転職エージェントが抱えるジレンマ
はじめに
前回、転職エージェントが劣等感を抱いているという記事を書きましたが、それは候補者の転職支援をしている際にも色濃く表れます。表れるというよりは、目を瞑っているというべきジレンマが存在しています。生身の人間をお客様として日々やり取りしていますが、日々仕事に追われていると忘れてしまい、ぞんざいな扱いや言葉遣いをしてしまったり、さらに良くないケースだとチームや会社単位でそれが常態化してしまっているところも少なくありません。そうはならないために、自戒も込めてこの記事を書きます。
学歴が低い
出身や社歴、新人であろうと活躍の機会があるのが、人材業界の良いところの一つです。その反面、就職活動や転職活動において暗黙知とされているのが学歴フィルターです。候補者の年齢が上がるにつれ、高卒か大卒なのかということや出身大学がどこかというのは重要視されなくなってきますが、20代のうちの転職活動や新卒の就職活動においてはかなり重要な要素となっています。
企業から紹介を求められる条件の中に入っていた場合は、「この人学歴低いからな~」などという会話が社内で繰り広げられることも多々あります。この会話に私は当初から違和感を抱いていて、なぜかというとかく言う転職エージェント自身の学歴が低かったりするからです。前述のように誰でも平等に活躍できるフィールドがあるため、転職エージェントとして活躍している方の中には実力で成り上がっている方が多いです。ですので、学歴を重視する企業への紹介をする際に、この一見矛盾したやり取りが散見されます。自身を棚に上げながら、人を勝手にジャッジするというのが転職エージェントの仕事でもあるのです。
逆に要件は満たしていないが、キャリアやお人柄が良いから会ってみてくださいと転職エージェントからプッシュすることで、結果的に内定に結び付くケースもありますので、プラス要素の補足もさせていただきます。
年収が低い
学歴と同じように、転職エージェント自身が満たしていないながらも、他人を判断する要素の一つに年収があります。所属企業によって誤差はあるので、あくまで参考程度に見ていただきたいですが人材紹介会社における年収は下記の様になっています。
・メンバー:400~600万円
・リーダー:500~700万円
・マネージャー:600~800万円
・経営陣およびトッププレイヤー:800万円~
さらに参考値ですが、業界最大手のリクルート社では他の企業に比べて頭一つ抜けているイメージです。たとえばリクルート社でメンバーの方は、他の企業のリーダー層がもらう給料を受け取っているという意味です。
ここまで聞いてどう感じたでしょうか?意外と給料をもらっているのではないか、と思った方もいらっしゃるでしょう。しかし、転職エージェント自身はどう考えているかというと、給料は少ないと感じています。なぜそう思うかというと、人材紹介ビジネスのわかりやすさによります。人材紹介は、収益の構造が他ビジネスに比べて単純で、売上や利益の仕組みが理解しやすいです。一般社員でも、どこからどのくらいお金をいただいていて、どこに支払っているのかなんとなく想像ができます。そのため、売上を上げれば上げるほど、自分の給料が上がっていって行かないことに気づくのです。
もちろん会社を運営していくには、自分の給料分をきっかり稼げばいいというわけではなく、自分がストレスなく働くために導入しているシステムやコーポレート部門の方々の分まで稼いでやっと利益が出始めます。しかし、人材紹介をやっていると自分の給料分を稼げない、いわゆる赤字社員も一定数発生することになります。これは大手になればなるほど、数が多くなります。そのため、トッププレイヤーがいくら売り上げても年収が上がらず、次第に彼らは辞めていきます。「ほんとはもっと稼いでいるはずなのに」という欺瞞を抱えながらトッププレイヤーはもちろんのこと、赤字社員も他人の年収を自分と比較し、そして自分を棚に上げ「この人年収低いね」と言いながら人材紹介を行っているのです。
おわりに
他人に仕事を紹介する転職エージェントは、ある種自分という存在を押し殺しながら人材紹介を行っています。自身が仕事にやりがいを感じつつ、他人に対しても、彼らにとって納得いく選択肢を提供できるような、素晴らしい人材紹介を続ける人が一人でも多くなることを願っています。
株式会社AGENT SUCCESSとは:
人材紹介事業の立ち上げ及びコンサルティングを行う人材会社です。
業界の経験を活かし、本質的で社会貢献性のある人材紹介を実現するためのお手伝いをさせていただきます。また、業界の負を解消し、企業・候補者・人材紹介それぞれにメリットのあるサステナブルな紹介方法を採用しておりますので、ご興味ある企業様および人材紹介会社様はお気軽にお声がけしてください。
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