第77回 007は二度死ぬ(1967 英)
ショーン・コネリー追善企画を9月23日にスタートしたのには理由があります。というのも、この日は丹波哲郎の誕生日です。
というわけで、私のTwitter人生で最もバズったツイートのお礼も兼ねて『007は二度死ぬ』でお送りします。
監督が派手な映画に強いルイス・ギルバートに交代し、サムライゲイシャな日本観で世界の度肝を抜く、コネリーボンドの特有のアホっぽさが頂点に達した色んな意味で記念碑的映画です。
丹波哲郎演じる公安のエージェントのタイガー田中がコネリーボンドのベストパートナーと言うべき活躍を見せ、浜美枝と若林映子のアジア人初のボンゴガールコンビはひたすらに美しく、日本映画黄金時代は洋画に当たり負けしないパワーを秘めていたんだと感心させてくれます。
アホ映画ですがスカイアクションに非常に気合が入っており、見ていると実に楽しい作品でもあります。また、遂にブロフェルドがボンドと対面するのもシリーズにおいて特筆すべき点です。
そして何より、タイガー田中は007史上指折りのボンドボーイであり、その色気たるやスタッフに掘られても致し方なしというレベルです。この東西のダンディズムの融合こそゲイの美なのであります。
007は二度死ぬを観よう!
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真面目に解説
お寒いジャパン
何と言ってもこの映画を決定付けているのは絶妙にズレた変な日本の風景です。そして、その珍妙な風景の描写にかなりの尺が割かれます。
これはイアン・フレミングが日本文化に大きな関心を持っていた事の反映であり、同時にこういう日本は世間の興味を引くだろうという計算です。そしてそれは大当たりでした。
勿論これは日本でも例外ではなく、ある種のカルトムービーとして認識されているのはご存知の通りです。
ボンドはそういうフレミングの趣味を反映してケンブリッジで日本語を学んだ事が判明し、また原作ではパブリックスクールで自分で柔道部を作ったという設定になっています。
これは突飛な話とも言い切れず、イギリスは歴史的にレスリングが盛んであり、その延長で戦前から日本の柔道家が普及活動に身を投じて成功を収めていたのです。
フジヤマ!ゲイシャ!
従ってお決まりのエロいOPも純和風で、今回はゲイシャショーです。シルエットですが乳首が見えるのですから、ついに007もここまで来たかと感慨深い物があります。
ゲイシャのシルエットの背景には海と火山。西洋人の日本に対する雑な認識が見て取れますが、中国と混同してないだけましと言わなければいけないのでしょう。
西洋人の言うゲイシャとは即ち着物姿でスキヤキ作ってくれて歌舞音曲とエッチなサービスを提供してくれる都合の良い非実在女性です。そんな芸者が実在するなら花街が衰退するわけがありません。
ただ、このゲイシャ観がコネリーボンドとがっちり噛み合っていたのも事実で、ボンドはいつにも増してモテモテです。ショーン・コネリーになら芸者さんも外国人の考えるようなサービスをと思うのは無理からぬ話です。
主題歌を歌うのはフランク・シナトラの娘のナンシー・シナトラ。映像だけでなく歌の方も露骨にセクシー路線に舵を切っています。
時代は宇宙だ!
この時代はアメリカとソ連の宇宙開発競争が加熱していた時期で、それがフィクションの世界にも反映されています。
今回のスペクターは米ソの宇宙船を宇宙飛行士ごと拉致して宇宙開発競争に割り込むという大胆な計画を実行します。その基地が日本に作られたわけです。
基地はブロフェルドの趣味をもろに反映して火山湖の下に隠れています。原作ではこれが城に隠されていたのですから、我が国の特撮は明らかにこのノリに引っ張られています。
ですが、スペクターの宇宙開発は明らかに英国面に毒されています。宇宙船を後ろから食っちゃうなどというのは今ではアホ丸出しですが、これが大作で許されるあたり、当時は宇宙に今以上に夢があったのでしょう。
アメリカとソ連が宇宙船を奪ったのは相手だと互いに疑り合うのをイギリスが調停しようと奮闘するのが笑いどころです。イギリスは焚き付けて漁夫の利を狙うのが本当ですから。
俺の名演に酔え!
