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とある会社員、非日常への入口 ①
Episode 1 しがない一日
私は来る日も来る日も上司からのパワーハラスメントに耐えていた。
「あなたは発達障害ですよ」
「文面そのままに受け取るのは、意図を読み取れないASDでしょう」
「このままでは社員としての継続は難しいでしょう」
「これはあなたの能力向上のためでありパワハラではない」
そして家庭に戻れば常に不機嫌をまき散らす妻がいる。
話を一生懸命聞いていても、途中不明な点を少し質問しただけで
「そういうことじゃない、もういい」
と文句を言われる。
挙句には
「仕事のことでいっぱいになっているあなたがイヤ」
と言われる始末である。
ここまでを見返して思うのだが、私に非があるように見えるから不思議だ。
「それは本当におまえが能力不足だからだよ」
「どうせなにか余計なこと言ったんじゃないのか?」
「間違いない。こいつはASD」
私の中の自信喪失マンが囁く。
苦労は買ってでもしろ
チャレンジしないやつは生き残れない
しあわせな人生とは?
脳が委縮するような感覚がまとわりつき、
ネガティブなマインドが私を支配する。
心のモヤモヤが体中に充満していき
「破裂する!」
と同時に私は自宅を飛び出し、真夜中の住宅街を
フラフラとさまよい始めた。
(続く)