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ファシリテーションを考える:実務での気づきから

最近、自分の仕事の進め方について立ち止まって考える機会がありました。周囲から「ファシリテーションが得意ですね」と言われることがあるのですが、改めて考えると、それが具体的に何を指しているのか、自分でもうまく言語化できていないように感じたためです。

単に「会議の進行役」や「周囲を巻き込む力」と言ってしまうと、どこか平板な表現になってしまう。もう少し深いところに、自分なりの経験や気づきがあるのではないか。そんな思いから、これまでの経験を振り返ってみることにしました。


外資系企業での学び:チーム運営の基礎

振り返ってみると、現在の仕事の進め方の基礎となっているのは、外資系企業での経験だったように思います。そこで学んだのは、プロジェクトにおける役割分担の考え方や、少人数でも効果的に前に進めていく方法でした。

特に印象に残っているのは、ownerとco-ownerという考え方です。プロジェクトの中で、案件ごとに役割が流動的に変化していく。ある案件ではownerとして全体を取りまとめ、別の案件ではco-ownerとしてサポートに回る。この役割の流動性が、チームの柔軟性と強さを生み出していたように思います。

少人数チームでの効果的な進め方

外資系企業での経験で特に価値があったのは、少ない人数でも効果的に成果を出していく方法を学べたことです。具体的には:

  • 全員が全体像を把握している状態を維持する

  • 個々の強みを活かした役割分担を行う

  • 情報共有を密に行い、進捗の透明性を確保する

  • 問題が発生した際の早期対応と柔軟な役割調整

これらの要素が、現在の仕事の進め方にも大きく影響を与えているように感じています。

ファシリテーションの本質を探る

「会議進行」を超えた役割

ファシリテーションというと、一般的には「会議の進行役」というイメージが強いかもしれません。確かにそれも重要な要素ですが、実際の現場では、それ以上の役割が求められているように感じています。

それは、プロジェクト全体を通じて、チームの総合力を引き出していくための一連のアプローチではないでしょうか。会議の場面だけでなく、事前の準備から、フォローアップまで。そのすべての過程において、チームとしての成果を最大化していく営みだと考えています。

依頼を受ける立場から見えてきたこと

実は、この気づきは、自分が依頼を受ける立場になったときの経験から得られたものでもあります。例えば、次のような依頼を受けたとき、なぜモチベーションが上がらないのか考えてみました:

「このメールを送ってください。資料は用意してあります。」

一見シンプルな依頼に見えますが、ここには重要な要素が欠けています:

  • なぜこのタイミングで必要なのか

  • 全体のプロジェクトの中でどう位置づけられるのか

  • 送付後の問い合わせ対応はどうするのか

  • 期待される成果は何か

これらの文脈が明確でないまま依頼されると、単なる「面倒な作業の押し付け」という印象を受けてしまいます。

依頼する立場として心がけていること

この経験から、自分が依頼する立場になったとき、以下のような点を意識するようになりました:

  • 依頼の背景と目的を明確に説明する

  • 全体のストーリーの中での位置づけを共有する

  • 予想される課題とその対応方針を示す

  • サポート体制を明確にする

  • 次のステップを具体的に示す

これらの要素を含めることで、単なる作業依頼ではなく、プロジェクトの重要な一部として認識してもらえるように心がけています。

実践的なアプローチ:成功事例から

この考え方は、実際の大規模システム導入プロジェクトでも活かすことができました。複数の組織が関わる中で、限られた期間での目標達成が求められる案件でした。

事前の準備:全体設計

会議の事前準備として、以下のような点を意識して取り組みました:

1. 会議の位置づけと目標の明確化

  • プロジェクト全体における当該会議の位置づけ

  • 達成すべき具体的な目標

  • 次のステップへの展開イメージ

2. コンテンツの設計

  • プレゼンテーション資料の構成

  • 説得力を高めるための要素の洗い出し

  • 必要なメンバーの特定と役割分担

3. メンバーとの事前調整

  • 具体的な依頼内容の共有

  • 期待値のすり合わせ

  • レビューポイントの設定

特に重要だと感じたのは、メンバーとの事前のコミュニケーションです。「こういうことをやりたい」「このように進めたい」という具体的なイメージを共有し、それぞれの立場からの意見をいただきながら、より良い形に練り上げていく。この過程で、チームとしての一体感も醸成されていくように思います。

会議当日の運営:実践的なポイント

事前準備を重ねても、当日は予想外のことが起こりうるものです。しかし、基本的な軸がしっかりしていれば、多少の修正で対応できることが多いと感じています。

重要な運営ポイント

  1. 全体のストーリーを見失わない

    • 議論が脱線しても、適切なタイミングで軌道修正

    • 重要なポイントの確認と合意形成

  2. 適切なパス回し

    • メンバーの専門性を活かしたタイミングでの発言機会の創出

    • 議論の流れを損なわない形での意見収集

  3. 提案の意図や背景の説明

    • 相手の理解度に合わせた説明の深さの調整

    • 具体例を用いた説明の工夫

  4. 時間管理と次のステップ

    • 予定時間内での重要ポイントの押さえ込み

    • 次回のタッチポイントの明確な設定

フォローアップの重要性:継続的な関係構築

会議後のフォローも重要な要素です。具体的には:

1. 振り返りとアクションの明確化

  • 会議内容のサマリー作成と共有

  • 決定事項と宿題の整理

  • 担当者とスケジュールの確認

2. チーム内での認識合わせ

  • 短時間での作戦会議の実施

  • 懸念事項の洗い出しと対応策の検討

  • 次のステップに向けた準備の開始

3. 継続的なコミュニケーション

  • 定期的な進捗確認の機会の設定

  • 問題発生時の早期対応

  • 関係者との密な情報共有

プロジェクトを成功に導くための要素

チームの一体感醸成

プロジェクトを進める中で特に意識しているのは、「全員がプロジェクトメンバーである」という意識の醸成です。これは社内外の垣根を超えて、関わる全ての人がチームの一員として活動できる環境づくりを意味します。具体的には:

  • 全員が課題を自分事として捉えられる環境づくり

  • 組織の枠を超えた率直な対話の促進

  • 各メンバーの貢献が明確に見える形での進行

  • 成功体験の共有と称賛

実現可能性と透明性の両立

全ての要望を完全に満たすことは難しい場合もあります。そのような状況では:

  • 検討プロセスの妥当性を明確に示す

  • 代替案や対応可能な範囲を具体的に提示する

  • 制約条件や課題を率直に共有する

このような誠実な対応を通じて、相互理解と信頼関係を築いていくことが重要だと考えています。

おわりに

組織の垣根を超えた協働が求められる中、ファシリテーションの重要性は増していくのではないでしょうか。それは単なるスキルではなく、多様な価値観を持つメンバーが一つの目標に向かって力を合わせていくための総合的なアプローチとして捉えていく必要があるように感じています。

これからも、日々の実践を通じて学びを深めていきたいと思います。

これらは、あくまでも私個人の経験からの気づきに過ぎません。しかし、同じように試行錯誤されている方々にとって、何かしらの参考になれば幸いです。

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