ロック様ことドウェイン・ジョンソンが007の悪役にかねてから立候補しているのは有名ですが、それは本作と無関係とは思えません。
日本でスペクターの手足となっているのは大きな製薬会社を経営する大里(島田テル)という男ですが、この大里がボンドにガタイの良い殺し屋を差し向けます。
この名無しの殺し屋は結局ボンドに敗れますが、大立ち回りして刀まで振り回して実に良い仕事をします。
演じたピーター・メイビアはハワイのプロレスラーで、ジョンソンの祖父です。あの一家はプロレスを家業にしているのです。
『ゴールドフィンガー』の時点で既に半隠居状態だったオッドジョブと違って若手なので元気一杯です。一番すげえのはプロレスなんだよという事なのでしょう。
色気のタイガー田中
ボンドはスペクターの秘密基地を探す為に香港で死んだ事にして日本に潜入します。なので「二度死ぬ」わけです。
日本でボンドに協力してくれる公安の大物が、丹波哲郎演じる我らがタイガー田中というわけです。
田中は丸の内線に自家用車両を持ち、豪勢な自宅にはマッサージ嬢を4人も侍らせ、『ロシアより愛をこめて』のケリム以上に間違った東洋的権力を誇示していきます。公安に本当にあんな力があれば日本はこんなに外国にナメられやしません。
丹波哲郎が選ばれたのは以前にも監督であるルイス・ギルバートの作品に出演した事があるのが決め手になったそうですが、大霊界に片足を突っ込んで人間を超越していた晩年と違って色気むんむんです。
コネリーより大分年上なので、ボンドに振り回されつつも兄貴分的ポジションを崩さないのも滾る点です。ボンドのベストパートナーの一人なのは疑う余地がありません。
ただ、丹波哲郎は本作を嫌っていました。英語で芝居をしたのに声を勝手に吹替えにされたからです。
それをおもんばかってか、古い吹替版は丹波哲郎と浜美枝は自ら声を吹替直しています。そういう観点では本作は吹替で観るべき映画の一つなのでしょう。
男が先で女が後
というのはタイガー田中が自宅でボンドと一緒にマッサージ嬢にサービスさせながらのたまった今では許されないパワーワードです。
このご奉仕シーンは完全にトルコ風呂であり、世の少年に夢を抱かせるものでした。マッサージ嬢が女はコネリーの胸毛が好きと明言させてしまうのも、コネリーの髪と反比例してシリーズが巨大化していった事の表れなのでしょう。
ちなみに、コネリーはロケ中ずっと品川のトルコ風呂を貸し切りにしていたというのですから事実は小説より奇なりです。
さて、本作で何と言っても特筆すべきは、ボンドガールがちゃんと日本人である点です。有色人種のボンドガールは本作が初であり、メイン二人体制なのも画期的です。
前半のメインになるのは公安がボンドの迎えに寄越したアキ(若林映子)です。この作品における女性観は上述の通りなので見事なゲイシャぶりで、ヨーロッパ娘より一層チョロくボンドの胸毛に堕ちます。
この直後に引退してしまったので若い人にはあまり知られていない女優ですが、トヨタ2000GTを乗り回したりとかなりの武闘派であり、顔が西洋人好みだとかで海外ではキッシーよりアキの方が人気があります。
逆に後半のメインになるのが、潜入捜査の為に日本人の漁師に化けると称して見え見えの和装でコスプレしたボンドと偽装結婚を強要されるキッシー鈴木(浜美枝)です。
何しろ海女さんに化けているので基本水着であり、とってもチャーミングです。彼女にセクシャリティを決定付けられたおじさんは多かろうと思います。
最初は偽装結婚なのでボンドと寝ない姿勢でしたが、結局は実質ゲイシャなのでボンドの胸毛に埋もれていきます。
ちなみに、浜美枝は泳ぎは得意ではなかったそうで、水中シーンはロケに同行したコネリーの奥さんが吹き替えています。
二人とも『キングコング対ゴジラ』に出ていたのが目に留まって抜擢されたそうですが、このキャスティングは本来逆で、尚且つキッシーはちょい役でした。
ところが、英語力に問題のある浜美枝は途中で降ろされそうになり、丹波哲郎が「浜は飛び降り自殺すると言っている」と真偽不明の脅しでギルバートを揺さぶってこれを阻止し、役を入れ替えて出番を大体半々にすることでバランスを取った経緯があります。
海女さんだけに身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれという事か、これはファインプレーだったと思います。何と言っても浜美枝の方が水着は似合います。
ニンジャ!カラテ!
