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もう「ペルソナ」はいらない。Minimal、objcts.ioとアジャイルコスメが語る身近な人に向けた“ニューノーマルなものづくり”

アジャイルコスメは、ユーザーの声を集め、アップデートを繰り返していくスキンケアブランドです。

新型コロナウイルスの影響により、人々の時間の過ごし方や何を使うかの意識も変化したこの半年。私たちも作り手として、求められるものの変化や、これからのものづくりを考える機会となりました。

そこで、今回はそんな一連の時代の変化で、ものづくりにもどんな変化があったのか、新しいスタンダートが生まれつつある今、ブランドはどう向き合っていくのかについて、ACPが共感する2ブランドさんとの対談企画を開催。

参加してくださったのは、スペシャルティチョコレートを追求し続ける「Minimal - Bean to Bar Chocolate - (ミニマル)」の代表・山下貴嗣さんと、機能性とデザイン性を上質なレザーで追い求める「objcts.io」(オブジェクツアイオー)の製品開発責任者・角森智至さん

白金にあるobjcts.ioさんのアトリエをお借りし、それぞれ実際の製品を持ち寄っての今回の対談。「ほんとうによいもの」を追い続ける3人の、時には笑いに溢れ、時には真剣に語り合った濃い時間を前後編でお届けします。

最後に特別プレゼントのお知らせも。どうぞじっくりお読みください。

対談したのはこの3人

「Minimal - Bean to Bar Chocolate - 」代表 山下 貴嗣さん

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コンサル業界から未経験でチョコレートブランド「Minimal」を立ち上げ。日本人の繊細な味覚に合わせた素材本来の味わいを引き出す「カカオの香りが豊かで後味が軽やかな引き算で造るスペシャルティチョコレート」にこだわり、1年のうち4カ月程度は赤道直下のカカオ農園に自ら買付けに。

note:https://note.com/yamashita0902
Twitter:https://twitter.com/taka_minimal

Minimal - Bean to Bar Chocolate - とは?

2014年12月に東京・渋谷区富ヶ谷で誕生したクラフトチョコレートメーカー。 世界中のカカオ農園に足を運び、品質の良いカカオ豆を選び仕入れ、自社工房でカカオ豆から板チョコレートができるまでの全工程を管理し製造する“Bean to Bar Chocolate”は 世界最高峰のチョコレート品評会「インターナショナル・チョコレート・アワーズ」などで部門別の最高金賞を含む4年連続・合計61賞を受賞。日本の発酵技術を駆使しカカオ生産者と共にカカオ豆の品質を追求し、100%フェアトレードで買付している。生産者・消費者をつなぎ、新しいチョコレートの文化創りを目指す。

公式note:https://note.mini-mal.tokyo/
公式サイト:https://mini-mal.tokyo/


「objcts.io」デザイナー/製品開発責任者 角森 智至さん

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文化服装学院を卒業後、老舗レザーブランド土屋鞄製造所でランドセルの職人を経て、生産・製造管理も経験。“ものづくりの上に成り立つ個性”をデザインのコンセプトに、イノベーターをエンパワーする新しい製品をデザインしています。文化服装学院 非常勤講師としても活躍中。

Twitter:https://twitter.com/tsuno_11110
note:https://note.com/tsuno1023

objcts.ioとは?

世界をよりよい方向に前進させる“イノベーター“たち。モノを通じてその感性を刺激し、彼らが作り出す“何か“をより創造的にすることを目指すブランド。職人によるレザーの美しさと、高い機能性を兼ね備えるプロダクトがクリエイターを中心に愛されています。

公式note:https://note.com/objcts_io
公式サイト:https://objcts.io/

「アジャイル コスメティクス プロジェクト」代表 内保 友子

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アジャイル コスメティクス プロジェクト代表。大学卒業後、大手外資系メーカー2社で化粧品や消費財のブランド・マネジメントを担当。2018年にアジャイル コスメティクス プロジェクトに参画し、ブランディング・製品の開発から組織づくりまで、様々な分野でブランドをアップデート中です。

公式Twitter:https://twitter.com/AgileCosmetics
公式Instagram:https://www.instagram.com/agile_cosmetics_project/

逆風のなか生まれた「今ユーザーに必要なプロダクト」

ーー新型コロナウイルスの影響は各ブランドでも無視できないものだったかと思います。特にバッグがメインプロダクトだったobjcts.ioさんはかなり大変だったのではないでしょうか?

角森:僕たちがメインで作っていたバッグの消費については正直なところ逆風が吹き荒れていましたね。アメリカでも、コロナで売れなくなったものランキングの1位がスーツケースで、バッグもランクインしたといいます。

僕たちも何もしないわけにはいかないよね、と今ユーザーに必要とされるものを作ろうと考えて、デスクで使えるリモートワークプロダクトとして「Leather Desk Pad」「Leather Mouse Pad」「Leather Coaster Set」の3つを製作しました。

内保: 今までのバッグと、これらのリモートワークプロダクトは設計やコンセプトの立て方に違いはあったんですか?

