世界を見渡した視点が示す、人材紹介とゲストハウスという”両利きの事業”に挑む哲学とは(前半)
こんにちは。エージェントセブン・編集部の森下です。
今回でシリーズ4回目となった、社内のコンサルタントに焦点を当てた「エージェントセブンのなかのひと」インタビュー。
弊社の第二創業期であり、まだまだ小規模で組織運営をしていた2022年、8人目のメンバーとして入社された牧野 浩太郎(まきの こうたろう)氏にインタビューをしました。
ご縁があった方々に「機会提供をしたい」という強い思いから、社内ではトップコンサルタントとして活躍しながらも、本業とは別にゲストハウス事業の運営もしている牧野氏。過去にはバックパッカーとして数十の国を周っていたメンバーでもあります。
人一倍パワフルなマインド/行動力と、持ち前のコミュニケーション力で求職者や採用担当者の心を突き動かし、キャリアだけではなく人生観そのものに大きな影響を与える姿は、エージェントセブン内でもひと際大きな存在感を放っています。
今回のインタビューでは、牧野氏が「機会提供」にこだわる理由や生きるうえで大事にしている価値観、求職者/企業へもたらしたいバリューについて、過去の実体験を交えながらじっくりと紐解いていきます。
「人材紹介」という言葉だけではひとくくりにできない魅力の詰まったインタビューを、ぜひいろいろな方に読んでいただけたら幸いです!
■牧野氏/プロフィール
第一章:人材紹介とゲストハウスは繋がっている!?
教員志望だった私が人材紹介を選んだ理由
ーそれでは早速ですが、新卒から現在までの牧野さんのご経歴について簡単にお聞かせください。
(牧野)
これまで、エージェントセブンを含めて3社での就業経験があります。新卒では医療事業やカメラ事業を手掛けるオリンパス株式会社に入社しました。
オリンパス社では営業職として医療機関向けに内視鏡等の医療機器を提案する仕事をしていました。就職活動のタイミングから人の可能性を引き出すこと機会提供をする仕事への関心も高かったので、人材業界や教育業界も選択肢の1つでしたが、(1年間留学を経験したこともあり)当時は海外志向が強く、海外駐在の可能性に惹かれて入社をしました。
ただ、オリンパスで営業をする中で、やはり機会を創出することを通じて社会の役に立ちたいと思うようになり、2社目から人材業界に転身をしております。
ー人の可能性を引き出すという観点で、教員も視野に入れていたと聞きました。学校の先生よりも人材紹介がやりたい仕事に近いと思うようになったきっかけや経緯はどんなものだったのでしょうか。
(牧野)
社会人として働くうちに、自分がやりたい「機会提供」って何だろうと深堀りして考えるようになったことが大きいかなと思います。そもそも、大学入学当初は教員を志して早稲田大学の教育学部に入学したため、教員がセカンドキャリアの選択肢になることは自分の中では自然の流れでした。
新卒で教員にならなかったのは、教員以外の一般企業を経験した方が、生徒一人ひとりに進路相談ができ、より適切な進路選択を後押しできると考えたからです。オリンパスの次のキャリアとして教員を視野にいれていたときも、教科書の内容を生徒に教えたいというよりかは、生徒たちが将来どんな生き方をしたいのか、そのためにどんな仕事を選ぶといいのか、といったことを一般企業の社会人として得た経験を活かしながら、伝えていきたいと思っていました。
それであるならば、自分が生徒に提供したい価値というのは(教員という仕事の)メインの業務ではないなと思ったんです。中高生の時に考える進路は「当時中高生がイメージできる範疇」に限定されますし、卒業生が大人になってからキャリアについて相談に来てくれることなんて稀なケースですし。
もっと自分がやりたい「進路選択」をダイレクトに、そして教員よりも現実感を伴ったタイミングで提供できる仕事ってなんだろうと考えたときに、キャリアコンサルタントがまさにピッタリではないかと思いなおし、2社目で人材業界に転身するに至りました。
ーそういったご志向の変化があったのですね。2社目の会社についても、簡単に入社された経緯や、どんな仕事をされていたのかを教えていただけますか。
(牧野)
ネクストキャリアとして人材業界に絞って転職活動をしていた際に、2社目の「未経験からエンジニアへのキャリアチェンジ転職」を支援する会社と出会いました。エンジニア市場は(今もそうですが)転職活動をしていた当時とても勢いのある市場で、IT業界や職種自体に興味があったこと、またそれまで他の仕事をしていた人が手に職をつけて新たな一歩を踏み出すことを後押ししていくことに共感し、入社を決意しました。
約2年間、企業側の営業(リクルーティングアドバイザー)を経験し、、そこで人材紹介やIT業界のイロハを多くの方から学ばせていただきました。
ーそこから、エージェントセブンとの運命的な出会いを果たすわけですね。2社目を経ての再度の転職活動では、どんなキャリアビジョンを持って活動されていたのでしょうか。
(牧野)
先ほどから何度か触れている「機会提供」が関係してきます。実は大学生の頃から、おぼろげながらも人と人とが偶発的に出会う場所づくり、つまりゲストハウスの事業をいつかのタイミングでやりたいなと思っていたんです。
2社目での仕事を通じて人材業界の仕事ってすごく面白いと感じていたので、人材紹介自体もさらに極めつつ、ゲストハウスもいつかやりたい。だけど、その「いつか」は期限を決めないと永遠と「いつか」のままで終わってしまう。30,40代となってライフステージが変われば守るものも増える。まだ挑戦できるうちに”土台”を作っておかないと夢のまま終わる、そういった焦燥感を抱いていました。
当時27歳だったので、ゲストハウスの土台を築く時期を20代のうちと決め、人材紹介とゲストハウスの二足の草鞋を履いて生きていけるような環境を探したい、そんな思いで転職活動をしていました。
ーまさに2つの異なる軸での機会提供ですね!そもそもどうして機会提供の一環としてゲストハウスが候補にあがったのでしょうか?
