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ミュージカル曲翻訳①『The Count of Monte Cristo』より『A Story Told』

ミュージカル翻訳第1弾は、『モンテ・クリスト伯』を元にしたスイスのミュージカル『The Count of Monte Cristo』より、主人公のエドモン・ダンテスを陥れるモンデゴ、ダングラールそしてヴィルフォールの3人が歌う曲『A Story Told』の翻訳

概要

エドモン・ダンテスの婚約者のメルセデスに恋する、彼女の従兄弟のモンテゴ、ダンテスの成功を妬んでいる上に不正会計を見られてしまった会計士のダングラール、そしてダンテスに自分を失脚させかねない証拠を握られてしまった検事代理のヴィルフォールの3人。運命的に出会ってしまい、共通の敵がいるということを知ってしまった3人は、横恋慕、口封じ、保身のそれぞれの目的のために謀略を練る歌である。

和訳

モンデゴ:俺たちは仲間だよな、そうじゃないか?
ダングラール:そして利害は一致している。
ヴィルフォール:それなら、手を組もう。
ダングラール:この運命を信じて、罪を他に押し付けようじゃないか。
モンデゴ:俺たち全員、手段を正当化できる目的を持っている。
ダングラール:それなら、話し合っておこう
ヴィルフォール:そして、裏で事実を捏造してしまおう。

モンデゴ:詳細は全てぼやかして、秘密は隠しておこう。
ダングラール:信頼できる財務表に証拠を隠しておこう。何故なら歴史とは戦いの勝者が紡ぐ物語だからだ。少しほのめかすだけでいい。
モンデゴ:少しだけ嘘をつくんだ。
ヴィルフォール:無力な船乗りに証言させ、裁判にかけよう。

モンデゴ:真夜中に起きた出来事を誰が疑うだろうか? 鋳掛け屋は絶対にない。
ダングラール:仕立て屋もだ
モンデゴ:あいつの親父も、メルセデスもない。
ヴィルフォール:当然、看守もだ。

モンデゴ:全員同意したな。なら、用心深く、賢くやろう。
ダングラール:私たちの世間知らずな友人が、自分の嘘で捕まったように見せかけなければならない。この計画が成功させるために、私たちは一つの信念を共有する必要がある。「エドモン・ダンテスがシャトー・ディフに留まり、そこで一生を終えるということだ。」

モンデゴ:あいつが触れる最も柔らかいものは、石と闇だけだ。岩だらけの島の地下牢の最奥でな。

ヴィルフォール:何故なら、歴史とは、法律を作る者たちが紡ぐ物語だからだ。
ダングラール:少しばかり嘘を提供しよう。
モンデゴ:騙されやすい連中に、この寓話を信じ込ませるためにな。

ヴィルフォール:ダンテスの悪行をでっち上げた正しき男たちはどうなるだろうか?
ダングラール:金持ちに。
ヴィルフォール:尊敬される存在に。
モンデゴ:彼女の食卓に拒否されることもなくなる。

モンデゴ:俺が彼女の悲しみと苦悩の支えになる。俺がメルセデスの永遠に忠実な従者となるんだ。毎晩な。
ヴィルフォール:ダンテスが苦しまなくて済むことを望む自分もいる。だが、これはもう私か彼か、どちらかしかないのだ。
ダングラール:奴を幽閉して、忘れ去られるまで朽ち果てさせろ。
モンデゴ:そうだ、朽ち果てさせろ!

3人:何故なら、歴史とは、生き残った者たちが紡ぐ物語だからだ。
ヴィルフォール:私が署名し、イニシャルを記せば、これで公式になる。
ダングラール:公式になれば、それが真実となるのだ。

モンデゴ:3人が生き残るためなら、1人の若者の命など安いものだ。
ヴィルフォール:彼は支払わなければならない代償なのだ。
モンデゴ:愛と栄光のために、生き延びて戦い続けるための代償なのだ。

ダングラール:奴は邪魔者だった。そう、マルセイユに対する脅威だ。
ヴィルフォール:これが物語の筋書きだ!
モンデゴ:物語に従え!
3人:これで物語は終わりだ!

感想

なかなかえげつない歌詞である。自分が悲しみと苦悩をメルセデスに与えたくせに支える存在になると美しい決心のように言うモンテゴの執心……元から嫌っていた上に、排除せざる理由ができたために積極的に乗っかっていくダングラール……そして迷いつつも、自分を正当化して、必要な代償だったというヴィフォール……もちろん、これで物語は終わらない。彼らのこの企みが復讐鬼を誕生させ、自分たちの破滅につながるとは知らずに……

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