贅沢好きの田中はなんと忍者軍団を従えています。ニンジャなくして何が日本ロケかなという事なのでしょうが、これは本作のアホさ加減を象徴する一幕です。
姫路城の壁を傷つけて怒られるのも厭わず手裏剣を投げ、各種の武術を明らかに見栄え重視で披露して忍者軍団は絶好調です。
このシーンは極真空手が協力して撮影されました。商売上手の大山倍達はこの機会を逃さず、コネリーに名誉段位をプレゼントして権威付けの道具に利用しました。
忍者は当然ながら秘密兵器を保有しているので、田中はMばかりかQの職分まで冒しにかかります。
煙草に仕込んだロケット弾が実に馬鹿馬鹿しいですが、私が注目したいのはニンジャの標準装備だというジャイロジェットピストルです。
これは見た目は拳銃っぽいですがロケット弾を発射するロケットランチャーで、恐ろしい事に実在します。
ところが、小指ほどの大きさのロケットなど威力も命中精度もたかが知れているので全く使い物にならず、知名度ばかり高くてプレミアが付いています。とにかくロケットがもてはやされた時代だったのです。
アキが乗っているオープンカー仕様のトヨタ2000GTも非常に目を引きます。Qの作ではないので厳密にはボンドカーではありませんが、ファンから非常に人気がある名車です。
トヨタ2000GTは限定生産で今では何千万円もします。ましてオープンカー仕様は本作の為に作られた特注品であり、どんなボンドカーより高価なのは疑う余地がありません。
ボンドは俺達の物
MI6だって負けてはいられません。M(バーナード・リー)とマネーペニー(ロイス・マクスウェル)はなんと潜水艦にMI6の臨時支局を開設し、香港までボンドを迎えに行きます。
イギリスが植民地を根こそぎ失って東洋艦隊を解散させるのはこの数年後の事です。ロイヤルネイビーが名目だけでも世界一だった最後の時代を切り取っている悲しい映画です。
Q(デスモンド・リュウェリン)は『サンダーボール作戦』に続いて再び出張して来て、ボンドが「リトル・ネリー」と呼ぶオートジャイロを用意してくれます。
このネリーが凄く、機銃、火炎放射器、ロケットランチャー、誘導ミサイルと、男の夢で明らかな過積載です。それだけにボンドはこれに乗りたかったのでしょう。
ネリーに乗ったボンドとスペクターの差し向けて来たヘリコプターの空中戦が物凄く、この映画の一番の見せ場です。
空中カメラをフル活用したカットは当時としては出色の迫力で、ここで『ボンドのテーマ』が流れる事からも作る方も一番気合を入れたのは明白です。
このシーンに限らず本作から撮影監督になったフレディ・ヤングの仕事は見事であり、流石にオスカーを3つも持っている男だと感心させられます。オスカーを持っているボンドはコネリーだけなのですから。
逃げるブロフェルド
ブロフェルドは秘密基地に陣頭指揮に来ていて、大里の右腕としてボンド暗殺を狙って失敗したナンバー11ことヘルガ(カリン・ドール)をピラニアの池に放り込んで粛清したりと相変わらず部下を大切にしません。
そして、ついには基地に潜入してきたボンドと対面します。前作まではアンソニー・ドーソンでしたが、本作以降は毎回役者が変わるようになり、本作では『大脱走』にも出ていたドナルド・プレザンスになります。
何しろブロフェルドが顔を出すというのは大変な事ですが、温和そうに見えてヤバい奴に強いプレザンスなのでいかにも変態っぽく仕上がっています。
BL的に解説
ヘンダーソンホモ説
ちょい役ですが、本noteではこの人を見逃すわけにはいかないのです。ボンドが日本の案内役としてMに紹介されたヘンダーソン(チャールズ・グレイ)は相当なガチホモです。
ヘンダーソンは戦争で日本軍と戦って右足を失ったというのに20年に渡って日本に暮らし、純和風はちょっととは言いつつ和服を着こなして和風生活を満喫しています。
