詩 / 1歳の君は-8月
今日がもう終わろうかという深夜に
君がふぇぇと泣きながら起きたので
急いで駆けつけて手を握ったら
すぅっとまた寝入ってしまった
その時わたしは世界で一番寂しい生き物になった
この完璧に安心しきったかわいい寝顔
遠くからわたしを見つけて駆け寄ってくれたこと、覚えているよ
癇癪を起こしても抱き上げて背中をさするとみせる落ち着いた表情
雨の日に前向き抱っこをしたら傘を一緒に握ってくれたね
わたしが咳をすると目がなくなるくらい笑ってた
わたしが見当たらないと顔をぐしゃぐしゃにして泣き喚いてた
そういうたくさんの一瞬を
君は全部忘れてしまう
わたしばっかり
よるべもなくその思い出たちに縋る夜が
これからあと50年もある
わたしばっかり
わたしばっかり
わたしばっかり
ありがとうね
これからしか持たない君は縦横無尽に駆け回る発光体
これまでを置いていく君は全身全霊で呼吸する愛の塊
わたしばっかり
いいんだろうか
君が夜中に起きてしまった時のために
手を握るだけ
ただそれだけのために
あと100年は生きていたいのに