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映画レビュー「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」

久々のブラッド・ピット、久々のディカプリオ、さらにタランティーノ。期待が高まらざるを得ません。公開時に映画館で観たかったけど、都合が合わなかったので、この度Netflixにて鑑賞。レビューです。

①神は細部に宿る。


現実世界でも虚構でも、人間は結局のところ「言ったこと」ではなく「やったこと」を通して理解されるという事実。

このことを示すのに圧巻かつ秀逸だったのが、ブラピ演じるクリフがしつけをしながら飼い犬に餌を与えるシーンだ。
乱雑に汚れたトレーラーハウスの中、くわえ煙草で大きな缶詰を開け、高い所からぼとりと餌皿に中身を移す。多少はみ出したところで気にしない。餌皿も床も元々薄汚れているのである。
まだ火が点いたままの長い煙草を流しの中にノールックで無造作に放り投げる。それは食べ物の汚れがこびりついたままのフライパンの中に落下する。

ここから読み取れるクリフの人物像。
・飼い犬の世話やしつけは本人なりのルールに従って毎日行う人物である。
・部屋の汚れなど些末なことは気にしない。気にしないというかおそらく目に入っていないし生まれてこの方考えたこともないままに生きてきた人物である。なおかつ、この点について困ったことはない。
・自分のために簡単なものではあるかもしれないが、きちんと料理をする人物である。

あの短いシーンにクリフという人間についてこれだけの情報量。
言ったことではなくやったこと。その人物の行為の細かいところまで描写することで、説明しなくても人物像をくっきりと浮き上がらせることができる。神は細部に宿るのである。
「やらないこと」からも、またしかりだ。クリフのやらないこと。掃除。こまめな食器洗い。煙草の始末に灰皿を使うという常識的な行い。

なお、泣くリックにサングラスを差し出すシーンもクリフの生来の優しさや品格を感じさせる非常に良いシーン。「メキシコ人の前で涙を見せるな」というセリフが、あたりまえのことをあたりまえに行う単なる善人ではないと思わせる良いスパイスになっている。

②チャーミングとは


チャーミングとはリック・ダルトンのことである。
そう言い切りたくなるくらい、ディカプリオ演じるリック・ダルトンはチャーミングだ。
いい大人なのにすぐ泣く。まあ、悔しいよね、うん、わかるよ、と思うシーンではあるけれど、何も泣かなくたっていいんじゃないだろうか。でもリックは泣くのだ。

トレーラーハウスの控室で、セリフを飛ばしてしまった自分を責めるシーンがすばらしい。
本番前に8杯も酒を飲んではだめだろう。当たり前のことだ。でもリックはやってしまう。そして大事なシーンでセリフが飛んでしまい、癇癪を起して暴れ回る。そして泣く。
暴れ回った挙句、気持ちを落ち着けるために酒の小瓶に手を伸ばす。またもや酒を飲もうとした自分に驚愕し、小瓶を投げつける。そして鏡越しに自分を叱りつけるのだ。

このシーンがアドリブだったと知り、さすがだ、と思う。
すばらしい演者は、その役の一番の理解者なんだなあと。
リック・ダルトンの情けなさ、弱さ、それでも立ち上がろうとする強さ(しぶとさ?)。何より酒を飲んだ自分を責めているさなかで無意識に酒に手を伸ばそうとする何とも言えない、でもすごくよくわかる行動。
人間のチャーミングさというものを体現する人物、それがリック・ダルトンである。


③物語の終わり=バディの終わり(しんみり)……と思いきや笑


物語の終盤、リックはクリフにバディの解消を告げる。
確かに仕方がないよね、という事情である。
また物語の終わり=バディの終わりというのは、これが映画と言う虚構である以上、ままありがちなものだともいえる。

しかし、しかしである。
ここから、そうだ、これはタランティーノの映画だったんだ、ということを思い知らされる。

まさか火炎放射器の伏線回収が行われるとは笑。

しんみり終わらない。怖いけど笑ってしまう。ああ面白かった。

#映画感想文 #映画レビュー #ネタバレ #ブラッド・ピット #レオナルド・ディカプリオ

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