バルブタイミング調整
エピソード51
令和6年11月
バルタイのセットですが、まずZZR600のサービスマニュアルを見てみると
バルブタイミングがこんな風に書かれてます
IN EX
308° 292°
BTDC 55° BBDC 69°
ABDC 73° ATDC 43°
バルブの開き始めと閉じる角度が書いて有りますが、よく見ると大分広いです
タペットクリアランス+1mmリフト時の角度はもっと狭いと思うので、これはカムその物のデーターのようです
計算してロブセンターを求めると
《訂正》
IN 108° → 99° EX 116° → 103°
になったので、これを基本セットでバルタイを取りました(これは初めてZZR600のカムを入れた時の話しです。今回は前回のデータが有りますから、前回と同じバルタイでとりました)
《追記》
素組みの677ccにZZR600カムを初めて乗せた時はノーマルスプロケの合いマーク基準にバルタイをいじりましたが、3年半前に本気で組んだ時は上記の訂正前の間違った基本セットのせいで(バルタイをきっちり取るからスプロケの合いマークは無視)今一走らず、何度もバルタイを取り直しました(エピソード23,28)
詰めて行き100馬力出た時のバルタイは上記の訂正後のバルタイに近い物です
最初はなんだこの純正データは?組み合わせる パーツの違いでこんなになる?糞データか?
と思ってましたが、今は謎が解けて流石純正セットと思っています(笑)
何故、今回、間違いに気付いたかと言うとブログを読んだ方からロブセンターの計算間違ってませんか?とコメントを頂いたからです
そして間違いに気付き、全ての謎が1つに繋がりました
有難いコメントです
私はバルタイをいつもは1mmリフト法で取りますが、ZRXはカムまわりの隙間が狭くてカムがバルブを押し始めてから閉じるまでずっとダイヤルゲージを当てるのが難しいのと純正のカム山は左右対称になってる事が多いし目視でもそのようなのでZRXは最大リフト法で取ります
何より前回も最大リフト法でバルタイを取ってますので少しはデータも有ります
使う全円分度器ですが
こんな安物のやつです
最大リフト法の時は赤矢印の目盛りを読みます
0度から左右回転に目盛りが付いてますからINとEXがそのまま読み取れます
1mmリフト法の時は青矢印の目盛りを読みます
ちゃんと0度から左右回転に90度、180度の位置から左右回転に90度の目盛りが付いてます
ただ透明なので非常に見にくいので、いつも裏に白い紙を貼り付けようと思うんですが、やらず仕舞いで終わってます(笑)
今回、ヘッドの高さが少し変わっているのでスプロケは前回セットが決まって使用していた少し広げた物よりもう少し穴を広げた物を使用しました
バーニア加工したスプロケを使用する時、私はマニュアルに書いてあるスプロケの合いマーク等を無視しますが、事前にノーマルバルタイ位置の所でカムにポンチを打ってます
カムの位置を記録する為です
赤丸がポンチです。矢印がヘッドの上面ですが、横から覗いて2つの矢印のヘッドの上面とポンチが一直線に並んだ時がノーマルのバルタイ位置です
写真はわかりやすくする為に斜めから撮ってますが、今がノーマルのバルタイ位置です
広くバーニア加工したスプロケの長穴部分にノーマルバルタイ位置の目盛りをケガいてもいいんですが、それだとヘッド面研やデッキの面研をしてヘッドの高さが変わるとズレてしまいます
バルタイを後から取るからズレていてもいい訳ですが...
チューニングを進め、ハイコンプピストン、ヘッドやデッキの面研、薄いヘッドガスケット、コンロッド小端部の偏心、バルブシートを入れ替えてシートカットによるバルブの下げ加工、等の圧縮アップのチューンやハイカムによるリフト量アップ、ビックバルブによる傘径のアップ、これらのチューンは全て、ピストンとバルブのクリアランスが狭まっていきます
つまり、バーニア加工したスプロケを使い最初にカムを乗せる時にノーマルバルタイの位置が分からないとバルブとピストンが衝突してしまう可能性が有ります
その為に初めて組むチューニングエンジンの時、私はノーマルバルタイ位置からIN側を遅らせ、EX側を進めて組むようにしてます
今回は前のデータが有りますしポンチはカムをどの辺りで組めばいいかの目安にしてます
べつにポンチを打たなくてもエンジンの事を理解できてれば、ピストントップの形状と上死点の位置、燃焼室のバルブの位置を目視すれば、カムを乗せる時に4番のバルブがどのくらい下がれば、やばいか分かるんですがポンチを打つと何かと便利です
カムをバーニア加工したスライドスプロケはバルタイの変更だけでなくもう一つ便利な使い方が有ります
これは私が考えたやり方で他にもやっている方がいるかも分かりませんが、データの無い初めて組むピストンやハイカムやバルブで仮り組みをする時、1番ピストンと1番のバルブのIN側とEX側の1つずつだけ組み、広いバーニア加工のスプロケで、先程説明したマージンを見て組み付け、ピストンを排気上死点の位置で止めてスプロケのボルトを緩め、カムだけを1本ずつゆっくりと回して行き、ピストンに当たった所をダイヤルゲージでリフト量を測定し記録します
ピストンとバルブを全部組んで仮り組みしてクランクを回すとカムが常にどこかのバルブを押していますし、力の掛かりと抜けが有るのでゆっくりと定速でクランクを回すのが困難で、力をかけてジワっと回していてフッと軽くなって回った時にはバルブとピストンが衝突している事になったり、微かな当たりだと気付かない可能性も有ります
先に説明したやり方だとピストンは上死点で固定しバルブを押して行くので、当たるのが前提なので力の加減がしやすくバルブを痛める事が有りません
ピストンが排気上死点の時にバルブが何mmリフトすれば当たるか分かれば、マージンを取ってバルタイを取る事ができます
※マージンは排気上死点の少し前から必要です
バルタイの取り方はネットに沢山出てるので、今回はカムを乗せる時の注意や、便利なバーニア加工スプロケットの使い方を書きました
私は今回、ピストンとバルブのクリアランス測定はしていません
前回のデータが有りますし、変更点のシリンダーの高さは僅かだしバルブの傘径アップに対してリセスは充分だったからです
前回の時も上記のスライドスプロケ利用法ではなく古典的な粘土をピストンの上に置く方法で測定しました
と言うのも違うエンジンのピストン流用なのでバルブ挟み角が一緒かどうか分からないのでリセスの角度を確認したかったからです
さぁ、いよいよエンジンも完成に近づきました
もうすぐです
今回、紹介したスライドスプロケを使ったピストンとバルブのクリアランス測定方法やZRXで考えたエンジンの組み方などと言ったふうに、チューナー独自のノウハウや考え方は絶対にそれぞれ持っていると思います
ただ表に出てこないだけです
皆さんも色々と知恵を絞り、新しい発見をし効果を実感できれば立派なチューナーです