彼女の腰にゆっくりと手を伸ばすと…
まるで、アーモンドを並べたような瞳が張り付いたように、僕の顔を凝視してくるから、彼女の全身をまざまざと凝視できそうにない。
それでも、透き通るように白くて細い腕や足はすらりと長く、小さく対称な全身はまるで神様が作った人形のように可愛らしく思えた。
そして僕は、彼女の腰にゆっくりと手を伸ばす…
……
「えーん、上司が急に腰に手を回してきて…」
週末、友人と二人で飲んだ時のこと。彼女は20代半ばのマスコミ関係の仕事をしている方で困ったことがあると、こうして時々相談に訪れてたわいもない話をするのです。
出張先の北海道。取材先のロケバスでの出来事だったようです。どうやら今回の出張は運悪く、上司からのご指名で二人っきりで1泊2日の旅。
そもそもこの時点でイヤな予感はしたようだが、断ればその後の人事評価の査定に響くと思い渋々着いて行くことに…
薄暗い後部座席に2人っきりで並び、次の撮影に向けて読み合わせをしていると、徐々に上司の左肩が私の胸の横に当たるようになってきたので、私はすかさず何事も無かったように身をかわす。
二度三度繰り返していると、シートと私の背中の間にスルスルと腕を押し込ませてきて、全身にゾワッーという悪寒が広がった。
そして、ジワジワと腰に強い力が加わり、見えない引力が働いているかのように私が行こうとする方向から身体が遠ざかっていく…
「ゴクリ…」「それで、それで…」
僕が興味深々に続きを聞こうとすると、そこで、やっと声が出せるようになったんですよ「や、やめてください」って言って押し返して必死に逃げ出したんですよ。
彼女は興奮気味に当時の様子を話していると、身体が火照ってきたようで、羽織っていた上着を1枚脱いでTシャツ姿に。細いけど柔らかそうな二の腕が露わになると、改めて華奢な姿に見惚れてしまう。
確かに、このつぶらな瞳で見つめられると上司の気持ちもわからなくも無いか…
キュッと締まったウェストに、僕はそっと手を伸ばす…
「ガコッ」「キモイ」
その間、僅か0.3秒。強烈な肘鉄が見事にみぞおちに入り一瞬で降参。も、もうメチャメチャレスポンス速いし、全然強いじゃないですか。冗談ですよ、冗談…
上司の皆さん、火遊びはダメですよ。ひと時の欲望が、周りの人たちを不幸にしちゃいます。こんなことしてても誰にも幸せは訪れないのですよ。
そういえば、最近芸能人のロケバス事件があったような…。きっとそこは男を狂わせる空間なんですかね。
「セクハラ、ダメ、ゼッタイ」
今日も最後まで読んでくださってありがとうございました。