「感想屋」という手段
前回は「長文感想を送りつけるタイプの人」という意味で「感想屋」について触れましたが、今回は「有料感想屋」について書いていきます。
特に嫌われそうなポイントとか、ポジティブな面について触れていきます。
「感想屋」の元ネタ
☑︎ 長文感想を作家に送る人
☑︎ 増田が元ネタ
「感想屋」の元ネタはこちらの増田(はてな匿名ダイアリー/「アノニマスだ」が語源らしい)です。
長文感想を作家に送りつける人物が彗星の如く現れて、作家の作品の方向性が変わってしまい延々と愚痴る話です。
この増田では、「長文感想を書く人」に対して「感想屋」とあだ名をつけています。
「有料感想屋」の発端
☑︎ 有料で感想文を書いてくれる
☑︎ 商業・同人を問わない
☑︎ 「感想屋」さんのnoteが発端
「長文感想にはニーズがある」ってところをずばりサービス化しちゃったのが、この人です。
先日話題になった「ひとりの長文感想マンに推しカプ界隈を支配された話」という匿名記事を読んで、そういう存在が自カプにもいたらなぁ~という気持ちと自分もそういう長文感想マンから感想もらいてぇな~という気持ちが膨らんだので、じゃあ自分がそういう長文感想マンになったらいいのでは?と考えました。
ないなら作れは腐女子の掟なので。長文感想マンがいないなら自分がなればいいじゃない!
そんなわけで感想屋さんを始めました。
半ば趣味とはいえ勢いがすごすぎる。
「有料感想屋」が嫌がられるポイント
☑︎ 同人の場合、あくまでも趣味であり金銭の発生自体が好まれない
☑︎ ファンからだと思ったのに雇われ感想だったというヤラセ感
☑︎ 純粋な感想の中に有料感想が混じる不純物感
「有料感想屋」早速Twitterで荒れている人もいるわけですが、同人界隈の慣例や認識が大きく関わっていると思いました。
同人は、商業ベースに乗れない程度の規模でオリジナル作品を作る一次創作と、商業作品のファンアートを行う二次創作に分かれます。
主に二次創作では、金銭が発生する、特に利益が発生する行為は慎むべきといった価値観があります。
二次創作では商業作品の知名度などやキャラクターなど「他人のふんどし」を借りた状態な上、基本的にどれだけ売り上げがあったとしても公式へのバックはありません。
自分たちの活動が咎められないのは、公式のお目溢しがあるからであり、基本的に利益が出るような活動は控えるべし(トータルコストでもトントンぐらいを目指すべき)という考えが強いです。
なので有料感想屋は営利行為の側面が強く、反発もそれなりにあるといった状態です。
(正直、1感想500〜1000円程度だと赤字だと思いますけどね。代筆屋でもないし)
作家という存在は基本的に(特に直接金を払ってくれる)ファンの感想というのは重要なものです。
今後の作品展開の方向性を決めるものもあれば、単に日々の創作の糧にしたりするため、ファンの感想は文面の長短に関わらず貴重なものです。
そもそも感想を送る人というのは数が少なく、そのため「感想をくれる人=(コアな)ファン」という図式が出来上がりがちです。
(ここでは分かりやすくアンチと粘着は含めません)
そうした時に、金で買った感想が紛れ込んでいる場合、不純物として認識する作家がそれなりに発生しうるため、特にセンシティブな場合は逆にモチベーションを落とすことにつながります。
「感想屋」とステマ問題
☑︎ 依頼者との関係が明示されていない場合、ステマになる可能性がある
☑︎ 透明性の低さからステマと判断されて炎上する可能性がある
勘の良い方は薄々気付いてると思うんですが、金を貰ってポジティブな感想を書くって所謂「ステマ行為」スレスレなんですよね。
一時期話題になったステマとは…
ステマ(ステルスマーケティング)とは、基本的には、消費者に対してそれが宣伝であることを隠して宣伝を行う行為のことです。例えばネットや雑誌などで宣伝を行う場合、通常であれば広告であることを明示します。
では、ステマは具体的にどのように行われるのでしょうか?ここでは代表的な手法をご紹介します。
⒈一般消費者、ファンを装ってブログ記事や口コミを投稿する
2.芸能人やセレブなどに、広告であることを隠して商品を紹介するように依頼する
3.PR記事であることを明示せずに、メディアに商品やサービスに関する記事を紹介してもらう
感想屋の場合、「ファンを装ってブログ記事や口コミを投稿する」に近いパターンかと思います。
納品方法は各サービスによって、どういった方法で口コミが納品されるのか変わると思いますが、場合によっては特定の作家に対してステマ行為等のトラブルに巻き込んでしまう可能性あります。
そういった問題も含めて、利用には慎重な判断が求められるでしょう。
フィードバックを金で買うという手段
☑︎ 感想文ビジネスは既にココナラなどで行われている
☑︎ 感想文の「添削」や「作成手伝い」などもある
そもそも有料でフィードバックを貰うというのは今に始まった事ではありません。
ココナラでは「感想」などで検索すると、感想文代理作成から添削まで色々なものが出てきます。
「感想屋」さんはこれを大っぴらにTwitterやnoteに持ってきたに過ぎない存在と言えるでしょう。
