イマここに生きる!オーガニックオーダーの旅・暦のお話 《雑節・夏土用》
一年を通して様々な季節が味わえる日本。古来より大切にされてきた暦に触れていくことで、その豊かさをより深く感じられます。知ることは伝統や智慧、ひいては叡智とつながる第一歩。オーガニックオーダーを感じ、イマここに。
2020年夏土用 7月19日(日)~8月6日(木)
今日から夏土用に入ります。梅雨明けどころか各地で大雨の被害があり、緊張感が拭えません。
落ち着きを取り戻す土用であって欲しいと願わずにはいられません。
被災された方々に心からお見舞い申し上げますと共に、少しでも早いご回復と復興をお祈り致します。
今や何でもない日常の有難さを、誰もが感じる時代。
暦を知っていくこともその日その時を大切にすることに通じます。
どんなことが伝承されているのか、少しづつ紐解いて観じていくこともまた、感謝の形。そういう思いで取り組んでいこうと思います。
土用とは?
土用とは雑節のひとつで、1日だけではなく期間を総称します。
雑節とは一年間を24等分にした24節季以外に作られた、季節を読み取るための暦のことです。
土用は丑の日で有名ですが、この日だけではありません。
土用は、年間春夏秋冬の各4回ほどあり、立春、立夏、立秋、立冬の直前から、それぞれ18日間程あります。
ちなみに2020年の土用は、
冬土用……1月18日㈯~2月3日㈪
春土用……4月16日㈭~5月4日㈪
夏土曜……7月19日㈰~8月6日㈭
秋土用……10月20日㈫~11月6日㈮
となります。
土用はどんな時?
一年に四回もある土用。
いったい何を表しているのでしょうか。
そもそも土用は、古代中国から伝わる『五行思想』から取られています。
五行思想(ごぎょうしそう)とは、
万物の在り立ちを五つの要素から捉えようとした思想です。
※図では“earth”となっていますが、通常“土”と訳されます。
五行思想は、木、火、土、金、水の五つの要素の関係性で世界の動きと関係性を捉えていきます。
これはそれぞれ実際の木や金属という意味合いより、象徴として使われていることが多いです。
それぞれに司るものがあり、これを一覧表にしたのが『五行色対表』です。
色彩や身体の構造部位、食物もここで分類されています。
季節もここにあてはまり、
春➢木
夏➢火
秋➢金
冬➢水
と割り当てられています。
そう、土がまだ出てきていませんね。
これが今回テーマにしている土用です。
土用➢土
となります。
つまり、土用も季節の一つと捉えられているわけです。
土用の特徴
一年に四回もある季節というと、通常の春夏秋冬の概念だけを元にするなら『?』となってしまいますね。
先ほどの、年間でどの時期に充てられているかを見て頂けると一目瞭然、土用は《季節の変わり目》を表しています。
つまり、決まった気候の頃ということではなく、『移ろっていく期間』という特殊な状況に名前がつけられているのです。
昔は「土公神」という神様が土中にいらっしゃる季節として、土を触らないように様々な風習がありました。
土公神様は様々な場所におわす神様ですが、土用中は土の中で静かになさっていると考えられていたそうです。
大きな決め事をしないようにや、行ってはいけない方位もありました。
他に、井戸を掘る、増改築、地鎮祭等も避けられていたようです。
現代においては、
“普段よりも丁寧に生活のマネージメントが必要な時期”ということを認識するために名付けられたと捉えられています。
疲れやすく判断も下しにくいことを踏まえ、大きな決め事や移動にも気をつけなさいということなのでしょうね。
土用干し
では土用にすすめられていたことは何でしょうか?
夏土用においては「土用干し」です。
土用干しは、夏土用の時期に行われる年中行事です。
干すものはこちら
衣類、書籍、田んぼ、梅。
衣類、書籍
土用の時期に陰干しすることで虫に喰われなくなると言われました。
これはこの時期の日照の強さを利用した生活の知恵ですね。
梅雨の時期についた湿気を取り除くために行われていました。
田んぼ
この時期3日~一週間ほど水を抜き、田んぼの土にひびが入るほど乾燥させるのだそう。そうすることで稲穂がしっかりと根を張り、風に強く育ち、よく実るのだそうです。
梅
6月頃収穫し、塩漬けにした梅を、土用の時期に3日ほど日干しします。
この時期の太陽の強い紫外線で殺菌することにより、保存性を高めるのです。
塩漬けし、土用の時期に3日ほど日干ししたものは「梅干し」となり、塩漬けのみで日干ししないものは「梅漬け」となります。
衣類や書籍はエアコンが普及した今、あまり行われることが無いかも知れませんが、一度日干ししておくと、お手入れにもやはり良さそうだなと思います。洗えないでいた春先用の衣類や、梅雨寒に備えていた厚手のスプリングコートをこの時期にお洗濯しても良いのかも知れませんね。時期として知っておくと、ふとお天気が良い時にさらりとできそうですね。
土用丑の日、鰻の日?
鰻の日で有名な土用丑。
2020年の丑の日は7月21日㈫、8月2日(日)の二日間。
ところでなぜ鰻の日になったのでしょう?
諸説ありますが、有名なのはこちら。
江戸時代(1603年~1868年)、夏に鰻が売れなくて困っていた鰻屋の店主が、時の発明家、平賀源内(発明家・蘭学者1728年~1780年)に相談をしました。(ということは源内先生が若く見積もっても15歳以降、1743年から晩年までのエピソードということですね)
源内は思案し、こう提案。
丑の日にちなんで「う」から始まる食べ物を食べると夏負けしないという風習があったことから、
『「本日、丑の日」という張り紙を店に貼りなさい』と申し伝え、
その張り紙効果でお店は大繁盛、現在まで伝わる風習になったとか。
鰻の旬は冬。
真逆の季節に大ヒットさせるとは、広告マンとしてもかなりの才気ですね。
今となっては鰻は絶滅危惧種。
頂くときも大切に、ですね。
この時期の養生のポイント
鰻はとても栄養価が高い食物です。
ざっと見ても
●ビタミンA(抗酸化作用)
●ビタミンB群・特にB1、B2(B1→疲労回復、B2→口内炎の防止や回復、髪、爪、皮膚の健康促進)
●カルシウム(歯や骨の増強)
●DHA(ドコサヘキサエン酸 記憶力・視力の回復等)
●EPA(エイコサペンタイン酸 血管の病気予防)
と栄養豊富です。
では伝承医療から見てみるとどうでしょう。
実はまだまだ消化が弱りがちなこの時期、旬ではないといえ、精のつく鰻は調理法によっては負担になりやすく、消化に自信のある時以外は120%お勧めとはいいにくいです。食べ方やタイミングを十分に気を付けて、からだにも美味しく頂きたいものです。
『季節だから』や『行事だから』と思い込まず、お好きであれば柔軟に取り入れることが秘訣です。
気温や湿度、はたまた天候まで急変しやすいこの時期、消化しやすく、もしくは消化を促すようなレシピがお勧めです。
山椒を付け合わせにしているのも納得ですね。
とはいえ、おいしそう~な鰻屋さんの香りは魅力的。
よくよく体調を整えて、夏の風物詩、時々は頂きたいものですね。
普段からよく養生し、感謝の気持ちを以てイベントの特別なお料理を頂ければ、英気もよく養われるのではないでしょうか。