なぜ慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群で頻尿になる?
「慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群で頻尿になるのは何で?」
と患者さんや鍼灸師の先生からも聞かれることがあります。
「そういうもんですよ〜。」と はぐらかすことが多いのですが… ^^;
それは慢性前立腺炎では、外陰部・骨盤帯の痛み・不快感が主徴ですが、一方で下部尿路機能障害をも包含する症状症候群であり、頻尿(蓄尿障害)になる場合もあれば、逆に排尿障害(出しにくい)を呈することもあるからです。
今回は頻尿について少し考察してみたいと思います。
慢性前立腺炎で頻尿になる原因は何?
いくつか要因は考えられると思いますが、
一つに尿道ー膀胱反射が大きく関わっているものと考えられます。
簡単に言うと、慢性前立腺炎では、前立腺部尿道の炎症により、知覚神経(陰部)が刺激状態となり、膀胱が反射性に収縮(いわゆる過活動膀胱の状態)を引き起こす、というものです。
尿道–膀胱反射に関連する動物実験
この根拠として、一つ動物実験を示します。
頻尿(過活動膀胱の状態)のラットの尿道内に、リドカインを注入すると、排尿筋過活動が抑えられます。リドカインはいわゆる局所麻酔剤ですから、尿道の知覚求心性神経をブロックすると、膀胱の反射性収縮は抑えられる、と考えることができます。
つまり、尿道の知覚求心性神経の過敏状態は、過活動膀胱を引き起こすと考えられるのです。
余談ですが、間質性膀胱炎の治療で、リドカインの膀胱内注入をする方法がありますが、一過性に頻尿がおさまるのは、まさにこの機構が働いているからなのでしょう。
また、カプサイシン(唐辛子の辛み成分)を尿道内に注入して、しばらくすると、これもまた排尿筋の無抑制収縮は抑制されます。
これはカプサイシンによる脱感作により生じると考えられ、また、以上の結果から排尿筋過活動にはC線維(膀胱知覚に関わるとされる神経)が関与していることが考えられるのです。
C線維というと、医療関係の方なら「痛み感覚を伝える神経」と覚えているかと思いますが、下部尿路においては、C線維やAδ線維は尿意の知覚求心路として働きます。
カプサイシンは痛みを惹起する一方で鎮痛作用も有します。 このことは,カプサイシンに暴露された感覚神経終末(C線維)が他の侵害刺激に対して反応しなくなること (脱感作)によると理解されています.
まとめ
以上の研究結果から、慢性前立腺炎を代表とする、尿道内に炎症が及ぶような病態では、尿道求心性神経の活性化により、頻尿・尿意切迫感(過活動膀胱のような病態)を引き起こしていると考えられます。
逆の観点から言うと、前立腺・尿道内の炎症、疼痛を抑えるような治療は、疼痛緩和のみならず、頻尿の改善にも繋がることが期待できます。(もちろん、このような効果は薬剤・鍼治療などでもエビデンスが集積されつつあります。)
烏丸いとう鍼灸院 院長:伊藤千展
京都市中京区元竹田町639-1 友和ビル5F
TEL: 075-555-7224
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