角森:思想的にはバッグと共通してるんですが、開発の仕方は今までの延長線上から少し変えています。緊急事態宣言中にobjcts.ioユーザーの方にアンケートを送って、150人くらいからこの自粛期間についてどう感じているのかを聞きました。そこから彼らが欲しているものはなんだろうと思い描いていきました。

そこで見えてきたのが、リモートワークはプライベートな生活空間で仕事するがゆえに、プライベートと仕事の区別が付きづらいという課題でした。オンオフの切り替えができなくて、結果的に深夜まで働いてしまっている人がたくさんいたんです。

そこで仕事道具としての性能は高い前提で、オンオフを切り替えられるツールがいいよねとなって、デスク周りで使えるアイテムでなにか作ろうと考えたんです。

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角森:このデスクマットなんですが、ここの棒状の部分、何だと思いますか?

内保:なんだろう、滑り止め?

角森:実は、PCの排熱機能なんです。PCが傾くことで隙間が生まれて熱を逃してくれるという。

山下:へぇ〜すごい! 中の芯も革?

角森:革です。外装部分に使っている革よりも、質感が硬い革を使うことで耐久性と上質さを担保しています。

内保:たしかにZoomミーティングが続くとPCがほんとに熱くなりますよね。これはありがたい。

角森: ただの革を切っただけのマットだったらobjcts.ioらしい機能性がないなって。使う人にとってきちんと機能性があることがobjcts.ioらしい体験につながると思っています。

デザインとして純粋にかっこいいブランドって他にもたくさんありますが、デザイン性だけでなく、どんな構造が必要なのか深掘って生まれるのがobjcts.ioらしさですね。それはランドセルというデザインと機能性のどちらも必要なものを作っていた僕だからできることでもあるのかもしれませんね。

トライアルサイズで見えたスキンケアの新しい使い方

内保:リモートワーク中のオンオフの切り替えという意味だと、ACPがこの自粛期間中に出した「ACP 14DAYS キット」という「白いオイル」と「時計遺伝美容液」のトライアルサイズも関係あるかもしれません。

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内保:もともとトラベル用に開発していたものだったんですが、その矢先にコロナの影響が出始めてそれどころじゃなくってしまい…。

でも、そこでユーザーの声を聞いていくと、外出できなくなったことにより「おうちでスキンケアとかセルフケアを今までより丁寧にするようになった」「香りをもっと厳選するようになった」といった方が多く、「14日間集中ケアのためのキット」として発売することにしました。そして実際に使ってくださったお客様からは「天然の香りに癒やされて気分転換になる」「香りが良いので、家で仕事しているときの気分転換用にデスクに置いておいています」という声をたくさんいただいたんです。

スキンケアは朝と夜がメインですが、オンオフの切り替えで昼間につけるという使い方は新しく、しかも香りへの重要度がぐっと上がっているのだと思いましたね。

角森:香りって気分を変えるのにとてもいいんですよね。僕もわざわざ仕事する前に香水つけてました。

内保:あと、男性のお客様が自粛期間中にぐっと増えました。対面の時も外見はもちろん気にはしていたものの、より「顔」に視線が集中して身だしなみに気をつけるようになった方が多かったんです。

対面での商談だとジェスチャーや姿勢など、いろんな部分で自分の熱意を伝えるじゃないですか。でも、オンライン会議になってからは、顔と声でしか伝えられないですよね。そして相手に集中して顔を見られるようになりますし、自分自身でも自分の顔を直視する場面が増えたのもあると思います。

山下:おじさん史上、自分の顔を見る時間が一番長かったでしょうね、リモートワークって。まあ僕もそうなんだけど(笑)。

内保:14日間と期間を区切っているのも、自粛中に始められることを探している方にとって始めやすさがあったのかなと。

あとはボトルの大きさも結果的にデスクに置きやすいサイズだったのではと考えています。一般的にトライアルサイズってサシェ(パウチされた小袋)や数回分の本当に小さいサイズが多くて。その点今回の「2週間集中ケアキット」はほどほどの大きさがあるのがデスクに邪魔にならないけど置きたくなる存在感でよかったのかも。

角森:白のフォントベースデザインがシンプルだから、横にぽんと置いておきたいですね。

山下:Minimalのチョコと並べてもぴったりじゃん(笑)。それにしても、このエピソードって面白いですね。トライアルサイズは携帯性があるから外に出る時のほうが使われやすいのかなと思ったんですが、小さいからデスクに置いて気分転換できるっていう。これは今までになかった新しいインサイトかも。

“棹ものケーキ”が売れた理由

山下:大きさの話でいうと、僕らのMinimalでも面白いことがあって。僕たちはもともと板チョコをメインにしているんですが、この自粛期間中に棹もの(注:長い直方体、長い円筒形、長い三角形などをしたお菓子類のこと)のチョコスイーツがすごく売れたんです。

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山下:リモートワークで家族がずっと一緒の空間にいると、けっこうケンカも起きるじゃないですか。でも「ちょっと休憩してチョコケーキ食べようよ」ってなれば、空気が柔らかくなるんですよ。チョコケーキは誰かとコミュニケーションのきっかけになって、一瞬でおいしい幸せな時間が作れる。棹ものなら何人いても対応できるし。