つまり、ヘンダーソンは己の足を奪った国に進駐軍として赴き、そのまま気に入って居残っているのです。それこそMI6やCIAに消されたくないので名指しは避けますが、こういう風に日本に居残った人には非常にゲイが多いとされます。
本作の公開された1967年の時点で同性愛は欧米の多くの国で違法であり、イギリスも例外ではありませんでした。タナーの助力空しくチューリングは去勢されたのをこのシリーズで何回訴えたことか。
しかし、日本は違います。日本の歴史において同性愛を罰する法の存在は僅かな地域、僅かな期間における例外に過ぎず、それとて全くの不徹底でした。ホモだけにケツの穴の大きさが根本的に違うわけです。
それだけに、バレたら殺されるような国に生きるゲイにとって日本は天国でした。バレても品性下劣なアホノンケに気味悪がられる程度で済み、物価が安くて会う人皆がちやほやしてくれる。そりゃあ帰りたくないと思うのは当然です。
ヘンダーソンは豪勢な暮らしをしているというのに、女中は雇っていてもタイガー田中のようにゲイシャを侍らせていません。つまり、隠す気さえないガチホモという事です。
ヘンダーソンがオーストラリア人というのも注目すべき点です。オーストラリアは流刑地であり、大陸それ自体が刑務所でホモばかりというのは次のQがゲイの仲間と一緒に世間に広めた世界の共通認識です。
その上先住民のアボリジニは伝統的に広く同性愛に親しんできました。白人は彼らを皆殺しにしましたが、それはホモのホモ嫌いが嫉妬で暴走したという側面があったと私は思えてならないのです。
つまり、ヘンダーソンはアボリジニの逞しい青年に掘られて男を覚え、水野先生の分身である山下大将が陥落させたシンガポールでサムライの子孫に掘られるうちに、ホモの楽園ジパングに骨を埋めるケツ意をしたのです。
とにかく、BL的にはヘンダーソンがホモであるという前提がこの世界観を説明する根幹になりるのです。それに、ヘンダーソン演じるチャールズ・グレイは後々えらい事になります。
悪の世界はガタイ専ブーム
『ゴールドフィンガー』のオッドジョブの成功以来、007シリーズで変態超人が欠かせざる存在になったわけですが、本作ではその傾向が顕著です。
大里を殺す為に差し向けた殺し屋からしてピーター・メイビアです。彼は実に良い仕事をしましたがハワイアンであり、日本が舞台の本作に出てくる必然性に欠けます。
ブロフェルドに至っては全くの役立たずであるハンス(ロナルド・リッチ)なる大男を従えています。
これは偶然とは思えません。私はここで大胆な発想に至りました。オッドジョブ効果です。
おそらく、オッドジョブがボンドをあと一歩まで追い詰めたという情報がスペクターにも聞こえているのです。そして悪の世界では大男の殺し屋を雇うのがブームになっているのでしょう。成金がヒルズに住みたがるようなものです。
とすれば、オッドジョブと両横綱の位置を占めるジョーズもこの流れで仕事にありついた口なのでしょう。もっとも、彼はノンケに走った事で命を拾ったわけですが。
宇宙は女人禁制国境無し
誘拐されてスペクターにとっ捕まった宇宙飛行士達が妙に仲良さげなのも本note的には見逃せません。
宇宙開発競争は大国による代理戦争であり、宇宙飛行士は国家を代表して戦う宇宙戦士であり、核兵器よりも貴重な国家の財産です。
しかし、それだけに宇宙飛行士は心も身体も国家で最も優れた男達です。彼らは国家に奉仕する精神を持っている反面、国家の争いや差別など愚かである事が分かります。
なのでアメリカとソ連の宇宙飛行士が誘拐されて同じ房に入っていれば仲良くなるのは当たり前です。国境というコンドーム同然の便宜上の線の他に彼らを隔てる物などないのですから。
そして、刑務所で仲良くなればそれはもうヤっちゃうのは時間の問題。助けに来たボンドを助ける彼らの異様なチームワークの良さはそうでないと説明がつきません。
