすくなる。逆に高温だと、食材そのものの細胞が壊れてしまうらしい。
 そんなことから食材を50℃で洗うことを、長年、推奨されてきたとのこと。事実、その効果は、
  ①  鮮度がよみがえる
  ②  アクや汚れ、臭みがとれる
  ③  長持ちする
  ④  食感がよみがえる
  ⑤  表面の薬剤や酸化物質が落ちる
とのことで、もはや実践せずにはいられない。
 
 私はこれを知ってから、野菜はもちろん、鶏肉も豚肉も牛肉も、肉類はすべて洗っている。もちろん魚も洗う。魚をさばいたときに出る血も、50℃できれいに洗い落とすと臭みが取れる。
 教室では刺身も洗った。これには、びっくり!
思わず、
「え~っ!!?」
奇声を上げてしまったが、刺身用にと切って売られている魚は、切り口が多い分、酸化が進んでいるという。酸化した食品を過剰に摂取すれば、少なからず人体へも悪影響をもたらすわけで、可能な限りその酸化成分を落とすことが目的だ。

「ならば!」
と、しゃぶしゃぶ用の肉も洗ってみた。50℃で洗ったら、「そのまま、しゃぶしゃぶになっちゃうかも?」と不安になったが問題ない。ふんわり、軟らかくなっている。おまけに、鍋の中のアクも少なくなった。
 この調理法を、怪訝そうに眺める夫にも試してみた。
「50℃で洗ったしゃぶしゃぶ肉と、冷蔵庫から出したままの肉、どっちが美味しい?」
うふふ…、思った通りの結果だ。
 
 以来、我が家はすべての食材を、50℃洗いしてから調理するようになった。ひき肉も洗う。ナッツ類も洗う。
 買ってきたままのナッツって、ナッツ自体の油分が酸化しているせいか、苦みというか、えぐみのようなものが口の中に残って気持ち悪かったけど、50℃洗いした後、低温のオーブンでゆっくり乾かすと、あの不快なえぐみが消えて、とってもおいしくなる。このひと手間はもう、せずにはおれない。
 
 教室では、「低温蒸し料理」も実践した。結局、50℃洗いは、ほんの序の口。下処理に過ぎず、本番はその先の低温スチームによる調理法にあるようだ。しかし私は、この最初の一歩に感動し、ショックを受けた。
 すでに10年以上も前から、テレビや雑誌などでも話題騒然となっていたという、「平山式 50℃洗いと低温スチーム調理」。関心ある方は、どうぞ検索してみては?
 
 そうそう、いま私は、切り花の切り口を50℃で洗って水の入った花瓶に挿したところよ。ほうれん草がシャッキと新鮮、長持ちするのだから、切り花も同じでしょ?

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