【魔歌師】プロローグ【恋愛ファンタジー】
深い洞穴に風が吹き込むときのような、あるいは複数の人々が唸るような音。
ずっと聞いていると頭が痛くなりそうなほどに不快で、不気味だ。
その音はざわざわと煩わしく響き、私をまどろみのなかから引きずり出す。
いつからか沈んでいた意識が持ち上がってきたとき、うつ伏せに横たわっていることにようやく気づいた。
手のひらでなでると、冷たくて固い感触が伝わってくる。ざらりとした細かい粒は砂だろうか。頬に突き刺さって地味に痛い。
重い身体を起こしながら、ぼやける視界を凝らす。
何か、光るもの