物は使いようなため、作家自身がフィードバックとして依頼すれば、自分の作品のクオリティチェックが出来るかもしれません。
また、「感想文の作成手伝い」であれば、語彙力がなく長文を構成する能力にやや欠けていても、添削によって自分自身の感想を作家に伝えられるようになるかも知れません。
「有料感想屋」を査読係として使う
☑︎ 有料サービスを活用してチェック行為をアウトソーシングする
☑︎ 他人の目を通して作品のクオリティを上げる
「有料感想屋」や「有料フィードバック」サービスが生きてくるのは、恐らく編集もついていない、出版社も通さない、インディーズ作品の作家でしょう。
kindleやオンデマンド印刷サービスなど、インディーズ作品の出版状況はどんどん手軽に身近になっています。
文章系、特にに誤字脱字や時系列など、最低限のクオリティを担保するには他人の目を入れたチェックが欠かせません。
有料フィードバックを使うことによってチェック作業をアウトソーシングし、自費出版でのクオリティを担保する手段としては中々良いのではないでしょうか。
金額と質を吟味する
件の「感想屋」さんは、読書時間やプレイ時間等、作品調査も含めるとかなり安い金額を提示されています。
金額=質とは言いませんが、ある程度作業ボリュームがある事を考えますと、時給換算した場合に赤字となるようなサービスの質は疑った方が良いでしょう。
ちなみに「感想屋」さんの初レビューはこちらの記事となります。
ちなみに、この初回感想は「全年齢の作品に相応しくない単語が含まれている」等の観点から同作品ファンの間で炎上しているようです。
公開ブログ型の「有料感想屋」を利用する場合、納品が公開形式だと思ってもみないレビュー内容が投稿される可能性もあります。
知った時には既に炎上状態を避けるためにも、事前に認識を合わせる必要があるでしょう。
サービス利用時のチェック観点
☑︎ 事前に条件を指定できるか
☑︎ 文字数やボリューム感、リテイク回数の想定が合っているか
☑︎ 依頼対象作品をどのように共有するか
☑︎ 納品形式はどうなっているか
☑︎ 守秘義務等のポリシーがしっかりしているか
☑︎ ステマにならないようPRタグ等の透明性を確保できるか
感想を依頼する時点で、事前に「性的な話題を入れない」「他作品と比較しない」等、条件を指定できると事故を減らせる可能性があります。
感想の誘導行為として忌避されるかも知れませんが、金銭を支払って依頼側のモラルを疑われるような内容を発表されてしまうリスクを下げる効果があります。
また、事前に文字数などのボリューム感や、リテイクの有無と回数などを確認する事で、納品時に揉める可能性を下げることが出来ます。
感想を書く対象の作品の共有方法もどういった形で行うのか、費用はどうするのか予め確認しておく事で予算を検討しやすくなります。
納品の形式も、ファイルなのか、ブログやSNSなのか確認し、ブログやSNSの場合、投稿前にチェックする事が可能かどうかも併せて確認すると良いでしょう。
未公開作品の査読や校正を行っていただく場合、当然作品を漏洩させない等のポリシーをきちんと提示できるか、守っていただけるかをしっかりと確認してください。
(ここをしくじると普通に裁判沙汰になります)
SNSのコスメレビュー等を見て分かる通り、近年はステマと認識された場合は非常に炎上リスクが高く、報酬が発生するレビューの場合はPRタグなど、広告である事をキッチリと明記する必要があります。
ゴーストライターとして書いてもらった内容を自身で公開する場合には不要ですが、相手の媒体に掲載してもらう場合は、金銭や報酬の流れが分かりやすいように、PR表記と共に提供元を表記するようにしてください。
(特にファンが布教として依頼する場合、公式がステマをしている等の認識に繋がらないように配慮を行ってください)
「有料感想屋」を利用したり、他人に直接金銭や報酬・現物を提供してレビューを投稿させるという行為は、金の出所が「企業」か「私人」の違いに過ぎません。
ステマ疑惑という噂が立つだけでマーケティング上での信用を損ないます。
くれぐれも、友人と漫画やゲームの貸し借りをした以上の事態になり得る事も念頭においてください。
まとめ
☑︎ 同人系作家の場合、「有料感想屋」は嫌がられる場合もある
☑︎ 商業作家の場合、ステマ炎上騒動に発展する可能性もある
☑︎ ココナラ等では「感想代行屋」の他に「作成手伝い」もある
☑︎ 作品の発表前なら「査読・校閲」などの手段にできる可能性がある
個人的に、「有料感想屋」を雇うぐらいのファンがいるというのは、すごいことだと思います。
ステマはともかく、金を払ってでも誰かに作品を読ませたい、金を払ってでも感想を生み出したいという精神は、「推しの広告を流す」布教精神ぐらい熱いことだと思います。
ただ、同人界隈では長文感想に対して、「感想屋」という負のイメージが生み出され、また「有料感想屋」という金銭が絡むとマイナスイメージになる問題があります。
上記の点を踏まえて、ファンの純粋な長文感想に対して「有料感想屋」を利用したなど虚偽の情報を流して作家にダメージを与える等の手段されることもあり得ます。
出来れば、たとえ拙くても直接感想を送る事、送れる力を身に付けていくことが、作家とファン双方の幸せに繋がるような気がします。