彼らは教会でも優等生だったはずなので同性愛は不味いと思うかもしれませんが大丈夫です。「地球は青かった。そこに神は居なかった」と最初の宇宙飛行士は言いました。
全てが終わり、ソ連が崩壊したなら、もう便宜上の線さえ彼らを隔てはしません。ブルーオイスターでウォッカを飲みながら、あのいい男のスパイの思い出と快楽に耽るだけです。
ブロフェルド×大里
大里も相当に怪しい男です。彼がノンケならアキを誘拐して拷問とかの展開があってもいいはずなのに、それがありません。
大里はホモの反面権力欲の塊です。恐らくこの時代の企業人にありがちな、丁稚から身を興したとかの立志伝の持ち主なのでしょう。
とすれば、丁稚奉公と男色の関係に触れなければいけません。これは割とガチ目の話です。
丁稚は江戸時代から高度成長期の制度の終焉まで、常に痔のリスクが付き纏いました。これは貴方の近所を探せばまだ見つかるだろう経験者から簡単に言質を取れます。それくらいありふれた怖い話です。
大里もそうして尻の痛みに耐えながら大企業の社長に上り詰めたのでしょう。そこへ目を付けたのが同じくホモのブロフェルドです。
また、この作品には一つ謎があります。失敗は許さないというスペクターの方針でボンド暗殺に失敗したヘルガを殺しながら、大里は助命された事です。
ここでブロフェルドの本命ドクター・ノオ説が生きてきます。東洋人にイカした秘密基地を与えて宇宙開発に横槍を入れるという構図は同じです。
つまり、ブロフェルドは東洋人フェチの気があり、大里にドクター・ノオの面影を見ていたのです。
大里にナンバーがないのもドクター・ノオと共通しています。ブロフェルドは正室には番号を与えないという方針なのかもしれません。
だから大里をヘルガよりは大事にしたわけですが、所詮大里はドクター・ノオの代わりであり、彼ほど優秀でもないので最後は始末されます。ブロフェルドはドクター・ノオの亡霊に取り付かれているのです。
タイガー田中×ボンド
『ロシアより愛をこめて』のケリム以来の相思相愛ボンド受けです。ともすれば、真のボンドボーイの条件はボンドが掘らせてもいいと思わせる存在である事かもしれません。ウィショーQはこの点完璧ですし。
浜美枝がスタッフのセクハラを恐れてニンニクを食いまくって自衛したのに、スタッフはゲイばかりで取り越し苦労だった事、丹波哲郎の貞操こそ危険であった事は何度も力説してきました。この辺を改めて解説し、BLに昇華するためにこの企画を組んだのです。
まず第一に、田中とボンドは行動様式が似ています。異様ないい男で派手好きで、女狂いの癖に女を大事にしません。
ボンドは男に惹かれるのを隠す為に女に狂っている隠れバイという立場を取る身の上としては、田中もそうとしか考えられません。
第一、公安のトップスパイという経歴が相当に怪しい物があります。日本の公安はかの特高警察の直系の子孫であり、世代的に田中も特高の刑事からキャリアをスタートさせたはずです。
何しろ丹波哲郎です。巡査教習所で掘られるのは必定であり、ホミンテルン伯爵の男妾になって潜入捜査とか、逆にホモレイプで拷問くらいの事はやっているはずです。
おまけに、田中の屋敷兼施設トルコ風呂のロケ地は鹿児島です。日本文化に並々ならぬ関心を持っていたフレミングが、薩摩が世界一のホモの名産地であった事実を知らないはずがありませんし、スタッフゲイばかり説が事実なら衆道の研究の末に鹿児島に行き着くのもまた当然です。
田中と手荒な初対面を果たしたボンドに合言葉を問われ、田中は「I love you」と答えます。合言葉とはいえのっけからカミングアウトです。ボンドに復唱させようとしてこれを決めたマネーペニーは一生の不覚でした。
日本通のボンドなので、当然日本がホモの楽園である事を知っています。この時点で田中の真意は分かったはずです。本物は本物を知るのです。
