インター校の宿題【歴史で学ぶ人権問題とビリーホリデー】
インター校の授業や宿題のいい点は、複数の教科をまたいだ勉強が普通であることと、題材を選べる権利が生徒側にあることだ。
前回はZ世代の小4の弟のアートの宿題について書いたけれど、今回は中1(Year-9) のお姉ちゃんがHistory(歴史)の宿題をもらって帰ってきたのでそのことについて書いてみようと思う。課題は、
・ポエム(詩)や音楽の曲の歌詞で、黒人の、奴隷制度に関するものを選び、その言葉やフレーズの背景や意味を分析すること。
ここ最近、中1のお姉ちゃんの歴史の授業では、16-19世紀の黒人の奴隷制度のことをずっと勉強していた。アフリカから沢山の黒人がアメリカに連れてこられたこと、7年で帰れるという多くの契約が破棄され、沢山の人達がアメリカに残り奴隷になったこと、彼らの生活、南北戦争(Americal Civil War)について。今回の宿題で彼女が選んだのは、ビリー・ホリデー(Billie Holiday)の「Strange Fruit」(奇妙な果実)というジャズの曲だ。
この歌はもともと、ニューヨークのユダヤ人教師エイベル・ミーアポル(英語版)によって作詞・作曲された。もともとは一編の詩で「Bitter Fruit(苦い果実)」というタイトルだった。”Southern trees”, ”Southern breeze” - 何度も”南部”という言葉が出てくる。そして、リンチにあって虐殺され、木に吊りさげられた黒人の死体を果物として描写している。歌詞は「南部の木には、変わった実がなる・・」と歌い出し、”bulging’ eyes", "twisted mouth", "burning fresh", "crows to plunk", "sun to rot" - 木に吊るされた黒人の死体が腐敗して崩れていく情景を描写するつらい歌詞だ。お姉ちゃんはビリー・ホリデーも知らなかったし、ジャズも知らなかった。けれども、この歴史の宿題を通じてビリーホリデーとジャズというジャンルを知ることになる。冒頭にも書いたけれど、複数の教科に渡って学ぶことが出来るのは、IB(International Baccalaureate (国際バカロレア))カリキュラムの面白い点だとつくづく思う。
私が20歳から21歳の1年間アメリカ南部のジョージア州に留学していたころは、残念ながらまだ差別が色濃く残っていた。黒人はバスの後方にしか座らなかったし、住居のエリアもはっきりと区分されていた。アジア人の私は有色人種で微妙な扱い方をされた。夏休みや冬休みになるとキャンパス内のドミトリー(寮)が閉まるのでずっと貧乏旅行をすることになるが、生の本場のジャズを聴いたのはやはりニューオリンズを訪れた時だった。路上での演奏、小さな箱でのライブ、ワクワクするようなアドリブのセッションが夜な夜な生まれる。でも、黒人の奴隷制度という悲しい歴史を勉強して知っていたとしたら、あの時私にとってどんな音楽に聞こえただろうか?いつか子供たちをニューオリンズに連れて行ってジャズを聞いたあとに、聞いてみたいと思っている。
"Strange Fruits" wiki: https://en.wikipedia.org/wiki/Strange_Fruit
"奇妙な果実" wiki:
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%87%E5%A6%99%E3%81%AA%E6%9E%9C%E5%AE%9F