(牧野)
学生時代に複数の国でバックパッカーをしていたのでゲストハウスは自分自身がよく使う身近な存在でした。ゲストハウスの魅力はなんといっても、様々な人種・バックグラウンドを持つ人たちが一夜の間に偶発的に集まって、食卓を囲んだり共有スペースで団らんしたりする中で全く違う価値観同士の異文化交流ができます。そこでの日本人との出会いも貴重で、日本で普通に過ごしていては出会わなかったはずの出会いが生まれます。
実際に、アフリカのナミビアという国で出会った2人の日本人とは、今でも仲良く定期的に会っています。2人とも仕事に対して強いwillを持っているので、私自身も会うたびにモチベートされており、とてもありがたい存在です。やはりそういう機会(出会い)を創出する側でありたいと強く思っており、人材紹介でいうネクストキャリアへの機会提供とは別軸の魅力を感じていました。
人材紹介は、キャリアの選択肢を提案・提供することによって機会を提供する。それに対し、ゲストハウスや偶発的な場所と出会いを提供する。どちらも自分にとっては機会提供であることは変わらないのですが、内容が大きく異なっていますね。
「機会提供」に繋がる二つの実体験
ーありがとうございます。もう一段階、牧野さんの思いの源泉を深堀りさせてもらいたいのですが、そもそもなぜ人材紹介・ゲストハウスと形は違えども、第三者に「機会提供」をしたいと思われるのでしょうか?
(牧野)
機会提供に思い入れがある理由として、過去の二つの実体験が大きなきっかけとなっているように思います。
一つ目は浪人時代についてです。わたしは高校卒業後、1年間予備校に通って早稲田大学に入っているのですが、(高校時代と高校卒業後で)予備校を変えたんです。現役時代はほとんどの大学から不合格通知を受けました。
志望校に入るために、浪人中は毎日9:30-22:00まで缶詰め状態で勉強に向き合っていましたし、1年間は勉強だけにフォーカスしていたので、志望校の合格には自分自身の頑張りが繋がっているという自負は、もちろんあります。ただ予備校が変わったことで授業の進め方や講師との向き合い方など、環境がガラッと変わったことも大きかったです。
講師の方々は、勉強を教えるというよりも「勉強を通じて学びや生き方の本質に迫っていく」スタイルであり、わたしの価値観は文字通り180度変わりました。浪人時代の予備校はアットホームながらも少人数制のためすごくスパルタな環境でした。それがわたしの肌に合っていて、大学合格に向けて成績を伸ばしていくうえでぴったりの環境だったのではないかと思っています。
こうした実体験から、わたしという人間自体は大きく変わったわけではないのに、環境が変わるだけで結果はこんなにも変わるものなのだと衝撃を受けました。わたしは幸運にもその環境を得ることができましたが、機会に恵まれていなかったら・・・と思うと、「希望」と同時に「怖さ」も感じました。「自分の能力を最大限に発揮できていない」「輝けていない」といった類の話は、その人自身の能力値だけの問題ではなく機会や環境が大きく影響していると身をもって知りました
ー環境(=機会)が変わると結果が変わることを身を以て体感したのですね。二つ目の実体験はどのようなものでしょうか?