田中はとにかく自分の凄さを見せつけようとします。自家用丸の内線や自家用トルコ風呂、秘密兵器に忍者軍団と色々披露するのは全てボンドの気を引く為です。俺こそが東洋のMでQでフェリックスだというアピールです。
ところが、トルコ風呂で二人仲良く女にマッサージさせ、こんな事をしてくれる女はイギリスには居ないだろうと自慢したのは悪手でした。
ボンドは「居ない事はないかも」と明らかにマネーペニーを意識して返答したのです。ホモは最も男らしい行為ですが、それだけに田中も女であるマネーペニーの代わりにはならないのです。
話を戻しますが、トルコ嬢役の彼女達は田中の愛人である事は明白です。女優を二号にしたのではなく二号を女優にした社長の会社に居ただけに、彼もまた二号をスパイにしているのです。
つまり、田中は自分の女にボンドを奉仕させているのであり、これは間接ホモセックスであり、ボンドへの愛の証明です。
大本命のアキが暗殺されてしまったので代わりにキッシーを用意し、あまつさえ漁師になり切らせて結婚させるというのもBLを念頭に置くと相当です。
この偽装結婚は冷静に考えるとあまり必然性はありませんでしたし、第一バレバレです。とすれば何故田中はこんな事をしたのか?
ここまでくると田中とボンドの仲は盤石であり、後はきっかけ一つの状態です。つまり、薩摩の漁師は結納返しで仲人にケツを貸すとか何とか言って、適当なお床入りの儀式をでっちあげればいいのです。ボンドも嫌とは言わないでしょう。
また、最後に二人で忍者を率いて殴り込むというのは今までになかった展開です。ボンドは田中の助力なくして任務を成功させることが出来なかったのは明白です。
考えてみてください。これは日本の任侠映画のフォーマットです。二人は健さんと池部良なのです。それがいかに崇高なホモなのかは考えるまでもありません。
ブロフェルドに撃たれそうになって田中が手裏剣で阻止するというのも時代劇ではお約束のパターンです。時代劇スターにノンケらしい人間は居ないレベルなのは、私がいちいち解説するまでもないでしょう。
これは明らかに田中がブロフェルドにホモのジェラシーを燃やしてかました一撃です。ブロフェルドのヤンホモぶりはホモなら一目で察しが付くレベルなのです。
しかし、ここまでしたというのにボンドは偽装結婚したキッシーを捨てて帰って行きます。アンダーソンにはなってくれなかったのです。
こうなっては田中はキッシーを呼びつけ、ボンドにしたのと同じ事をしろと命じるのは明白です。そうして田中はボンドと間接ホモセックスをしながら、日本にボンドを連れてくる名目を探して策を巡らせます。
キッシーは浮かばれませんが、この世界の日本では常に男が先で女が後。諦めるより仕方ありません。
ボンド×M
今回のMはかなり権力のある所を見せつけてきました。マネーペニー共々狭い潜水艦に臨時の香港支部を作り、軍服姿でボンドを出迎えます。
潜水艦を改装して必要も無いのにいつもの調度品を運び込むなど、当時完璧に落ち目だったロイヤルネイビーには容易に出来る事ではありませんし、単なる無駄です。
Mは田中にボンドを盗られる事を恐れていたのでしょう。Mなら日本に田中というホモの凄腕が居るという話くらいは聞いているはずです。
つまり、Mはボンドを大事にしているというアピールの為だけに国費を無駄遣いしたのです。これを許すあたり、海軍のオーナーのあのお方は腐女子なのかもしれません。
なにしろ男色家の親戚はクリケットが出来るほど居る事ですし、ヒトラー×チャーチルの薄い本とか書いていた可能性だってあります。
ボンドがキッシーとボートでヤっている所へ下から潜水艦を浮上させて拾いに行くのも相当拗らせています。これはかなり危険です。それほどMはジェラシーに燃えているのです。
偽装結婚だけでもピンチだというのに、原作ではキッシーは神のお告げでボンドを生涯の伴侶と信じ、媚薬を盛って子供まで作ります。相当なヤンデレです。
