仮想読書会:「世界の本当の仕組み」バーツラフ・シュミル著の(2)食料生産
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【 今回の仮想読書会の範囲 】
「世界の本当の仕組み」バーツラフ・シュミル著
第2章 食料生産を理解する—化石燃料を食べる
※引用に適した文字量などの事情もあり、元の書籍にある詳説のほとんどは、読書メモから割愛しています。今回の範囲に限りませんが、具体的な話や数値など、詳細に興味をお持ちで未読の方は、是非、ご自身でお読みになることをお薦めします。
【 読書メモ(引用、問いなど)】
・だが、現代世界にとって最も重要で、生存の根幹にかかわるのは、食料生産における、直接・間接の利用を通しての化石燃料への依存だ。直接利用の例には、トラクターとコンバインとその他の収穫機を中心とするあらゆる農業機械や、農地から貯蔵施設や加工施設への収穫物の輸送、灌漑用ポンプの動力源となる燃料がある。間接的な利用ははるかに幅が広く、農業機械や肥料の生産と、除草剤や殺虫剤や殺菌剤といった農業化学物質の生産に使われる燃料や電気に加えて、温室用のガラスやビニールシートから精密農業を可能にするGPS(全地球測位システム)デバイスまで、他のさまざまなインプットに及ぶ。
(中略)
私たちは(中略)光合成の産物を食べている。(中略)
では、何が変わったかと言えば、それは作物と動物の生産集約度であり、依然として増え続ける化石燃料と電気のインプットなしには、これほど豊かな収穫を、これほど高度に予想可能な形で行うことはできないだろう。このような人為的なエネルギー補助がなければ、1人の人間を養うのに必要な時間と農耕地を着実に減らしつつ、人類の90パーセントに適切な栄養を供給することはできなかっただろうし、世界の栄養不足をこれほど減らすことも不可能だったろう。(p.80-81)
・つまり、アルメリアの加熱されたビニールハウスから出荷されたトマトがスカンディナヴィアのスーパーマーケットで買われるときには、生産と輸送の驚くほど高いエネルギーコストがかかっているということだ。このコストの合計は、ディーゼル燃料換算で1キログラム当たり約650ミリリットル、中ぐらいの大きさの125グラムのトマト1個当たりでは、1杯14.8ミリリットルのテーブルスプーン5杯以上になる!(p.104)
・1900~2000年の100年間に、世界人口が4倍弱、正確には3.7倍の伸びを見せる一方、農地は約40パーセントしか増えなかったが、私の計算では、農業への人為的エネルギーの補助は90倍になった。農業用化学物質と、機械類が直接消費する燃料に含まれるエネルギーがその主な原因だ。(p.108)
・それに対して、今や世界で最も普及している固形窒素肥料の尿素の含有率は(中略)であり、リサイクル可能な排泄物と比べて、少なくとも1桁多い。つまり、作物栽培に同量の養分を供給するためには、質量にして10~40倍の有機肥料を施さなければならなくなる。そして現実には、さらに多くが必要だろう。窒素化合物のかなりの割合が、蒸発したり、水に溶けて、根よりも深いところまで運ばれたりして失われるので、有機物からの窒素の損失の合計は、合成の液体肥料や固形肥料からの損失をほぼ必ず上回るからだ。
(中略)
つまり、最近の世界の作物収量は、少なくとも半分が、合成の窒素化合物の使用のおかげで生み出されているわけであり、それらの化合物がなければ、今日の約80億の人口の半数にさえ、現在のありふれた食事を提供することが不可能になるだろう。全世界で約110メガトンにのぼる合成化合物のインプットを、有機肥料に置き換えることは、机上の空論にすぎない。(p.113-115)
・それにしても、世界の食品ロスのうち、しっかり確認されている分だけでもはなはだ多い。(中略)おおむね座って過ごす富裕国の人々の場合、成人が1人当たりで毎日必要とする熱量は2000~2100キロカロリーであり、実際に供給される3200~4000キロカロリーよりはるかに少ない。国連食糧農業機関(FAO)によれば、世界では根菜と果物と野菜全体の半分近く、魚全体の約3分の1、穀物の30パーセント、脂肪種子と肉と乳製品全体の5分の1が失われているという。これは、食料供給全体の少なくとも3分の1に当たる。(p.118-119)