大学時代にカナダのバンクーバーに1年間留学した経験です。文化や価値観が違う外国人との出会いについてはバックパッカーの箇所でも触れましたが、バンクーバーで出会った方の多くが、環境に合わせて自分を変えるというよりも自分の価値観や人生観ありきで働く環境を選ぶ、あるいは自らの環境は自らでつくっていくという考え方の方が多かったんですね。
日本だと「この環境で頑張れないならどこに行っても頑張れないよね」っていう風潮が海外よりも強いと思うのですが、わたし自身は、全くそんなことはないと思っていて。もちろん、その環境で”やり切る”があった上ではありますが、置かれた環境で精一杯頑張り抜いてそれでも合わないな、何か違うなと思うのであれば、勇気を持って環境を変えることも称賛されるべきことだと思うようになりました。
ー世界を見渡すと、欧米を筆頭に中国や韓国などもキャリアアップのための転職が日本よりも身近だったりしますよね。
(牧野)
そうですね。仕事だけでなく生活する拠点自体も、海外の方は母国に拘っていない方が多いように思います。例えばカナダだと、わたしがいたバンクーバーではネイティブカナディアンは50%もいなくて、半分以上が非カナダ人でした。それくらい多様性にあふれていて、働く場所や生きる場所にとらわれ過ぎない風潮があったように思います。
少し話が逸れてしまいましたが、浪人生活や留学生活での体験があったからこそ、機会提供にこだわりを持つようになり、エージェントセブンの「想像を超える出会いを創造する」というミッションにも心から共感をしています。
ー原体験をもとにしたリアルなお話ばかりで非常に引き込まれました。赤裸々にお話してくれてありがとうございます!
ここからは、エージェントセブンの日々の業務にも触れながらいろいろとお伺いできればと思います。
第二章:「ポストイット的な姿勢」で求職者と向き合う
「ポストイット的な姿勢」とは?
まずは、人材紹介コンサルタントやゲストハウスのオーナーとして牧野さんが機会提供をしていくなかで、もっとも大事にされていることってなんでしょうか。
(牧野)
まず最初に自分のなかで大事にしているのは、「ポストイット的な姿勢」です。
ーポストイット=貼ってはがせる付箋のことですね!ちょっと抽象度が高い表現になるので、具体的に教えていただけますか?
(牧野)
「ポストイット的」とは、わたしの中では「暫定的な解」をアップデートし続けること、という定義です。「一度決めたことを変えない、曲げない」、つまり物事に明確なラベリングをしないよう心がけています。仕事においても自分の人生においても、物事は常に移り変わっていくものであるということを前提に行動するということをとても大切にしています。
その時々のベストの選択肢、ベストの解というのはあるかもしれないけれど、それらは時間の流れや個々の考え方の変化とともに変わっていくものだ、ということですね。
転職軸を「仮決め」する
ー暫定的な解をアップデートするというのは、仕事上はもちろんのこと牧野さん自身の人生哲学でもあるということですね。コンサルタントとしての日々の業務においても、暫定的な解のアップデートをされているのでしょうか?
(牧野)
わたしはよく、転職軸を「仮決め」して、転職活動が進んでいく中でアップデートしていきます。求職者を支援する際には一人の方と面談を2回、3回、多いときには10回以上面談をおこなうこともありますが、複数回の面談を重ねるごとに「その方にとってのベストな解」がアップデートされていくという事象は本当に多いです。
例えば、「ビジネスパーソンとして将来的に成長できそうな企業に行きたい」という思いの営業経験者の方がいたとします。このような場合、現職では成長が鈍化していると感じている方が多く、その理由をブレイクダウンしていくと、「現職では月額単価数万円のプロダクトの即決営業であり、提案の幅が数パターンに限定されていることで成長実感が得られていない」という背景にたどり着くことがあります。そうすると、「提案の幅が広い高単価商材である企業」が仮決めの転職軸になり得ます。
ー営業の方だったら、今よりももう一段階高単価の商材を売れるようになったら、その方の成長に繋がるとかそういうことですよね。
(牧野)
まさにその通りです。でもご本人にとってのベストな方向性ってそれだけではないと思うので、仮決めである「高単価商材」にこだわりすぎると、それ以上にマッチする企業との出会いを創出できないこともあります。別の角度からもその方にとっての成長ってなにかを模索して、ご本人の成長に繋がるかもしれない企業との出会いの可能性を狭めないようにしています。
実際に選考を重ねていくと、実はその方にとっての成長というのは「高単価商材を売ること」よりも「顧客の経営課題の解決に直結する商材を取り扱うこと」だったとなるケースなんかもあり、以後の転職軸(=ご本人にとっての成長の定義)が変わることがあるんですね。ただそれは、いったん定義づけていたことが間違っていたわけではなく、あくまでも企業の選考を通じて”成長の定義がアップデートされた”、ということなんです。