それがコロナを通じてすごく変わった点ですね。僕、いまのこの状況で改めてチョコレートの持つ価値ってなんだろうって考えたんですけど、シンプルに「食べておいしくて幸せな気持ちになる」に尽きるんですよ。そこにあんまりうんちくはいらなくて。

もともと僕らは板チョコメインでやってたんですが、3月の半ばくらいから、ちゃんとこういうチョコケーキもやっていこうと話してたんです。家族や恋人、どんな関係性でも誰かと家でコミュニケーションのツールとして、幸せな時間の消費として、僕たちのチョコを食べてもらおうと。意図的に仕掛けてた部分もあるし、自然発生的にいわゆる贅沢スイーツが求められている空気もありました。

「妻のためにできること」が生んだウォレットバッグ

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角森:それめちゃめちゃ共感するなあ。僕は1歳半の息子と妻がいるんですが、自粛期間中だと長いこと一緒にいるのに、うまくコミュニケーションがとれないこともあって。

そんな中、家族で散歩したりテラス席のあるお店でごはんを食べたりくらいしか楽しみがないんですよね。実はそんな妻のためにウォレットバッグを作りました。

山下:お、角森さん全人類にモテようとしてますね?(笑)

角森:めちゃくちゃプライベートの話なんで言うか迷ったんですが(笑)。
ウォレットバッグに似た製品っていろんなブランドから出てるんですが、機能性重視なものが多い印象で。妻が「大好きなMame Kurogouchiを着て出かけるときに、テンションの上がるものが欲しい」と言っていて、僕にできることがないかなと思って作ったのがこれだったんです。

内保:素敵!

山下:めっちゃいい話だなぁ。

角森:(この対談当時は)まだ販売はしておらず、僕のTwitterやnoteで紹介しただけなんですが、いまところ反響がすごく良くて。さっき紹介したリモートワークプロダクトがユーザーの声を拾い上げながら開発されたのに対して、このウォレットバッグはたった一人の身近な人の声から生まれたものなんですが、こうして他の方にも欲しいと思ってもらえるのは嬉しいですね。

21世紀のものづくりに「ペルソナ」はいない

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山下: いまの角森さんの話を聞いて思ったのが、「ユーザーはこういうものを求めてる」ってメタに置いて課題を抽出することは出来ると思うんですよ。「アフターコロナで求められるのはこれだ!」みたいな。

だけど、最終的に多くの人が行き着くであろうその課題に向き合うんだったら、そこからどれだけ解像度を上げられているかっていう視点がないといけないと思うですよね。そういうみんなに共通する抽象と、ひとりひとりの具体を行き来しながら作り上げていくのが僕が考える21世紀のものづくりだと思っていて。

そういう広義でのデザイン、つまり身近な誰かにとっての問題解決をちゃんと行っていくことが、最終的な消費行動のコンセプトに落ちていくんだと思うんです。で、この3ブランドはそういう意味ですごく近いんです。

ぶっちゃけ、僕あんまりペルソナっていうの苦手なんですよ。ペルソナって作っても、実際そんな人って存在しないこともよくある話で。でも、目の前に困っている人はいるんです。

コロナだって社会の変化の一つなんですよね。だから、その中で「個人がどう困っているのか」ということに目を向けていかないとと思っています。とはいえ同時に、商売として成立するようにチューニングはし続けていくわけで、そういう意味でACPさんのアジャイル開発が活きてくるんじゃないですかね?

内保:たしかに。「コロナだから」「おうち時間が増えてるから」は一時的な変化であって、もっと深いところでのユーザーが求めるものが変わっていってると思うんです。だからこそ、私たちのユーザーの声を集めて短期間でアップデートしていく開発方法は、一人ひとりの変化をすくい上げながら、ただそのまま反映するのではなくプロの視点で抽象化して、より良いプロダクトにすることなんです。

みんな、自分にとってより本質的なものを選ぶようになっているんですよね。今までって外に出ていたから、流行りや人に見られてかわいいと思ってもらえるものを選んでいたと思うんですよ。特にコスメはその傾向が強かったと思います。でも、そもそもコロナ以前から、大量消費の時代から、個人が自分の価値観に合ったものをじっくり選ぶ消費にシフトしている背景があって、さらにそれが今回のコロナで加速していただけなのかなと。

でも、この社会の変化でそういうのが一切なくなって、自分が好きな物はなにか、自分にとって心地よい時間を過ごすために選ぶならなにかという価値観に変わっていくんでしょうね。

なのでACPもユーザーの方と1対1で対等に向き合いながら、生の気持ちや声を具体的にどんどん聞かせてもらうことを大事に、そしてもちろんまずは自分たちが心地よく毎日心から使いたいか、からブレずにブランド体験をつくっていきたいと思っています。

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和やかな雰囲気にあふれた今回の対談。それぞれ事例にブランドの個性が感じられるとともに、「目の前の人に求められるもの」を最高のクオリティで届けようとするブランドの根幹には多くの共通点がありました。

後編では、3人の考えるアフターコロナ後のものづくりについて、そして各ブランドの今後のチャレンジについてお届け予定です。

後編はこちら

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