・2050年までには少なくとも20億人の人口増加が見込まれ、アジアとアフリカの低所得国では今の2倍以上の人が食料供給の質・量の両面でさらなる向上を経験するのが必至であることを考えると、合成窒素肥料への世界的な依存が大幅に軽減されることは、当面見込めない。(p.123)
<問1>
食料となる動植物の成長の大半を担っているのは光合成であって、私たちは、人為的介入(各種農作業、肥料の製造、品種改良、輸送、貯蔵、食品加工、調理…)による生産集約度の向上があってはじめて現在のように繁栄するようになった。
その人為的介入というのが、どれも大量の化石燃料を必要とする活動だという事実を、さまざまな数値や事例から再認識しました。
今回の話を踏まえ、みなさんの日常生活において、食料品選びやフードロス、化石燃料の低減につなげることができるのではないかという取り組みについて、何かヒントが得られたようであれば共有をお願いします。
<問2>
本日(2025年1月21日未明)、第2次トランプ政権が誕生したという状況を踏まえて、2つ気になりました。
1つは、地政学的リスクが高まり、何らかの国際有事が起きた場合に、食料自給率が38%の日本では餓死も生じうるということです。
もう1つは、関税を武器に「もっと米国産の安価な食料を買いなさい」と日本に圧力をかけてくるのではないかということです。これらについて、あなたはどんな考えをお持ちか教えてください。
【今回の成果共有】
芸術家:赤松さん
今回の議論を通じて、食という営みが持つ多面的な価値を再確認できました。特に、科学技術と文化的価値の調和という観点は、私のアート活動にも新たな示唆を与えてくれました。食を通じた文明の転換という視点を、作品制作に活かしていきたいと思います。
実務家:青柳さん
企業活動における効率性追求と、地域文化の尊重という一見相反する課題に対して、具体的な解決の方向性が見えてきました。特に、サーキュラーエコノミーの考え方を取り入れ、テクノロジーを活用した需要予測と、地域特性を活かしたサプライチェーンを構築するというのは、すぐにでも着手したい課題です。
フリーランス:黄田さん
各地域の気候風土に適応した独自の農法や、食材を無駄なく使い切る知恵、都市農業や垂直農法の実証実験と、最新のテクノロジーを組み合わせることで、新しい可能性が開けるという確信を得ました。特に、ブロックチェーン技術を活用した食品トレーサビリティの実現は、具体的なプロジェクトとして推進していきたいと思います。
起業家:緑川さん
食育の視点から、生産者と消費者をつなぐこと、特に、伝統知とテクノロジーの融合を促進し、食料安全保障と文化的価値の両立を目指す教育プラットフォームを設計するという大きな示唆が得られました。
物理学者:白石さん
データに基づいた議論を通じて、効率性と文化的価値が必ずしも対立するものではないことを再確認できました。特に、伝統的な農法や発酵食品、保存食や貯蔵方法に関する科学的検証は、今後の研究テーマとして非常に魅力的だと感じています。
政府官僚:黒木さん
食料安全保障を、単なる生産量の問題としてではなく、文化や教育、地域社会の持続可能性を含めた総合的な課題として捉え直すことができました。特に、国際協調と国家の自律性のバランスという視点は、政策立案に活かしていきたいと思います。
主宰者:7人目
食料自給率に関する対話の中で、「各国が自給率向上を目指すことで、かえって非効率になる可能性」として挙がった、トマトの例が興味深かったです。
寒い冬の日本でもたくさんの燃料を使えばトマトを栽培できるけれど、冬でも暖かいスペインなら燃料をほとんど使わずに育てることができる。
何でも自分の国で作らなければならない!と考えるのではなく、スペインから輸入した方が、全体として使用する燃料が少なくて済む場合もあることも考慮すべきという話でした。
食料自給率については、「普段はスーパーで買い物をするけれど、災害時のために少し食料を備蓄しておく」ような「リスク分散」の視点から、「適度な冗長性」(余裕)とはどの程度なのかについて、食料生産関係者・消費者の対話が有効ではないかと思いました。
※「需要予測を活用した廃棄量削減」「食料調達先の多様化」「食糧貯蔵技術の開発」といった取り組みも重要になりますね。
◆今回の成果から、どんな問いや展開が浮かびますか?◆
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