ー選考を通じて、求職者ご本人も気づいていなかった転職軸に行き着くのですね。
そうなんです。各企業の選考を進めていくことで二次、最終、内定と段階が進んでいけばいくほど「なぜこの会社がいいのか」が求職者自身の中でどんどん明確化されていくので、最終的な意思決定時の決断にも繋がっていきます。このプロセスを踏むことにこだわっています。「どうしてこの会社じゃなければダメなのか」をちゃんと自分の言葉でアウトプットできるようになるので、ご本人が腹落ちした状態で意思決定ができるんですよね。
なのでいったん成長という観点で転職軸を仮決めしたあとも、その定義は変わりうるものだということを前提に都度チューニング・アップデートしています。そうすることで、ご本人にとって本当に最適だと思える場所の機会提供に繋げていくことを常に意識しています。
ー(転職支援に限らず)一度決めたことって、変えないほうがある意味ラクだと思いがちかもしれませんが、牧野さんはアップデートしていくことに柔軟かつ前向きな志向があるのですね。
(牧野)
転職のタイミングを切り取ってもそうですし、何か人生の目標を決めて行動する上でも、常に問いを立てて考え続けるということは確かにエネルギーがいることですよね。一旦決めてしまったことは動かさない方が、たしかに楽な側面はあると思います。
ただ、日々の仕事や日常生活において多くの出会いや発見があるなかで、昨日までは最適解だったことがそうではなくなる瞬間もあります。過去の考えに固執しないよう、変化には常に前向きでいたいなと思っています。
変化に柔軟でいたいからバックパッカーであり続ける
ー変化を恐れないという意味では、牧野さんは「移動すること」にもポジティブですよね。
バックパッカーをされていたこともそうですし、エージェントセブンに入ってからもワーケーション制度や長期休暇を利用して色んな国に訪れていますね。
(牧野)
学生時代から移動をすることで新しい出会いや物事に触れる機会があり、いい意味で自分の価値観が壊されることも多かったので、生活の拠点を変えたり知らない場所に訪れることにはすごくポジティブですね。わたしにとっては移動は「暫定的な解をアップデートしていくこと」とも密接に結びついています。
ー牧野さんは、エージェントセブンの中でも際立って海外滞在の経験が多いですよね。これまでの現地滞在経験の中で、特に印象に残っている国や出会いはありますか?
(牧野)
中東旅行でイスラエル・パレスチナ双方の現地人と丸1日話ができたことが印象に残っています。
イスラエルのヘブライ大学(日本でいう東大)でイスラエル人の学生と仲良くなり、その方からは中東で紛争が長期に渡って続いていること、自国への思いはもちろんのこと、戦争をしているパレスチナや周辺国に対する思いも含めて、すごくリアルな視点でご本人のお考えを聞くことができました。
翌日はパレスチナを訪問しました。そこでは1日ツアーをしてくれたパレスチナ人から、パレスチナ側からイスラエルはどう見えるかや、現地の生活のリアルな現状を語ってくれました。どちらか一方が悪なのではなく、両陣営どちらにもちゃんと正義があり、だからこそ問題が複雑であることを知ることができました。
ーよくある海外旅行とは毛色がかなり異なりますね!笑
(牧野)
わたしが旅に出るのは、いわゆる「観光」がしたいからではないんです。かといって教科書などに書いてあるような表面的な世界情勢の理解で終わらせたくもない。現地の人との交流や対話を重ねることで、”彼らのフィルタを通じて(あえてコーテーションで囲ってみた)”教科書や専門書では知りえないその国のリアルを知りたいんですね。
なんというか、自分の価値観を根底からゆるがせてくれる人に出会いたいという気持ちが強いので、常に自分が暮らしている状況とは真逆の場所に行きたいなって思います。
ー自分とは真逆の状況に置かれている方との交流は、思ってもみない発見の連続なのでしょうね。これまでの海外での体験や出会いは、牧野さんの仕事や人生に良い意味での影響を与えていると思いますか?
(牧野)
はい、心の底からそう思います。あらゆる価値観に触れ、意見や考え方を受け入れること。そうして視野が広がっていくことで自分の人生設計上の「最適解のアップデート」にも繋げられていると思いますし、求職者へのご支援においてもひとつの考え方や選択肢に固執せず柔軟な視点でアドバイスに繋げていきたいと思っています。
特にエージェントセブンでは必ずしも転職ありきではなく、キャリア全体、もっというと人生全体の振返りと設計に伴走させていただく支援をしています。そういった観点からも、求職者本人が想像もしていなかった角度の提案ができるようにわたし自身が広い視野を持っていたいので、海外滞在・現地交流の経験は「自分自身がコンサルタントとしてのありたい姿」の基礎になっている実感があります。
ーありがとうございます。ここからは牧野さんが追求されたい理想のコンサルタント像や、改めてご自身が思うエージェントセブンでスキルを磨いていくことの魅力、醍醐味について改めてお伺いできればと思います。
Vol.2に続く.