重い女は危ない。Mはマネーペニーという典型例を秘書に使っているのでそれをよく分かっているのです。
そのマネーペニーも大喜びで浮上命令を伝えに行くあたり、この二人は呉越同舟の関係にあるわけです。とにかく、ボンドを日本から引き剥がす為に二人はわざわざ潜水艦で迎えに行ったのです。
ボンド×Q
田中を恐れたのはMやマネーペニーだけではなく、Qも同じだったのでしょう。何しろ田中は豊富な秘密兵器ばかりか忍者軍団まで抱えているのですから。
Qはわざわざネリーを分解し、鞄にしまって助手に持たせて来ました。これは変な話です。日本とイギリスが敵対しているわけではないのですから、最初から組み立てて持って来る方が合理的です。
これも田中への牽制と考えれば合理的に説明が付きます。ネリーの組み立ては、ボンドの命は常に私が支えているんだと二人に示すためのパフォーマンスなのです。
この揺さぶりが成功したのは田中が盛んにネリーをディスって自分達のヘリで行けと言い張り続けた事からも明らかです。
しかし、ボンドはネリーを選びました。これはQを悲しませないようにする為のボンドの愛なのです。Qを嫉妬させると道具に細工して殺して一人占めとかの危険な方向に走りかねません。
普段はQに押し付けられるようにして道具を持って行くのに、今回はQに頼んで来てもらったのです。田中もその愛の深さが大霊界を通じてわかったからこそ必死で抵抗したのです。
ここまでくると殆ど大奥物ですが、ホモは子供が出来ない分後腐れが無く、何と言ってもQとボンドは特別な関係です。忍術をもってしても引き裂く事は出来ないのです。
ボンド×ブロフェルド
このミッションはブロフェルドにとっても大仕事だったというのに、ボンドに魅せられた男であった事が失敗を招きました。
ボンドを殺す機会は例にもよって何度もありました。なのにその度に詰めの甘い所を見せて事態を悪化させていきます。
特に不味かったのはボンドとアキが寝ているところへ天井裏から糸を垂らし、毒を口に流し込もうとする方法です。これは失敗した上アキが巻き添えで殺され、ボンドを余計に怒らせることになります。
直接撃てば済んだ話なのにそうしなかったのはブロフェルドの変態性癖です。劇的にボンドを殺したいという欲望が合理性より先に来てしまうのです。
あるいは、これは放っておくとボンドと引っ付きそうな勢いだったアキを殺すのが最初から狙いだったのかもしれません。だとすればヘルガをあっさり粛清したのもより合理的に説明が付きます。ブロフェルドは女に嫉妬しているのです。
ボンドはボンドでMにも分からなかったこの事件の黒幕が、実はスペクターだといち早く気付きました。これはバイオレンスポルノにありがちな展開で、二人は心でもうセックスしているのです。
ブロフェルドはどうにか逃げ延びましたが、この一件で一層拗らせてしまったのは次の登場で明らかになります。メンタルの壊れたゲイの行き着く先など決まっているのです。
お勧めの映画
独自の統計(主観)に基づきマッチング度を調査し、本noteから関連作品並びに本作の気に入った方にお勧めの映画を5点満点にて紹介します
ショーン・コネリー追悼企画
『レッド・オクトーバーを追え!』
『007 ドクターノオ』
『アンタッチャブル』
『薔薇の名前』
『007 ロシアより愛をこめて』
『007 ゴールドフィンガー』
『007 サンダーボール作戦』
ご支援のお願い
本noteは私の熱意と皆様のご厚意で成り立っております。
良い映画だと思った。解説が良かった。憐れみを感じた。その他の理由はともかく、モチベーションアップと資料代他諸経費回収の為にご支援ください。
女が後なんて私は言いません
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